この記事を読んでわかること
・片麻痺とは
・脳卒中が片麻痺を起こすメカニズム
・予防策と予後
脳卒中の代表的な症状である体の麻痺。
麻痺がある場所や症状の出方によって、その呼び方が変わります。
半身麻痺や全身麻痺といった言葉を聞くことがあるかもしれません。
医学的には「単麻痺」「片麻痺」「四肢麻痺」「対麻痺」などの用語があります。
この記事では脳卒中により麻痺がでるパターンの中でも頻度が多い「片麻痺」について解説します。
片麻痺とは
体の麻痺はどの手足に症状が出ているかによって分類されます。
最も症状が重いのは「四肢麻痺」で、文字通り両側の手足全てが麻痺している状態です。
一般的な用語としての全身麻痺に近い意味と考えられます。
「対麻痺」というのは脊髄損傷などにより両側の下半身が麻痺することです。
「片麻痺」というのは左右どちらかに麻痺の症状がある状態です。
右の手足、または左の手足に麻痺が起こります。
ちなみに「片麻痺」は「へんまひ」と読むこともあれば、「かたまひ」と読む場合もありどちらが正しいとも言えないようです。
(元々は「へんまひ」とされていたという意見があります)
左右の手足のうちどれか一つだけが麻痺している状態が「単麻痺」です。
左の手だけ、右の足だけ麻痺しているなどの状態です。
脳卒中が片麻痺を起こすメカニズム
体が自分の意志通りに動くためには、脳から発した運動の指令が手足まで伝わる必要があります。
大脳の運動野という場所から発せられた運動の指令は脳の中を通り、延髄の錐体という場所で左右が逆の方に伝わります。
右の運動野から出た指令は結果的に左半身へ伝わり、逆に左から出た指令は右半身へ伝わります。
この運動の指令が伝わる神経の経路のことを錐体路(すいたいろ)と呼びます。
錐体路は脳の中の放線冠、内包後脚、大脳脚、橋、延髄錐体交叉を経て脊髄前角に至ります。
錐体路のどこかで障害が起こることで麻痺症状が発生します。
ではなぜ麻痺症状が左右どちらかだけに発生する、つまり片麻痺になるのでしょうか。
それは、脳卒中は必ずしも脳全体に発生するわけではなく脳の一部分に起こることが理由です。
脳卒中が発生した部分が錐体路に関係した場所であり、片側の錐体路が障害された時に片麻痺となります。
両側の錐体路が障害されるのは「脳幹梗塞」などの疾患がありますが、この場合命に関わるほどの重症となることが多く、後遺症として残る頻度が高いのは片麻痺であるということになります。
脳卒中による片麻痺の治療
脳卒中の急性期には、神経の障害を広げずに最小限にとどめるための治療が行われます。
脳梗塞では血栓を溶かす治療や血管内治療、脳出血では手術が行われることもあります。
急性期を過ぎると回復期となり、リハビリを中心とした治療が行われます。
発症後、概ね6ヶ月程度までは回復を望むことができるため、集中的にリハビリを行います。
回復期以降は残された能力を使ってどのように生活していくかという点に重きが置かれるようになります。
これらの治療は傷ついた神経そのものを治しているわけではなく、障害を可能な限り抑えてその後の自然回復を促すという目的で行っています。
神経自体を修復する処置というのは存在しないのです。
脳卒中による片麻痺に対する再生医療
神経を直接的に治す方法は存在せず、現状その治療効果は限られています。
後遺症は生涯残るものとなり、少しでも改善する方法が望まれています。
その可能性を秘めているのが、再生医療です。
再生医療では神経の元となる幹細胞を使用して治療にあたります。
移植された幹細胞は体内で増殖、成長します。
細胞が成長する過程で分泌されるのが成長因子など、神経に対して保護的に働き修復する作用を期待することのできる物質です。
また成長した細胞は神経となり脳の一部として機能を再生する効果が期待されています。
これまで自身の回復能力に頼っていた神経の回復ですが、再生医療はその回復を最大限に引き出し、神経に対する直接的な治療となる可能性があります。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
脳卒中による片麻痺に対しては、再生医療と最先端のリハビリテーションを組み合わせることで最大限の機能回復を達成できると考えています。
脳卒中による片麻痺の症状にお悩みの患者さんやご家族の方は、ぜひご相談ください。
まとめ
脳卒中が原因で起こる片麻痺とその治療について解説しました。
治療の決め手がない片麻痺ですが、患者さんの数が非常に多く研究が盛んに行われている分野でもあります。
治療の進歩はめざましく、再生医療が重要な役割を担うことが期待されています。
<参照元>
・「運動麻痺」BRAING NURSING 34(9), 2018
・「片麻痺」リハビリナース07(03), 2014
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