この記事を読んでわかること
・多系統萎縮症とは
・多系統萎縮症を患った有名人
・多系統萎縮症に対する再生医療
多系統萎縮症は1969年にGraham & Oppenheimerにより提唱された疾患で、難病に指定されています。
特にきっかけなく神経の機能が低下し脱落していく変性疾患の一つで、国内には11000人ほどの患者さんがいるとされています。
非常に治療が難しい難病ですが、だからこそ新たな治療法が模索され可能性が広がってきています。
この記事では多系統萎縮症について解説します。
多系統萎縮症とは?その特徴と進行
多系統萎縮症とは脳の機能が徐々に低下する疾患であり、障害される部位が複数の系統に及ぶことから多系統という名前がついています。
主として線条体-黒質系、下オリーブ核-橋核-小脳系、自律神経系の3系統が侵されます。
多系統萎縮症はどの部位が主に障害されるかにより、次の3疾患に分類されます。
- 線条体黒質変性症
- オリーブ橋小脳萎縮症
- シャイドレーガー症候群
線条体-黒質系が主に障害されるのが線条体黒質変性症であり、パーキンソン病のような症状(動作緩慢や手のふるえなど)が目立ちます。
オリーブ橋小脳萎縮症は下オリーブ核-橋-小脳系が侵され小脳失調症状(ふらつき、細かい動作ができないなど)が前面に立ちます。
シャイドレーガー症候群は自律神経系が侵されるため、自律神経症状(排尿障害や立ちくらみなど)が主症状となります。
ただし、Shy-Drager症候群という診断名は難病制度の下残されているものの、誤用が多いなどの理由から臨床現場で使用されることは少なくなっています。
有名人が患った多系統萎縮症の実例
63歳で亡くなった歌手の西条秀樹さんは、多系統萎縮症を患っていたそうです。
元々脳梗塞の後遺症と戦いながら芸能活動を続けていた西条さんは、徐々に体が言うことを聞かなくなり、足元のふらつきを自覚することが増えていました。
症状は徐々に進行し、2014年の暮れに多系統萎縮症と診断されています。
その後も懸命なリハビリを続け、治療を受けていたものの2018年にお亡くなりになりました。
西城秀樹さんの闘病の様子は、奥様が著した「蒼い空へ 夫・西城秀樹との18年」に記されています。
多系統萎縮症の罹病期間は9年程度とされています。
有名人であっても、懸命なリハビリや治療を行っても、進行を抑えるのは非常に難しいのです。
多系統萎縮症に対する現在の治療法
多系統萎縮症の進行を抑える治療は存在せず、対症療法を行うのが一般的です。
パーキンソン症候群の症状に対しては抗パーキンソン病薬を使用し、自律神経症状や小脳失調症状がある場合にはそれに応じた抗コリン薬などの薬剤を使用します。
リハビリテーションにより残っている運動機能を活用して生活する方法を身につけるとともに、歩行補助具を使用する、呼吸障害がある場合には陽圧換気を行い補助するといった環境調整が重要になります。
多系統萎縮症における再生医療の最新動向
多系統萎縮症は治療が難しい難病であり、進行を抑えるのが難しい疾患です。
それだけに新たな治療法が模索され様々な方法が試みられる中、成果が見られているのが再生医療です。
多系統萎縮症に対する再生医療は、現在も進行中の研究領域です。
iPS細胞の登場で一気に注目を集めた再生医療ですが、現在実用化が最も近づいていると言って良いのが「間葉系幹細胞」を使用した再生医療です。
間葉系幹細胞は神経に成長し増殖することのできる細胞で、自分の骨髄や脂肪などから容易に取り出すことができます。
国際的に多系統萎縮症に対する間葉系幹細胞を使用した治療の研究が報告されており、治療により進行が抑えられたという結果が出ています。
間葉系幹細胞は体内に移植されると増殖する過程で神経に有利な成分を分泌するとともに、神経に成長して神経の機能を再生することが期待されています。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
多系統萎縮症に対しては、再生医療と最先端のリハビリテーションを組み合わせることで最大限の機能回復を達成できると考えています。
多系統萎縮症の症状にお悩みの患者さんやご家族の方は、ぜひご相談ください。
多系統萎縮症についてのまとめ
多系統萎縮症について解説しました。
はっきりとした原因もわからず徐々に進行し、打つ手がない難病の一つです。
多くの方が症状に悩み苦しんでいます。
新たな治療の成果が期待されています。
よくあるご質問
多系統萎縮症(MSA)は遺伝しますか?
明らかな遺伝性は認められていません。ごくまれに血縁者が発症することがあります。
多系統萎縮症(MSA)の余命は?
多系統萎縮症では発症後平均5年で車いすを使用するようになり、約8年で寝たきり、余命は9年程度であるとされています。
<参照元>
・「多系統萎縮症」Pharma Medica 39(3), 2021
・「多系統萎縮症」難病情報センターホームページ
https://www.nanbyou.or.jp/entry/221
https://www.nanbyou.or.jp/entry/222
https://www.nanbyou.or.jp/entry/223
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