この記事を読んでわかること
ニューロモデュレーションの概要がわかる。
ニューロモデュレーションを応用したさまざまな治療法がわかる。
最新のニューロモデュレーションによる治療法がわかる。
難治性のパーキンソン病やうつ病に対して、何らかの外的刺激によって神経機能を調整する治療をニューロモデュレーションと呼びます。
これまでは侵襲的な方法が多く、合併症も多い治療法でしたが、近年ではより低侵襲で安全な方法が開発されています。
そこでこの記事では、最新のニューロモデュレーションについて詳しく解説します。
パーキンソン病やうつ病への従来の侵襲的な治療法「DBS」

パーキンソン病やうつ病などの病気は、脳内における神経伝達物質(神経の情報伝達に関わる物質)の分泌異常などが原因でさまざまな症状をきたす疾患です。
例えばパーキンソン病であれば大脳基底核(脳の一部分)におけるドーパミン分泌不全が原因であり、うつ病ではセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌異常が原因の1つです。
そこで、これらの疾患では主に薬物療法が行われ、パーキンソン病であればドーパミンの補充、うつ病であればセロトニンやノルアドレナリンの作用を活性化させる薬を使い、治療します。
しかし、これらの疾患は人によって治りにくい(難治性)ことも少なくないため、その場合、これまでは「DBS」と呼ばれる侵襲的な治療が行われてきました。
DBSとはDeep Brain Stimulationの略で、日本語で脳深部刺激療法のことです。
脳の特定の部位に直接電極を挿入し、その電極によって脳の一部位を持続的に刺激することで、神経伝達物質が枯渇していても神経に刺激が入るため、神経症状の緩和・改善を目指せます。
世界で約8万人以上のパーキンソン病患者さんがDBSを受けており、治療成績も良好で高い評価を受けていますが、この手術は直接脳に電極を埋め込むため、侵襲を伴います。
頭蓋骨を開ける手術が必要となるため、一定期間の入院が必要です。
さらに、手術操作に伴う頭蓋内出血(合併率1.68%)や感染、電極の破損など、さまざまな合併症の可能性もあります。
そこで、近年より侵襲度の低い「ニューロモデュレーション」が注目されています。
低侵襲な「ニューロモデュレーション」とは
侵襲的な治療であるDBSに対して、より非侵襲的な治療法が「ニューロモデュレーション」です。
ニューロモデュレーションとは、体外から電気や磁気を当てて間接的に神経を刺激し、その働きを調整 (モデュレート) する治療法です。
広義の意味で言えばDBSもニューロモデュレーションの1つですが、近年のニューロモデュレーションでは従来のDBSのように頭の骨を開けて直接電極を植え込む必要がなく、低侵襲で治療できます。
この技術は下記のようなさまざまな疾患で応用されています。
- 反復経頭蓋磁気刺激
- 経頭蓋直流電気刺激
これはどちらも難治性うつ病などに使用される治療法であり、頭蓋骨の上から磁気や電気を照射し、脳内部の神経を刺激することで症状の改善を目指す治療法です。
さらに近年では、この技術をさらに応用した新たなニューロモデュレーションの開発も進んでいます。
新たなニューロモデュレーションの将来性
2025年11月、アメリカの研究チームはマウスを使った研究において、点滴で血管に投与した厚さ0.2μm、直径5〜20μmのワイヤレス電子チップを脳の特定領域を狙って移動させることに成功しました。
通常、ヒトの脳は異物(細菌やウイルス)の侵入を阻むため、血液脳関門(BBB:Blood-Brain Barrier)と呼ばれるバリア機能を構築しており、異物は侵入できません。
しかし、開発された電子チップには生きた細胞が持つ生体内輸送能力や生化学的な検知力が融合されており、血液脳関門を通過できる可能性を秘めています。
この技術を応用すれば、血管から直接脳の深部にまでワイヤレス電子チップを届けることができ、チップから電磁波を発することでより直接的に神経を刺激することができます。
この技術が確立されれば、より低侵襲に、より効果的なニューロモデュレーションが可能となることが期待できるでしょう。
まとめ
この記事では、難治性のパーキンソン病やうつ病に対する新たな治療法として、さまざまなニューロモデュレーションを紹介しました。
従来のDBSから始まり、磁気や電気を応用した治療法、さらにはワイヤレス電子チップを使った新たな治療法など、ニューロモデュレーションの進化は日々進んでいます。
この記事で紹介したワイヤレス電子チップの技術が開発されれば、これまで改善困難であった神経疾患の改善も期待されます。
さらに近年では、神経障害が「治る」を当たり前にする取り組みとして注目されている「ニューロテック®」という考え方があります。
これは、神経疾患に対して「狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療」再生医療「リニューロ®」を軸とするアプローチで、骨髄由来間葉系幹細胞や神経再生リハビリ®を組み合わせた治療法です。
難治性のパーキンソン病に対しても、今後このような先進的な治療法が希望となる可能性があります。
回復への選択肢を広げるためにも、医療機関と連携しながら一人ひとりに合った支援を継続することが大切です。
よくあるご質問
- ニューロモデュレーションの対象疾患はなんですか?
- ニューロモデュレーションの対象疾患は、難治性のパーキンソン病やうつ病、不随意運動、てんかん、慢性疼痛、痙縮など多岐に渡ります。
また、近年ではニューロモデュレーションの技術も高まっており、対象疾患がさらに広がる可能性も高いです。
- ニューロモデュレーションは片頭痛にも有効ですか?
- 片頭痛への新たな治療法として、ニューロモデュレーションが注目されています。
片頭痛の痛みの原因である三叉神経や後頭神経などに作用することで、頭痛の緩和が期待されます。
<参照元>
(1):脳深部刺激療法(DBS)|千葉大学医学部附属病院 脳神経外科:https://www.ho.chiba-u.ac.jp/dept/neurosurgery/disease/dbs/
(2):Shubham Yadav, et al.A nonsurgical brain implant enabled through a cell-electronics hybrid for focal neuromodulation.Nature biotechnology. 2025 Nov 05; doi: 10.1038/s41587-025-02809-3.:https://www.nature.com/articles/s41587-025-02809-3













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