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脳卒中とこれらの神経路の関係

           

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この記事を読んでわかること

脳卒中によって障害される神経経路がわかる
錐体路が障害された場合の症状がわかる
麻痺のメカニズムがわかる


脳梗塞や脳出血などの脳卒中によって脳細胞が障害されると、その障害部位に応じてさまざまな神経症状が出現します。
これは、脳や脊髄内部にある神経細胞が連結して形成される「神経路」が障害されるためです。
この記事では、代表的な神経路を紹介するとともに、各神経路が障害されることで生じる症状やメカニズムなどについても解説します。

脳卒中が引き起こす神経路の障害

脳神経
脳卒中(脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血)によって脳の正常な細胞が障害されると、その障害部位に応じて、麻痺やしびれ・認知機能障害・パーキンソニズムなどさまざまな神経症状が出現します。
では、なぜ人によって軽微なしびれだけで済む人もいれば、体に重度の麻痺が生じて体動困難になってしまう人もいるのでしょうか?
これらの症状の違いは、どの神経経路が障害されるか、によって決まります。
神経経路は脳や脳幹、脊髄、脊髄から分岐する末梢神経を含む一連の神経の流れで、これらの神経経路は脳からの運動の指令や身体からの感覚の情報などの通り道です。
代表的な神経経路は下記の通りです。

  • 錐体路(皮質脊髄路):大脳皮質から脊髄に向けて投射される運動の神経路
  • 錐体外路:錐体路による運動をよりスムーズにするよう調整する神経路
  • 脊髄視床路:脊髄から視床に向けて投射される感覚の神経路

例えば、錐体路(皮質脊髄路)が障害されれば運動の指令が手足に伝達されなくなり麻痺が、脊髄視床路が障害されれば感覚の情報が脳に伝達されなくなりしびれが出現します。
また、錐体外路が障害されればスムーズな運動が得られなくなり、手足の震えや関節のこわばりなどが生じてしまいます。
実際には、錐体路(皮質脊髄路)や脊髄視床路は脳内部に広く張り巡らされているため、脳卒中を発症する方では麻痺やしびれが出現することがほとんどです。

錐体路・皮質脊髄路の損傷による症状

では、具体的に錐体路(皮質脊髄路)が損傷するとどのように症状が出現するのでしょうか?
メカニズムを知るためには、錐体路(皮質脊髄路)の走行を理解する必要があり、上流から順に下記の通りです。

  1. 大脳皮質運動野
  2. 大脳内包後脚
  3. 中脳の大脳脚
  4. 延髄錐体
  5. 錐体交叉
  6. 脊髄前角
  7. 末梢神経

まず、大脳皮質運動野から生じた運動の指令は、神経細胞を経由して大脳内包後脚に集約し、そのまま中脳の大脳脚、延髄錐体へと下降していきます。
その後、延髄の錐体交叉で運動の指令のほとんどは左右交差し、左右反対側の脊髄をそのまま下降し、脊髄前角から各末梢神経へ刺激が伝達されます。
最終的に、末梢神経から筋肉に刺激が伝達されることで筋肉が収縮し、思い描いた運動が可能となるわけです。
このいずれかがなんらかの原因で障害されると、筋肉の収縮が得られず、思い描いた運動を得ることができなくなります。
例えば、右大脳半球で広範に脳出血を引き起こした場合、右大脳半球を経由するほとんどの運動の指令は中脳や延髄に伝達されなくなるため、その後錐体交叉して左半身の筋肉の収縮も得られなくなります。
つまり、右大脳半球の広範な障害は、左半身麻痺の原因となるわけです。
もし仮に脳全体を圧迫するような大出血や脊髄損傷であれば、左右両方の皮質脊髄路が障害を受けるため、左右両方の手足に麻痺が出現します。
一方で、脳卒中による障害部位が非常に微小であった場合、左右半身全体が麻痺するわけではなく、手や足の一部に麻痺が限局することもあります。
つまり、錐体路・皮質脊髄路の損傷による麻痺の程度は、どれくらい広範囲に脳細胞が障害されたかが非常に重要な要素となるわけです。
また障害された範囲は小さくても、運悪く錐体路(皮質脊髄路)内で非常に重要な部位をピンポイントに障害された場合は、障害範囲に釣り合わないレベルの麻痺が出現することもあるため、注意が必要です。

脳卒中後のリハビリと神経路の改善

一度障害を受けた神経細胞が再生することは困難であると考えられており、脳卒中に伴う麻痺に対しては根治治療ではなく、主にリハビリが行われています。
リハビリの効果について、安原らの研究によれば、廃用症候群の予防効果や、神経新生の増強効果が明らかにされており、神経路の改善には効果的です。
しかし、リハビリの介入が遅れたケースや神経障害が重症なケースでは機能回復が非常に限定的となるため、可能な限り発症早期からリハビリを開始し、より継続的に行うことが機能回復のためには重要です。

まとめ

今回の記事では、 脳卒中と神経経路の関係について詳しく解説しました。
脳や脳幹、脊髄には複数の神経経路が存在し、身体のさまざまな機能を調整しています。
その代表格が錐体路(皮質脊髄路)であり、身体の運動機能をコントロールしているため、脳卒中によって障害されると麻痺が生じます。
重度の麻痺は歩行や体位変換など基本的な日常動作にも支障をきたすため、発症初期から適切な治療が必要です。
特に、発症初期のリハビリには一定の効果が認められており、機能回復の為には重要ですが、重度の神経障害などの場合、機能を再生することは現状困難です。
しかし、最近では再生医療の発達が目覚ましく、不可逆的な神経症状に対し「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しており、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって、リハビリの効果をさらに高める治療を目指しています。

よくあるご質問

脳卒中になるとなぜ弛緩性麻痺になるのですか?
麻痺には、筋肉が弛緩する弛緩性麻痺と、筋肉が異常収縮する痙性麻痺の2種類があります。
脳卒中の場合、発症当初は脳からの運動の指令が筋肉に届かなくなるため、弛緩性麻痺となります。
しかし、時間の経過とともに筋肉がこわばり、痙性麻痺に至るケースもあります。

脳出血による運動神経への影響は?
脳出血によって頭蓋内には血腫が貯留し、近接する正常な脳細胞を圧迫し始めます。
それによって障害を受けた脳細胞が、運動に関わる錐体路の神経であった場合、麻痺などの運動機能障害が生じます。

<参照元>
・J Stega(中枢神経系の機能解剖):https://www.jstage.jst.go.jp/article/jkpt/5/0/5_0_11/_pdf
・J Stage(皮質脊髄路の基礎知識):https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/29/3/29_267/_pdf
・J Stage(リハビリテーションが神経保護・神経申請を増幅する):https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/advpub/0/advpub_10482/_pdf/-char/ja

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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