この記事を読んでわかること
ボタンが留めにくいなどの症状と頸部脊柱管狭窄症との関係がわかる。
MRIをはじめとした検査の流れや診断のポイントがわかる。
保存療法と手術の考え方、日常生活で気を付けたいことがわかる。
ボタンが留めにくい、箸が使いづらい、つまずきやすいといった症状を感じたことがある方はいませんか。こうした症状は、頸部脊柱管狭窄症による脊髄の圧迫が原因となっていることがあります。この記事では、頸部脊柱管狭窄症の初期症状の特徴やMRIなどの検査、保存療法と手術の考え方、日常生活での注意点までわかりやすく解説します。
ボタンが留めにくいのは頸部脊柱管狭窄症のサイン?初期症状をチェック
手先の細かな作業がしづらくなる症状は、単なる加齢ではなく頸部脊柱管狭窄症が原因となっている場合があります。
頸部脊柱管狭窄症とは、首の骨(頸椎)の中を通る脊柱管が狭くなり、その中を通る脊髄が圧迫される病気です。
加齢による骨や靱帯の変化、椎間板の変性などが重なることで発症しやすくなります。
脊髄が圧迫されると、細かな手の動きが障害される巧緻運動障害が現れる場合があります。
具体的には以下のような症状がみられます。
- ボタンを留めにくい
- 箸をうまく使えない
- ペンで文字を書きにくい
- 小銭を取り出しにくい
また、病気が進行すると、こうした症状が出現することがあります。
- 手足のしびれ
- 歩行時につまずきやすい
- 階段で不安定になる
- 足がもつれる
- 排尿・排便の異常
症状はゆっくり進行することが多いため、「年齢のせい」と思って受診が遅れるケースも少なくありません。
しかし、脊髄への圧迫が続くと回復しにくくなることもあるため、気になる症状が続く場合は整形外科を受診することが大切です。
頸部脊柱管狭窄症はどのように診断される?MRI検査の役割
頸部脊柱管狭窄症が疑われる場合は、症状や神経の状態を確認したうえで、画像検査を組み合わせて診断します。
手足のしびれやボタンが留めにくいといった症状はほかの病気でもみられるため、原因を正確に見極めることが重要です。
まずは問診で、症状が現れた時期や経過、日常生活で困っていることなどを確認します。
その後、手足の筋力や感覚、腱反射(膝などをたたいて神経の働きを調べる反射)、歩行状態などを調べる神経学的診察が行われます。
手先の細かな動きがどの程度障害されているかを確認するため、ボタンの留め外しや箸の使い方などについて質問されることもあります。
画像検査では、それぞれ役割が異なります。代表的な検査には次のようなものがあります。
- レントゲン検査:頸椎の並びや変形、骨棘(骨のとげ)の有無などを確認します。
- MRI検査:脊柱管の狭さや脊髄の圧迫の程度、椎間板ヘルニアの有無などを詳しく評価します。
- CT検査:骨の形態をより詳しく確認したい場合に行われます。
なかでもMRI検査は、脊髄や神経の状態を詳しく評価できるため、頸部脊柱管狭窄症の診断において重要な検査です。
症状の原因が脊髄の圧迫によるものかどうかを判断し、治療方針を決める際にも役立ちます。
一方で、ボタンが留めにくい、手のしびれといった症状は、頸部脊柱管狭窄症以外でも起こる可能性があります。
症状が似ている病気もあるため、医師は診察や検査結果を総合的に判断して診断します。
鑑別が必要となる病気には次のようなものがあります。
- 頸椎椎間板ヘルニア
- 手根管症候群
- 肘部管症候群
- 脳梗塞などの脳血管障害
これらは治療方法が異なるため、自己判断で原因を決めつけず、気になる症状がある場合は整形外科を受診することが推奨されます。
保存療法と手術はどう選ぶ?日常生活で気を付けたいこと

頸部脊柱管狭窄症と診断されても、すべての患者さんに手術が必要となるわけではありません。
症状の程度や脊髄への圧迫の強さ、日常生活への影響などを総合的に評価し、一人ひとりに適した治療方針が選択されます。
症状が比較的軽く、進行がみられない場合には、保存療法が選択されることがあります。
保存療法では、痛みやしびれを和らげながら症状の変化を慎重に経過観察します。
主な保存療法には、次のようなものがあります。
- 痛みやしびれを和らげる薬物療法
- 首や全身の機能維持を目的としたリハビリテーション
