この記事を読んでわかること
・もやもや病は脳の血流が低下する病気で、子どもでは一過性の脱力発作や言葉の障害、頭痛などの症状がみられることが多いことがわかる。
・過呼吸が症状を悪化させる原因となり、激しい運動やストレスを避けることが発作の予防につながることがわかる。
・バイパス手術などの治療法があり、適切な治療と日常生活の工夫によって症状を管理できる可能性があることがわかる。
もやもや病は、脳の血管が徐々に狭くなり、脳への血流が低下することでさまざまな神経症状を引き起こす病気です。
特に子どもの場合、一過性の脱力発作や過呼吸による症状悪化がみられることが多く、適切な管理が重要になります。
本記事では、もやもや病の特徴的な症状や、日常生活での注意点について詳しく解説します。
脳虚血による一過性の脱力発作とは
もやもや病(ウィリス動脈輪閉塞症、 cerebrovascular “moyamoya” disease)という病気のことです。
日本人によくみられる、原因不明の進行性の脳血管閉塞症です。
脳血管動脈検査で、両側の内頸動脈の終末部、つまり最も先端が狭窄または閉塞してしまい、その周囲に異常な血管網(もやもや血管)を認める病気です。
1957年にその特徴的な脳血管撮影所見が初めて報告され、1960年代に病気としての概念が確立しました。
家族性に発症する方が10〜20%ほどみられ、男女比はやや女性の方が多いです。
発症年齢として、5〜10歳が最初の高い山で、その後30〜40歳を中心とする低い山がみられます。
もやもや病は、脳の検診などで発見される無症状のものから、何らかの神経症状がみられるものまで多彩です。
そして、脳虚血型(一過性脳虚血発作;TIA型、脳梗塞型)、脳出血型、てんかん、無症候型などに大きく分けられます。
子どもの場合には、脳の血流が低下してしまうことによる脳虚血症状が大半を占めています。
一方で、成人の場合には出血がみられる方が30〜40%みられます。
子どもの神経症状としては、以下のようなものがあります。
- 意識障害
- 脱力発作(手足の麻痺など)
- 感覚の異常
- 不随意運動
- 痙攣
- 頭痛
症状は改善する場合と、永続的にみられる場合があります。
脳の虚血部分が大きく、重症な脳梗塞、特に後大脳動脈閉塞が起こってしまうと、運動麻痺や言語障害の他に、知能低下や視野障害といった重い症状が残る場合もあります。
なお、もやもや病の診断には、MRI(磁気共鳴画像)やMRA(磁気共鳴血管撮影)が一般的に使用されます。
特に、MRAでは脳の血管がどの程度狭窄しているのか、異常血管(もやもや血管)がどのように分布しているのかを詳細に評価できます。
さらに、SPECT(単一光子放射断層撮影)を用いた脳血流シンチグラフィーにより、脳の血流が低下している部分を特定することも可能です。
過呼吸が誘発する症状とそのメカニズム
過呼吸になると、血液中の二酸化炭素が急激に低下します。
二酸化炭素には血管を拡張させる働きがあるので、この二酸化炭素が減ると脳の動脈が収縮し、脳の血流が低下することに繋がります。
過呼吸によって、一過性脳虚血発作が起こると、急に「手足が動かしにくい」「手足や顔面がしびれる」「うまく言葉がでない」というなどといった症状が起こります。
数分から数時間で回復することが多いです。
日常生活で避けるべき行動と予防策
もやもや病と診断されている場合、脳の虚血発作を引き起こす行動は避けましょう。
日常生活で避けるべき行動には以下のようなものがあります。
- ラーメンやうどんなどの熱い食べ物を「フーフー」と吹く、「吹き冷まし行動」
- リコーダーや鍵盤ハーモニカなどを吹く
- 歌を歌う
- 大笑いする
こうした動作は避けるようにすべきでしょう。
また、過呼吸になる原因としては、不安や恐怖、精神的なストレスなどの心の問題があります。
その他、マラソンなどのスポーツの直後や、睡眠不足などの肉体的な疲労も過呼吸の原因となります。
そのため、激しい運動は避けるようにし、日頃からしっかりと休養を取ることが大切です。
また、自分なりのストレス解消方法を見つけ、リラックスできる時間をとるようにすることも良いでしょう。
また、もやもや病の治療には、大きく分けて脳血流を改善する薬を内服する内科的治療と外科的治療があります。
内科的な治療でも発作が繰り返される場合には、手術が必要となります。
脳虚血型のもやもや病の方に対しての治療としては、脳の血流量を増やすためのバイパス手術があります。
この手術が行われた後には、日常生活で過呼吸に気をつけることはほとんどなくなります。
しかし、打撃系の格闘技であるボクシングや、ラグビーなどは脳の強い振動や血管の損傷が起こる場合があるので、避けた方が良いと考えられます。
また、サッカーのヘディングについてもその安全性については、まだわかっていません。
まとめ
子どものもやもや病は、脳の血流が低下することで一過性の脱力発作(TIA)や過呼吸による症状悪化が生じる病気です。
特に、運動やストレスが発作の引き金となることが多く、日常生活での管理が重要になります。
日常生活での注意点としては、激しい運動を避ける(適度な運動を心がける)、ストレス管理を徹底する(リラックスできる環境を整える)などが挙げられます。
また、近年ではニューロテック®が提供する狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療「リニューロ®」などの神経再生医療が注目されており、もやもや病による神経障害の軽減に役立つ可能性もあります。
適切な治療と生活習慣の見直しを行いながら、お子さんが安心して生活できる環境を整えていきましょう。
よくあるご質問
- もやもや病の症状は子供にどんなことがありますか?
- もやもや病の子どもには、脳の血流不足による一過性の脱力発作や手足のしびれ、言葉がうまく出ないなどの症状がみられます。
運動や過呼吸が発作を引き起こすことがあり、頭痛やめまい、意識消失を伴うこともあります。
症状は一時的に回復することが多いですが、頻繁に繰り返される場合は注意が必要です。 - もやもや病になると性格はどうなりますか?
- もやもや病自体が直接性格を変えるわけではありませんが、脳の血流不足によって注意力が低下したり、感情の起伏が激しくなることがあります。
また、発作への不安や日常生活の制限から内向的になったり、ストレスを感じやすくなることもあります。
周囲の理解とサポートが大切で、安心できる環境を整えることが重要です。
<参照元>
(1):もやもや病(ウイリス動脈輪閉塞症)診断・治療ガイドライン (改訂版).脳卒中の外科.2018;46:1-24.:https://www.jstage.jst.go.jp/article/scs/46/1/46_1/_pdf
(2):もやもや病(指定難病22)|難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/209
(3):もやもや病…ここまできた診断・治療 公益社団法人 循環器病研究進行財団:https://jcvrf.jp/general/pdf_arekore/arekore_117.pdf
(4):過換気(過呼吸)症候群について | 病気について | 近畿大学 メディカルサポートセンター:https://www.kindai.ac.jp/health/about/kakanki/
・もやもや病|神奈川県立こども医療センター:https://kcmc.kanagawa-pho.jp/diseases/moyamoya.html
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