この記事を読んでわかること
・くも膜下出血再発の前兆
・くも膜下出血の再発は防げるか
・くも膜下出血の10年再発率
くも膜下出血は脳のくも膜の中で出血する病気で、頭をぶつけるなどすることで起こることもありますが、多くは脳の血管の分岐部にできたコブ(脳動脈瘤)の破裂によるものです。
人口10万人あたり約20人に発症するとされ、そのうち8割は脳動脈瘤の破裂が原因とされています。
出血を起こした場合、多くの方は救急車で脳神経外科のある病院に運ばれますが、30%の方は昏睡状態で入院します。
極めて状態が悪い場合には救う手立てがなく、死に至ってしまう場合もあります。
幸い症状が軽微な場合には、脳動脈瘤の治療を早期に行います。
くも膜下出血の再出血率は発症当日が最も高く、何もしない場合1ヵ月以内に約50%が再出血すると言われているからです。
早期の再出血が防げても、将来的な再発の不安は残ります。
今日は、くも膜下出血の治療と再発について解説します。
くも膜下出血再発の前兆
くも膜下出血が再発すると、症状は初回よりも重くなることが知られています。
そのため、最も重要なのは再発を起こさないことですが、残念ながら再発を起こしてしまった場合には、早期発見が非常に重要となります。
くも膜下出血はある日突然に起こる、と言われていますが前兆と思われる症状がでるケースがあります。
前兆のような症状があった場合には、早めに受診を検討するようにしてください。
くも膜下出血の前兆として知られているのは、一つは血圧の乱れです。
血圧が急に高くなったり、低くなったりした後にくも膜下出血を起こす場合があります。
血圧の変化は症状として自覚しない場合も多いので、不安がある方は日常からチェックする習慣をつけておくと良いでしょう。
また、本格的な発症の前段階で動脈瘤から少量の出血が起こることがあり、この場合頭痛を自覚します。
頭痛の程度は人によって異なりますが、「警告頭痛」などと呼ばれ注意が必要な症状です。
そのほか目の異常(二重にみえる、痛みなど)やめまい、吐き気を感じることもあります。
くも膜下出血の再発は防げる
くも膜下出血再発を防ぐためには、主な原因である脳動脈瘤の治療が必要です。
脳動脈瘤の治療には主に開頭クリッピング術とコイル塞栓術があります。
開頭クリッピング術
髪の毛を剃った後に頭部の皮膚を切開、頭蓋骨を部分的に切開して開頭した後に、脳動脈瘤を見つけてクリップをかける手術です。
全身麻酔で手術が行われます。
動脈瘤の多くは10mm以下であるため、顕微鏡で見ながら手術を行います。
クリップの多くはチタン製の金属ですが、最近のクリップではMRIを撮影することができるようになっています(昔のものは注意が必要です)。
血の塊が残っていると、脳の血管がれん縮(血液に反応して縮まってしまい、その先の血流が悪くなる)してしまうため、できるだけきれいに除去します。
また、脳内の圧が上がらないように、内部の液体を外に排出するチューブを入れてくることがあります。
コイル塞栓術
血管の中からカテーテルを動脈瘤まで進め、中から破裂部位をプラチナ製のコイルで詰める方法です。
開頭クリッピング手術とどちらがいいかというのは、病状により異なるので一概には言えませんが、どちらでも治療可能な破裂動脈瘤に対しての1年間治療成績はコイル塞栓術が良かったというデータがあります。
日本で行われている脳動脈瘤治療の約4割、ヨーロッパでは8割以上がコイル塞栓術と言われています。
コイル塞栓術では約3mmのカテーテルを太もものつけ根の血管から頚部の血管まで挿入します。
そこから0.57mmの非常に細い管を動脈瘤まで進めた後に、コイルを動脈瘤内に詰めていきます。
頭を切らずに治す事ができる素晴らしい治療である反面、長期的にはコイルが血流に押されて動脈瘤が再発してしまう心配があります。
くも膜下出血の10年再発率
動脈瘤の処置を何もしない場合の再発率を追うのは難しい(病院に来ていない方がいらっしゃるため)のですが、開頭クリッピング術を受けた方の再発を調べた国内の研究があります。
この研究では、動脈瘤が完全に治療された後3年以上生存していた方220名を対象にその後の経過を調べたところ、平均9.9年(3-21年)の状況を調べることができました。
その結果、再発率は5年間で0.5%、10年で2.2%、20年で9%という結果でした。
コイル塞栓術後の再発率は明らかではありませんが、若干高い可能性はあると思われ、いずれにしても術後の慎重な経過観察が重要であることは言うまでもありません。
まとめ
動脈瘤の手術治療、くも膜下出血の再発について解説しました。
脳卒中の中でもくも膜下出血は重症の部類に入る怖い病気です。
脳ドックなどで偶然に動脈瘤が発見されることもあります。
その場合には正しい知識を持って治療に臨み、再発予防に努めましょう。
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