- 首への負担を減らす生活指導
- 必要に応じた頸椎カラー(首を固定する装具)の使用
一方で、手先の細かな動作が急速に悪化した場合や、歩行障害、排尿・排便障害など脊髄症状が進行している場合には、手術が検討されます。
診察では、神経症状を評価する指標であるJOAスコアなども参考にしながら、手術が必要かどうかを判断します。
日常生活では、首への負担をできるだけ減らすことも重要です。症状の悪化を防ぐためには、次のような点を意識するとよいでしょう。
- 長時間うつむいた姿勢を続けない
- パソコン画面の高さを調整し、首が前に出ない姿勢を心掛ける
- 転倒しやすい場所を整理し、歩行時の安全を確保する
- 自己判断で首を強く反らすストレッチを行わない
これらは症状の改善を保証するものではありませんが、首への負担を軽減し、日常生活を送りやすくするための工夫として役立ちます。
また、受診時には治療について十分に理解できるよう、疑問点を医師に確認しておくことも大切です。
次のようなことを質問すると、今後の見通しを立てやすくなります。
- 現在の症状はどの程度進行しているのか
- 保存療法で経過をみられる可能性はあるか
- 手術を検討する目安は何か
- 日常生活や仕事で避けた方がよい動作はあるか
症状が軽いうちは「そのうち治るだろう」と様子を見てしまう方も少なくありません。
しかし、頸部脊柱管狭窄症では、脊髄への圧迫が続くことで神経障害が進行することがあります。
ボタンが留めにくい、歩きづらいなどの症状が続く場合には、自己判断せず早めに整形外科を受診し、自分に合った治療について相談しましょう。
まとめ
ボタンが留めにくい、箸が使いづらいといった症状は、頸部脊柱管狭窄症による脊髄の圧迫が原因となっていることがあります。
症状が続く場合は加齢のせいと決めつけず、整形外科で相談することが勧められます。
MRIなどの検査で原因を確認したうえで、症状に応じた治療方針が選択されます。
そして、日常生活で首への負担を減らす工夫を続けることが、症状の進行予防や生活の質の維持につながります。
ニューロテック
近年では、頸部脊柱管狭窄症をはじめとする脊髄の障害に対して、機能回復の可能性を広げる取り組みとして「ニューロテック®」という考え方が注目されています。
ニューロテック®は、再生医療「リニューロ®」を軸に、骨髄由来間葉系幹細胞を用いた治療や神経再生リハビリ®などを組み合わせ、脳や脊髄の機能回復を支援することを目指すアプローチです。
頸部脊柱管狭窄症では、症状の程度に応じて保存療法や手術が検討されますが、治療後もリハビリテーションや日常生活での工夫を継続することが大切です。
主治医やリハビリスタッフと相談しながら、自分の状態に合った治療や支援を受け、機能の維持・改善を目指していきましょう。
よくあるご質問
- 手の動かしにくさが片手だけに現れる場合でも頸部脊柱管狭窄症の可能性はありますか?
- 初期には片側だけに症状が現れることもありますが、手根管症候群や肘部管症候群などでも似た症状がみられます。症状の範囲や経過だけで原因を判断することは難しいため、整形外科で詳しい診察を受けることが大切です。
- 頸部脊柱管狭窄症と診断されたら運動はやめた方がよいですか?
- 必ずしもすべての運動を中止する必要はありませんが、症状や治療方針に応じて内容を調整することが重要です。自己判断で激しい運動や首に負担のかかる動作を続けず、医師や理学療法士の指導に従いながら取り組みましょう。
<参照元>
(1)頸部脊柱管狭窄症 (けいぶせきちゅうかんきょうさくしょう)とは|済生会
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/cervical_canal_stenosis/
(2)頚椎症性脊髄症 | KOMPAS(慶應義塾大学病院)
https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000165/
(3)頚髄症に対する理学療法評価項目とその判定基準|J-STAGE
https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/22/4/22_4_533/_pdf





