この記事を読んでわかること
・化膿性脊椎炎とは
・化膿性脊椎炎のリハビリ
・化膿性脊椎炎の後遺症と再生医療
化膿性脊椎炎とは脊椎(背骨)に細菌が感染してしまう疾患です。
発熱と腰背部痛が最も多い症状ですが、時に血圧低下や意識障害、脊髄損傷のような対麻痺、膀胱直腸障害を起こすこともあります。
この記事では化膿性脊椎炎がどのような病気かを話しつつ、リハビリや再生医療との関わりについて述べています。
化膿性脊椎炎とは
脊椎は一般には背骨と言われ、7個の頚椎、12個の胸椎、5個の腰椎、仙椎、尾骨で成り立っています。
役割としては脳とつながる脊髄を保護する、体を支える、動きを作り出す、肋骨とともに内臓を保護するなどがあります。
脊椎に何らかの細菌が感染してしまう病気を化膿性脊椎炎と呼びます。
原因の細菌では、皮膚の常在菌でもある黄色ブドウ球菌、尿路感染の最も多い原因菌でもある大腸菌、院内感染でも重要な緑膿菌などが知られています。
結核での化膿性脊椎炎は、脊椎カリエス(結核性脊椎炎)と呼ばれ、区別されます。
発症率は10万人あたり、2.4人〜6.5人と報告されており、高齢になるほど高くなります。
糖尿病や悪性腫瘍(がん)、血液透析、肝硬変などがあると発症するリスクが高くなると言われています。
症状
最も多い症状は腰痛(86%)と発熱(35-60%)です。
急性のものほど症状が出やすいですが、慢性的に経過すると単なる腰痛症として見逃されることもあります。
不明熱の原因として分かることもあります。
重症の場合には血圧が下がり、意識が悪くなることもあります(敗血性ショック)し、肝臓や腎臓などの臓器に障害が起こることもあります(敗血症)。
感染した脊椎が変形したり、脊髄のそばに膿(膿瘍)が出てしまったりすると脊髄や神経を圧迫してしまいます。
脊髄損傷と同じように、手足の麻痺、尿閉(尿がうまく出せない)などの症状が出ます。
検査
検査には血液検査と画像検査が行われます。
血液検査では白血球、中でも細菌感染の際に多くなる好中球が上昇します。
また、CRPや赤沈といった、全身の炎症を示す項目で異常となります。
しかし、どちらも体のどこかで感染や炎症が疑われるだけであり、どこで起こっているのかの確認に画像検査が必須となります。
レントゲン写真はもっと簡便で多くの施設で行われますが、病気の検出率は高くありません。
発症後2週間で異常が出始めるとも言われているので、正常だからといって否定することはできません。
MRIは90%の精度があるため、化膿性脊椎炎が疑われた際にはほぼ行う検査となります。
MRIとともに論じられることの多いCTは、化膿性脊椎炎に限ってはあまり有用とは言われていません。
これらの検査で異常が出ない場合には、放射線を出す薬剤を利用したPET(Positron Emission Tomography)やシンチグラフィが行われます。
また、化膿性脊椎炎の治療のためには、原因となっている細菌を同定することも重要です。
血液培養や生検などが行われます。
治療
細胞を殺す抗菌薬の投与が第一になります。
抗菌薬は6週間程度は投与することが推奨されています。
血圧が下がったり、意識が悪かったりといった重症な場合には、集中治療室で治療を行うこともあります。
進行する神経症状(足に力が入らない、尿が出ないなど)がある場合、脊椎が感染により変形して不安定になっている場合などでは手術療法が適応となります。
化膿性脊椎炎のリハビリ
重症な場合、脊椎の不安定性や神経症状がある場合には、全身状態を安定させるための治療や手術が優先されます。
リハビリテーションは呼吸理学療法(痰を出すのを促したり、呼吸をしやすくする方法)やベッド上での関節可動域(関節が固まらないように動かす)から始まります。
状態が安定したら離床(起き上がる、座るなどでベッドで横になる時間を減らす)を進めて行き、次いで歩行練習や日常生活動作(服を着る、浴槽をまたぐなど生活に必要な動作)の練習をしていきます。
重篤な麻痺が生じ、自宅復帰が難しい場合には回復期リハビリテーション病院でのリハビリテーションも検討することができます。
再生医療について
化膿性関節炎は骨の病気ではありますが、骨が変性したり、膿がたまったり(特に硬膜外膿瘍)することで神経が圧迫され、症状を起こすことがあります。
重症なものでは脊髄損傷と同じように対麻痺(足が動かせない、感覚がわからない)や膀胱直腸障害(尿が出せない、便が出せないなど)が顕著になることもあります。
これまで一度損傷を受けた神経は治りにくいと言われてきましたが、近年では再生医療が注目されています。
当院では脊髄損傷の後遺症がある方に対し、幹細胞点滴(ニューロテック®)を導入しています。
再生医療と並行してリハビリを行う、神経再生医療×同時リハビリ™で後遺症を少しでも減らし、元の生活に近づくために治療を行っています。
まとめ
この記事では化膿性脊椎炎の病態やリハビリについて解説をしました。
治療期間が長くなり、時には下肢の麻痺などの後遺症が出ることがあるので、適切な診断、治療が望まれます。
後遺症に対し、再生医療の更なる発展も期待されます。
よくあるご質問
化膿性脊椎炎の死亡率は?
化膿性脊椎炎の死亡率は2-20%と報告されています。MRIなどの診断技術の発展や抗菌薬の登場での治療法の発展により、以前より減少傾向にありますが、依然として死亡率は高い疾患と言えます。
化膿性脊椎炎の特徴は?
化膿性脊椎炎の発熱と腰背部痛が主な症状です。血液検査では炎症反応の上昇があり、診断には画像検査が行われます。抗菌薬投与で多くの例が治りますが、一部重症となることがあります。
<参照元>
Werner Zimmerli. Vertebral Osteomyelitis.N Engl J Med 2010; 362:1022-1029
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcp0910753
Akiyama, T.et al. Incidence and risk factors for mortality of vertebral osteomyelitis: a retrospective analysis using the Japanese diagnosis procedure combination database. BMJ open, 3(3), e002412.
https://bmjopen.bmj.com/content/3/3/e002412.long
Rutges, J. et al. Outcome of conservative and surgical treatment of pyogenic spondylodiscitis: a systematic literature review. European spine journal : official publication of the European Spine Society, the European Spinal Deformity Society, and the European Section of the Cervical Spine Research Society, 25(4), 983–999.
https://link.springer.com/article/10.1007/s00586-015-4318-y
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