この記事を読んでわかること
・エダラボンが脳梗塞に有効なメカニズムがわかる
・エダラボンが開発された経緯がわかる
・エダラボンの副作用や危険性がわかる
従来の脳梗塞治療薬とは全く異なるメカニズムで脳梗塞治療が行えるエダラボン。
その効果や有効性は従来の抗血小板薬や抗凝固薬と全く異なり、これらの治療薬とエダラボンを併用することでより高い脳保護作用が得られます。
この記事では、エダラボンのメカニズムや有効性・副作用などについて詳しく解説します。
エダラボンが脳を守る!そのメカニズムを徹底解説
脳梗塞発症時、虚血に陥る脳細胞を保護するために用いられる脳保護薬こそエダラボンです。
エダラボンの効果を理解するためには、脳梗塞において脳細胞を障害する原因であるフリーラジカルについて理解する必要があります。
脳梗塞によって脳への血流が低下すると、脳細胞に十分な酸素や糖質などの栄養が供給されなくなり、脳内のさまざまな細胞(神経細胞やグリア細胞・内皮細胞など)から、スーパーオキシドやハイドロキシラジカルなどのフリーラジカルが産生されます。
このフリーラジカルは、特に脳血流の再灌流後に脳内で大量に発生されることが知られており、まだ虚血に陥っていない脳細胞(いわゆるペナンプラ領域)の細胞膜を脂質過酸化することで破壊し、神経細胞死を招くため、脳梗塞の被害を拡大する元凶です。
それに対して、エダラボンは脳梗塞で発生したフリーラジカルを消去し、脂質過酸化を抑 制する作用により、脳細胞(血管内皮細胞・神経細胞など) の酸化的傷害を抑制し、脳梗塞による神経障害を軽減する効果が期待できます。
エダラボンが特に効果を示すのはハイドロキシラジカルであり、脳内に発生したハイドロキシラジカルを消去することで脳保護作用を示します。
なぜエダラボンが注目されたのか?脳梗塞治療の新たな選択肢
1978年、Flammらの研究によって、フリーラジカルによる脳細胞の細胞膜の脂質過酸化とそれに伴う細胞障害性が提唱されたのが最初のきっかけです。
以降、脳梗塞の症状改善や脳保護のために、フリーラジカルを除去する治療が模索されてきました。
これまでの脳梗塞治療といえば、血栓の形成を予防する抗血小板薬(アスピリンなど)や抗凝固薬(ワーファリンなど)が主でしたが、2001年にはついに世界初の脳保護剤エダラボンが日本でも承認されました。
有害なフリーラジカルを消去、無害化し、脳を酸化障害から保護する作用機序はこれまでの脳梗塞治療薬とは一線を画すものです。
また、エダラボンにはフリーラジカルの消去以外にも、脳浮腫の予防や脳神経細胞の保護作用など、さまざまな効果がある点でも脳梗塞の新たな治療法として革新的でした。
エダラボンがもたらす効果とは?臨床試験で実証された効果
では、具体的にエダラボンはどのような効果を持つのでしょうか??
まず、エダラボンの適正用量を検討した後期第2相試験では、1回10mg、30mg、45mgで比較検討し、1回30mgが適正用量であることが判明しています。
次に、有効性や安全性を確認した第3相試験では、症状の改善率について下記のような結果が得られています。
エダラボン投与群 | コントロール群 | |
---|---|---|
発症後72時間以内に投与 | 65% | 32% |
発症後24時間以内に投与 | 74% | 26% |
上記に記した改善率の差からも、エダラボンの最善の投与法は発症から24時間以内での投与です。
実際に、添付文章上では発症後24時間以内に成人に1回1袋(エダラボンとして30mg)を、30分かけて1日朝夕2回の点滴静注を行うことを推奨しています。
またコントロール群とエダラボン投与群において副作用の出現率にも有意差を認めず、同時に安全性も確保されている治療法です。
エダラボンの副作用と注意点
とはいえ、エダラボンに一切副作用がないかというとそうでもありません。
エダラボンで気をつけるべき副作用は主に下記の通りです。
- 急性腎不全
- 肝機能障害
- 血小板減少
- 播種性血管内凝固症候群(DIC)
- 急性肺障害
- 横紋筋融解症
- アナフィラキシーショック
特に急性腎不全は代表的な副作用であり、脱水状態の方や感染症を発症している方、心疾患を有する方の場合はリスクが高いため、注意が必要です。
まとめ
今回の記事では、脳梗塞治療薬の1つであるエダラボンの効果や投与法・副作用などについて詳しく解説しました。
脳梗塞によって脳が完全に破壊されると、破壊された部位に応じて麻痺やしびれなど、さまざまな後遺症が残ってしまいます。
そのため、脳梗塞発症後の被害を抑えるためにフリーラジカル除去可能なエダラボンは良い治療の選択肢です。
しかし、一度残ってしまった後遺症を改善できるわけではなく、現状では脳梗塞によって出現する後遺症に対して、リハビリテーションが唯一の改善策となります。
一方で、近年では脳梗塞後の後遺症に対して再生治療が新たな治療法として非常に注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、脳梗塞後遺症の改善も期待できます。
よくあるご質問
- 脳梗塞にエダラボンを使うのはなぜ?
- 脳梗塞発症時や、その後の再灌流時には脳内でハイドロキシラジカルなどのフリーラジカルが発生し、周囲の脳細胞の細胞膜を障害することで神経細胞死を招くことが知られています。
エダラボンはフリーラジカルを除去できることが知られており、脳保護のために有用です。 - エダラボンの投与期間は脳梗塞でどのくらいですか?
- エダラボンは1回30mgを1日2回、発症後24時間以内に投与することでより高い効果を発揮します。
また、有効性と安全性の観点から、投与期間は14日間以内が好ましいとされています。
<参照元>
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcdp2001/40/1/40_1_50/_pdf/-char/ja
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/119/5/119_5_301/_pdf
・日本医薬情報センター:https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00059718.pdf
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/19/3/19_461/_pdf
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