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脳梗塞治療中に発生する偽痛風の原因と予防法

           

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この記事を読んでわかること

偽痛風って何?
脳梗塞と偽痛風の関係とは
偽痛風の診断と治療


足の指のつけ根や膝が急に赤く腫れて痛くなる。
痛風の経験がある方であれば、イメージしやすいかもしれません。
なぜこのブログに痛風の話が出てくるのでしょう?
痛風と似た症状を引き起こす偽痛風(ぎつうふう)という疾患があります。
実はこの偽痛風が、脳梗塞の急性期に発症する頻度が高いことが知られているのです。
一見無関係にも思える脳梗塞と偽痛風。
ここでは両者の関係、注意したいことについて解説していきます。

偽痛風の原因と痛風との違いや食事との関連性

偽痛風
偽痛風というのは、はっきりしたきっかけなく膝や肘、手首などの関節が炎症を起こし、赤く腫れて痛みを引き起こす疾患です。
痛風は体内の尿酸が結晶として関節に析出することで起こる関節の炎症ですが、偽痛風では尿酸は検出されません。
その代わり、ピロリン酸カルシウムという成分が関節の軟骨に沈着し、炎症を引き起こしています。
痛風は尿酸値が高い方やお酒を飲む方、早食い・大食いの方に起こりやすいと言われますが、偽痛風は高齢の方に起こりやすい疾患です。
損傷がある関節や、変形性関節症(加齢が原因で関節の軟骨がすり減る疾患)のある関節に起こりやすいことが、高齢の方で頻度が高い原因と考えられます。
ただピロリン酸カルシウムがなぜ関節に沈着するのか、はっきりした原因は分かっていません。

偽痛風の原因と脳梗塞との関連

一見無関係に思える脳梗塞と偽痛風ですが、偽痛風は脳梗塞などの脳卒中急性期に発症しやすいことがわかっています。
ある研究では、脳卒中で入院した方と脳卒中以外で入院した方を比較すると、脳卒中の方が6倍の発症率(1.8%/ 0.3%)であったことを報告しています。
別の研究では、同じく脳卒中の方とそれ以外の方を比較し、5.5%/ 0.6%と偽痛風の発症率に大きな差があったことを報告しています。
なぜ脳梗塞の後に偽痛風が起こりやすくなるのか、原因は分かっていません。
脳梗塞を発症した後体内に炎症を起こす物質が上昇することが偽痛風の引き金になるのではないか、脳梗塞による麻痺や廃用(体を動かさずに体力が低下すること)が原因で関節の血流が変化し、ピロリン酸カルシウムが蓄積しやすくなるのではないか、などの可能性が考えられています。

脳梗塞治療中の発熱。原因は偽痛風かも?

脳梗塞治療中に偽痛風が発生する場合、注意しなければならないことがあります。
それは、発熱です。
偽痛風は関節の腫れや痛みを特徴とする疾患ですが、強い炎症のため発熱を起こすことがあります。
関節の症状が明らかになる前に発熱を起こすことがあることや、患者さんが自分で関節の症状を伝えることができない場合があることから、発熱の原因がすぐに偽痛風であると気づかれないことがあります。
実際、脳梗塞と偽痛風の関係を調べた研究では、発症してすぐ偽痛風と診断がつかずに、発熱の原因として肺炎などが疑われ抗生物質の治療を開始されていた例が多くありました。
もちろん、偽痛風に対して抗生物質をいくら使用しても治療することはできません。
偽痛風は適切に対処すれば短期間で症状が改善する疾患です。
脳梗塞急性期に発熱を起こした場合、偽痛風を可能性の一つとして想定しておく必要があります。

偽痛風の診断と治療

高齢の方や脳梗塞急性期の方がはっきりしたきっかけなく関節の腫れや痛みを訴えた場合、偽痛風の可能性が考えられます。
採血検査では炎症の値が上昇し、レントゲンでは関節内に石灰化やカルシウムが白く写ることがあります。
腫れのある関節に針を刺して関節液を採取し、偏光顕微鏡を使用した観察でピロリン酸カルシウムの存在が特定されれば、偽痛風であると診断されます。
偽痛風の治療は、まずは炎症を起こしている関節を冷やし、安静にします。
消炎鎮痛薬の飲み薬を使用し、経過を観察します。
腫れが強い時には注射で関節液を取り除き、ステロイドの関節内注射が行われることもあります。
多くの場合1週間程度で症状は軽くなるため、それほど難しい治療という訳ではありません。
偽痛風の発作を繰り返す場合や、関節の変形が強く偽痛風の発作が静まっても歩行が困難な状況が続くようであれば、人工関節置換術などの外科的治療が検討されます。

食事が偽痛風に与える影響

偽痛風自体は食事が直接の原因ではないとされていますが、健康的な食生活は炎症や症状の悪化を防ぐのに役立ちます。
カルシウムやビタミンDを適量摂取し、骨と関節の健康を保つことが大切です。
マグネシウムを多く含む食品(ナッツ類、豆類、緑の葉野菜)やビタミンDを含む食品(魚類、卵黄、きのこ類)は、ピロリン酸カルシウムの蓄積を抑える効果が期待されます。
塩分や糖分を控えめにすることで、全身の炎症リスクを減らす効果も期待できます。
また、水分補給を怠らず、適度な運動を取り入れることで、関節の負担を軽減し、症状の予防につながります。
これらの食品を積極的に取り入れることで、偽痛風の発作を防ぐ手助けとなるでしょう。

偽痛風の原因についてのまとめ

脳梗塞急性期に合併することのある、偽痛風について解説しました。
はっきりしたきっかけがなく突然強い痛みを感じ、時には発熱することもあるため患者さん自身が戸惑いやすい疾患の一つです。
また「痛風」という言葉を聞いて、「お酒は飲まないのに・・なぜ」と考えてしまうことがあります。
もしご家族や周囲の方が発症した場合、高齢の方では誰にでも起こる可能性がある疾患であり、治療はそれほど難しいものではない、と伝えてあげてください。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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