この記事を読んでわかること
・側頭葉の担っている機能がわかる
・側頭葉の損傷によって記憶能力にどのような影響が出るかわかる
・側頭葉の損傷によって言語理解にどのような影響が出るかわかる
側頭葉は言語や記憶・聴覚・感情など、さまざまな機能を有する部位であり、左右によっても主に担う機能が異なります。
特に左側頭葉では言語理解や長期記憶など、日常生活において必要不可欠な機能を司っているため、損傷によって生活に与える影響も大きいです。
この記事では、側頭葉における脳梗塞が生活に与える変化について解説します。
側頭葉の役割とは?記憶や感情を司る重要な部位
側頭葉とは、その名の通り大脳の左右両サイドに位置する部位であり、主に担う機能は下記の通りです。
- 起きた出来事を短期記憶・長期記憶として加工・保存する
- 言語の理解
- 音の理解や記憶
- 記憶と感情を生み出す
側頭葉の担う役割は左右で異なり、右利きの人のほとんどと、左利きの人の⅔は、左側頭葉で言語の意味を理解し、記憶の保存・加工を行います。
一方で、右側頭葉では音などの非言語的聴覚刺激の解釈や記憶、感情的理解などの機能を担います。
そのため、なんらかの原因で側頭葉が障害された場合、左右や範囲に応じて出現する症状も異なるため、注意が必要です。
側頭葉の脳梗塞で起こる症状を解説!日常生活にどんな影響が?
では、脳梗塞などによって側頭葉が障害された場合、どのような症状が出現し、日常生活にどのような影響を与えるのでしょうか?
左右に分けて解説します。
左側頭葉の場合
まず、左側頭葉が障害されると、記憶能力と言語理解能力が障害されます。
一言に記憶能力といっても、側頭葉の脳梗塞において障害されるのは主に長期記憶です。
例えば、誰かに言われた電話番号を記憶し、その後すぐにその電話番号を想起しながら電話をかけるのは、長期記憶ではなく短期記憶であり、主に前頭前野が担っています。
一方で、これらの記憶が保持され、固定化されるとすぐに忘れることはなくなり、これを長期記憶といいます。
長期記憶を主に担うのは側頭葉の海馬であり、海馬を損傷すると長期的に記憶を保持できなくなるため、注意が必要です。
また、左側頭葉の後上部にはWernicke言語中枢が存在しており、聞いた言語や書かれた文字の理解を司っています。
そのため、Wernicke言語中枢が障害されると、単語は流暢に発話できますが、相手の言葉の意味を理解できないため、会話は成り立ちません。
また、書かれている文字の意味も理解できないため、やはりコミュニケーションに重大な支障をきたします。
右側頭葉の場合
一方で、右側頭葉が障害されると、相手の感情への理解や非言語的聴覚が障害されます。
感情の平坦化や共感性の低下・音や音楽への理解力の低下や認知機能の低下などの症状をきたすため、注意が必要です。
例えば、感情のコントロールがうまくいかずに脱抑制や攻撃性が低下したり、音が鳴っていてもどのようなメロディーかわからない、もしくは音が鳴っていないのに音がうるさいという、などの聴覚障害もきたします。
言葉がわからなくなる?側頭葉の脳梗塞が記憶力に与える影響
先述したように、特に左側頭葉では記憶能力と言語理解を司るため、脳梗塞によって障害されることでこれらの機能が障害されます。
人が記憶する過程は下記の4つに分類され、特に側頭葉の脳梗塞で障害されるのはconsolidationとstrageです。
- encoding(符号化):脳内に流入した視覚的、もしくは言語的情報を処理して記憶を形成する
- consolidation(固定化):記憶を固定・定着させる
- strage(保存):記憶を保持・保存する
- retrieval(想起):保存した記憶を引き出す
consolidationとstrageが主に障害されることで、前日に食べた食事の内容が思い出せなかったり、誰と食事をしたのか思い出せなくなります。
一方で、長期記憶は海馬から徐々に大脳皮質に移動し、そこからretrieval(想起)できるようになるため、古くからの記憶(誕生日や歩き方など)は側頭葉の障害でも保全されやすいです。
感情のコントロールが難しくなる?側頭葉脳梗塞と心の変化
本来、感情のコントロールは前頭葉が主に担っている機能ですが、側頭葉でも一部感情や情動を司っていることが知られています。
感情が平坦化して抑揚がなくなったり、他者への共感能力が低下することが知られていますが、側頭葉のより前方が障害されると脱抑制などの社会的行動異常が出現し、突如怒ったり攻撃性が増加することもあります。
また、被害妄想が強まったり、劣等感を感じやすくなるなどの心理的変化も起こりやすくなるため、注意が必要です。
まとめ
今回の記事では、側頭葉の脳梗塞によって記憶や言語に生じる影響について詳しく解説しました。
側頭葉は言語・記憶・情動・聴覚など、幅広い機能を司っており、さらに左右で担っている機能が異なるため、どの部位をどの範囲で損傷を受けるかによって、出現する症状もさまざまです。
特に、言語や記憶能力の低下は、日常生活にさまざまな支障をきたすため、注意が必要です。
現状では早期からのリハビリテーションが唯一の改善策ですが、これらの後遺症を完全に根治させることは困難です。
一方で、近年では片麻痺や発語障害に対して再生治療が新たな治療法として非常に注目されています。
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よくあるご質問
- 脳梗塞による記憶障害のメカニズムは?
- 脳梗塞によって側頭葉、特に海馬が損傷を受けると、記憶の定着、保持ができなくなるため、特に長期記憶が障害されます。
前日食べた食事内容や、誰と食べたかなどの記憶が定着しなくなります。 - 側頭葉が障害されるとどうなる?
- 側頭葉が障害されると、記憶力の低下、言語理解の低下、感情の平坦化・聴覚の異常など、さまざまな支障をきたします。
言語障害では、聞いた言語や書かれた文字の意味がわからなくなるWernicke失語をきたし、他者とのコミュニケーションに重大な支障をきたします。
<参照元>
・MSDマニュアル:
https://www.msdmanuals.com/
・J STAGE:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/42/3/42_365/_pdf
・J STAGS:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/clinicalneurol/64/7/64_cn-001886/_pdf/-char/ja
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