この記事を読んでわかること
脳の白質病変とは何か、MRIでどのように見つかるのかがわかる。
白質病変が将来の脳梗塞や認知機能低下と関係する理由がわかる。
40歳からできる脳の白質病変の予防と生活習慣のポイントがわかる。
脳ドックやMRIで見つかる「脳の白質病変」は40代からみられることもあり、自覚症状が乏しい一方で、将来的な脳梗塞や認知機能低下と関連することが知られています。
本記事では、脳の白質病変とは何か、なぜ将来のリスクにつながるのかをわかりやすく解説し、40歳からできる予防や生活習慣の見直しについて紹介します。
脳の白質病変とは何か

脳には、灰白質と白質という構造があります。
脳の灰白質は神経細胞の「本体」が集まる部分(脳の表面の大脳皮質や深部の神経核など)で情報処理を司ります。
一方、白質は神経細胞の連絡路(軸索)が束になった部分で情報伝達の通路です。
灰白質は神経細胞の細胞体が多く、色が濃く見えます。
対して、白質は有髄神経線維が多く、髄鞘(脂肪分)で白く見えるのが特徴で、脳の機能(情報処理と伝達)を分担しています。
脳の深部の白質で、軽い血流不足(慢性脳虚血)が長期間続くことで生じる変化を脳の白質病変と呼びます。
脳の白質病変は、MRI検査で見つかることが多い変化です。
水分の多い変化を強調して写すMRIの撮影方法(FLAIR画像、T2強調画像)では、脳の白質に「白く写る部分」として確認されます。
この白い部分は、過去に起こった脳梗塞の跡とは異なり、周囲の灰白質には広がらず、特定の血管が詰まった場所と一致しないのが特徴です。
また、急激に大きくなったり、造影剤で強く映ったり、脳が腫れるような所見は通常みられません。
白質病変の中には小さな空洞が見られることがあり、特に脳室の前方に近い白質にできやすい傾向があります。
場合によっては、脳の細い血管が詰まって起こる小さな脳梗塞(ラクナ梗塞)や微小な出血、血管の周囲のすき間が広がる変化を伴うこともあります。
さらに、白質病変は大脳だけでなく、脳幹にも現れることがあり、とくに橋と呼ばれる部位に見られやすいことが知られています。
なお、橋は、呼吸や姿勢、歩行など生命維持や運動の調整に関わる重要な脳幹の一部です。
白質病変が将来の脳梗塞と関連する理由
脳ドックでは高齢の方に脳の白質病変がみられることがあります。
病的変化というより、加齢変化の側面もあります。
また、脳の白質病変が軽度な段階では、手足の麻痺や言葉が出にくくなるといった、はっきりした「局所的な神経症状」が出ないことが多いのが特徴です。
そのため、画像検査で指摘されても、自覚症状がほとんどないケースも少なくありません。
一方で、白質病変が進行すると、脳全体の働きが少しずつ低下することで、さまざまな症状が現れることがあります。
例えば、考える・覚える・判断するなどの脳の働き(高次脳機能)に影響が及び、物忘れや集中力の低下、判断力の低下などがみられることがあります。
また、気分の落ち込みや意欲の低下など、うつ症状が目立つ場合もあります。
身体面では、歩くスピードが遅くなる、足が出にくい、ふらつきやすいといった歩行の変化が起こることがあります。
視界がぼやける、見えにくいと感じるなど、視覚に関する違和感が出ることもあります。
そのほか、「なんとなくふらふらする」「頭が重い」「頭痛が続く」といった、原因がはっきりしない不調として感じられる場合もあります。
これらの症状は一つひとつが軽いため見過ごされやすいものの、白質病変が進んでいるサインとして注意が必要です。
40歳からできる予防と生活習慣の見直し

脳の白質病変は中年期以降に出現し、40代でも約6%の方に認められたという報告もあります。
この年代は、高血圧や生活習慣病が表に出始める時期でもあります。
そのため、40代の方も、日々の生活のなかで脳の白質病変の予防に努めることが大切です。
特に、高血圧や糖尿病は脳の細い血管に負担をかけ、白質病変が進行しやすくなる重要な要因です。
喫煙も血管を傷つけるため、リスクを高める生活習慣の一つとされています。
腎機能の低下や体内の慢性的な炎症反応も、血管や脳の状態に悪影響を及ぼすと考えられています。
さらに、過去に脳卒中を起こしたことがある方では、白質病変がより目立ちやすく、将来的な脳梗塞や認知機能低下のリスクにもつながります。
このように、脳の白質病変は「年齢だけの問題」ではなく、生活習慣病や生活環境の積み重ねと深く関係していることが特徴です。
特に、高血圧の予防のためには、減塩(1日あたり目標6g未満)が基本となります。
そのほかにも、野菜・果物を食べたり、適正体重を維持することも大切です。
さらに、禁煙、適度な運動(ウォーキングなど)、ストレス軽減と十分な睡眠、節酒も忘れないようにしましょう。
特に、塩分の多い麺類の汁を飲まない、調味料は「かける」より「つける」にするなどの工夫をしてみましょう。
まとめ
今回の記事では、40歳からでも注意したい脳の白質病変について解説しました。
脳の白質病変は、初期には自覚症状が乏しいものの、数が増えたり広がったりすると、将来的に脳梗塞や認知機能低下のリスクが高まることが知られています。
そのため、高血圧や糖尿病などの管理を含め、早い段階から脳の健康を意識した生活習慣を整えることが重要です。
一方で、脳や神経の障害に対して「治らないもの」と決めつけず、回復の可能性を引き出そうとする考え方も注目されています。
近年では、神経障害が「治る」を当たり前にする取り組みとして「ニューロテック®」という概念が提唱されています。
これは、脳卒中や脊髄損傷に対し、「狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療」再生医療「リニューロ®」を軸に、骨髄由来間葉系幹細胞や神経再生リハビリ®を組み合わせるアプローチです。
脳のダメージに対する選択肢は、今後さらに広がっていく可能性があります。
将来のリスクに備えるためにも、医療機関と連携しながら、一人ひとりに合った予防や支援を継続していくことが大切です。
よくあるご質問
- 脳の白質病変があると言われましたが、すぐに脳梗塞になりますか?
- 脳の白質病変が見つかったからといって、すぐに脳梗塞を発症するわけではありません。
ただし所見が増える場合はリスクが上がります。
血圧・血糖・脂質の確認と禁煙を優先し、主治医とMRIの経過観察や追加検査の必要性を相談してください。
- 白質病変は治療で消えるのでしょうか?
- 現在の医療では、脳の白質病変そのものを完全に消す治療は確立されていません。
そのため、進行を抑えることが治療の基本となります。
高血圧や糖尿病の管理、禁煙、運動習慣の見直しなどが重要です。
<参照元>
(1):2.脳白質異常と精神疾患|日本生物学的精神医学会誌.2017;28(2):64-67:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsbpjjpp/28/2/28_64/_pdf/-char/ja
(2):大脳白質病変の成因と臨床|脳卒中.2016;38(2):69-76:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/38/2/38_10354/_pdf/-char/ja
(3):当院脳ドック受診者における 大脳白質病変の危険因子および経年変化の検討|人間ドック.2015;30:705-713. p710:https://www.jstage.jst.go.jp/article/ningendock/30/4/30_705/_pdf
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