この記事を読んでわかること
・多系統萎縮症とは?
・多系統萎縮症の症状とは?
多系統萎縮症とは自律神経、小脳、錐体外路などを構成する多くの神経細胞が同時平行で変性していく病気のことです。
同時に多くの機能が障害され様々な症状をきたし、今だに治療法が確立されていないため、40-64歳でも介護保険の対象になっており、指定難病の1つでもあります。
そこで今回は、多系統萎縮症の症状や経過に関して詳しく解説していきます。
脳が萎縮する病気の中でも注意すべき多系統萎縮症
皆さんは多系統萎縮症という病気を聞いたことはありますか?
有名どころで言えば、昭和の大スター・西城秀樹さんも多系統萎縮症に苦しみ亡くなられた方の一人です。
多系統萎縮症は国の指定難病の一つであり、令和元年の特定疾患医療受給者数によると、現在日本では11387名の方が難病指定を受けています。
また、欧米の調査では多系統萎縮症の罹患率は10万人あたり2-5人とされており、非常に稀な疾患であることが分かります。
平均発症年齢は55-60歳ですが、発症後の余命は8-10年と進行が早く、非常に恐ろしい病気と言えます。
そもそも多系統萎縮症とは線条体黒質変性症、シャイ・ドレージャー症候群、オリーブ橋小脳萎縮症と呼ばれる3つの疾患の総称であり、どの病気も自律神経、小脳、錐体外路の神経細胞に変性をきたす事で多系統の神経機能が障害され、様々な神経症状をきたす疾患です。
3疾患には共通して、グリア細胞内に嗜銀性の封入体であるGCIが形成されることが判明し、ほかの疾患には認められない病理所見であったことから単一疾患としてまとめられました。
では具体的にどのような症状をきたす疾患なのでしょうか?
多系統萎縮症の主な症状と診断方法
具体的に多系統萎縮症の症状を系統別に解説します。
錐体外路症状(パーキンソニズム)
例えばみなさんが何かを持ち上げようとするとき、脳からの司令が錐体路と呼ばれる神経系を通って上腕二頭筋を収縮させて腕を曲げます。
その際、腕を伸ばす筋肉である上腕三頭筋が弛緩した方がよりスムーズな運動が得られるため、無意識に錐体外路と呼ばれる神経系からの司令が出て、上腕三頭筋が弛緩しているのです。
よって錐体外路が障害されるとスムーズな運動が得られなくなり、動作緩慢、歩行障害、ふるえなどの症状が出現します。
錐体外路が障害される病気の代表であるパーキンソン病と症状が似ているため、これらの症状はパーキンソニズムと呼ばれています。
しかし、症状の進行速度はパーキンソン病よりも断然早く、発症から平均5年で車椅子生活になると言われています。
錐体外路症状の末期には嚥下能力が低下し、誤嚥性肺炎を併発して死に至る可能性があります。
自律神経障害
自律神経とは呼吸や血圧、排尿や排便、消化管の運動など多くの機能をコントロールしており、交感神経と副交感神経の総称です。
自律神経が障害されると、初期には排尿障害が出現します。
また、起立時に血液が下肢に多く取られて脳血流が低下すると失神する可能性もあり、本来であれば自律神経が自動で働き、脳血流が低下しないように血圧を維持するように働いています。
しかし、自律神経が障害されると血圧の調節機能が低下するため、起立時に血圧低下を認め、ふらつきや失神などの症状を認めます。
発症後3年以内には尿道カテーテルが必要になり、尿路感染症のリスクも増加していきます。
小脳失調
脳の一部である小脳は、平衡感覚や運動の強さ、力の入れ具合、バランスなど運動の細かな調整機能を有しています。
小脳の細胞が萎縮する事で運動の調整が乱れ、構音障害やふるえ、眼球運動障害などが生じます。
ここまで記したように、多系統萎縮症は多くの神経系が障害されるため症状は多岐に渡り、特に根治術もないため症状を緩和するための対症療法やリハビリテーションが主体となっています。
非常に進行速度が早く、時には突然死を引き起こすこともあり管理が難しい病気です。
さらに診断をつけること自体が非常に難しく、発見が遅れることも少なくありません。
この記事を読むことで、読者の皆様に少しでも疾患を知ってもらえれば幸いです。
脳萎縮の原因と予防
脳が萎縮する原因には、加齢や遺伝、生活習慣などさまざまな要因が関わっています。
脳萎縮の進行を遅らせるためには、適切な運動やバランスの取れた食生活が重要です。
また、ストレスの管理や十分な睡眠も予防につながります。再生医療の進展により、将来的には脳萎縮の改善が期待される治療法が提供される可能性があります。
多系統萎縮症についてのまとめ
今回は多系統萎縮症について解説しました。
多系統萎縮症に罹患すると多くの神経機能が障害され、発症から10年以内に死亡する確率の高い難病です。
初期にはパーキンソニズムや自律神経障害、小脳失調が出現し、末期には誤嚥性肺炎や突然死、尿路感染症などのリスクがある恐ろしい病気です。
また厄介なことに、これだけ医療が進んだ現代においても特別な治療法はありません。
我々に出来ることは可能な限り早期から診断を付け、症状に対して早期介入していくことが肝要です。
また、近年では再生医療の発達も目覚ましいです。
再生医療によって損傷した神経細胞が再生すれば、今まで根治する治療法がなかった多系統萎縮症に対しても改善の期待が持てるため、現在その知見が待たれるところです。
あわせて読みたい記事:パーキンソン病最新治療の再生医療とリハビリ
外部サイトの関連記事:再生医療による最新治療法
コメント