この記事を読んでわかること
・大脳皮質基底核変性症の症状
・大脳皮質基底核変性症の根本的な治療はあるのか
・大脳皮質基底核変性症の治療についての研究にはどのようなものがあるのか
大脳皮質基底核変性症は、大脳皮質(脳の表面)と大脳基底核(脳の深部にある部位)の両方の神経細胞が変性していき、パーキンソン症状と大脳皮質症状が左右非対称的に出現する病気です。
この記事では、大脳皮質基底核変性症に関する知識や新たな試みにも触れながら解説します。
現行の治療法の概要
まず、大脳皮質基底核変性症とはどのような病気なのかを解説し、現時点での治療法についても述べていきます。
大脳皮質基底核変性症とは
大脳皮質基底核変性症は、大脳皮質と脳の神経核、特に黒質(こくしつ)と淡蒼球(たんそうきゅう)の神経細胞が変性し、神経細胞などに異常なタンパク質(異常リン酸化タウ)が蓄積する病気です。
進行すると、前頭葉や頭頂葉に非対称性の強い萎縮がみられます。
身体の左右どちらかに症状が出ることが特徴です。
典型的な症状は、パーキンソン症状と大脳皮質症状です。
パーキンソン症状は、パーキンソン病で出るような症状です。
指先の細かな運動が難しくなる巧緻動作障害(こうちどうさしょうがい)、安静時に手指が震える安静時振戦(あんせいじしんせん)、筋肉が固くなる固縮(こしゅく)、そして歩く際にうまく足が出ずに転びやすくなる歩行障害(ほこうしょうがい)があります。
大脳皮質症状には、筋肉に持続的に力が入ってしまうジストニアや、腕を動かす際にピクつきがでるミオクローヌス、自分の意思と無関係に手が動く「他人の手兆候」、半側空間無視、失行(動きや感覚は問題ないが目的に合った行動が行えなくなる)があります。
発症年齢は40才代以降で、ピークは60才代です。
男女差はほぼなく、難病に指定されています。
大脳皮質基底核変性症の治療法は
現時点では、大脳皮質基底核変性症の病態進行の遅延、つまり病気の進行を止めることが可能な治療法はありません。
現代の医学の治療法の限界ともいえるかもしれません。
大脳皮質基底核変性症はゆっくりと進行し、発病してから寝たきりになるまでの期間は5から10年ほどとされています。
大脳皮質基底核変性症の治療としては、対症療法、つまり症状を改善するという薬物療法になります。
パーキンソン症状に対して、パーキンソン病治療薬であるレボドパ、ドパミンアゴニスト、アマンタジンといったものがあります。
ミオクローヌスに対しては、クロナゼパムが有効とされています。
治療の効果と期待できる改善
大脳皮質基底核変性症に対してはどれくらいの治療効果が期待できるのでしょうか。
パーキンソン症状に対してレボドパを用いると、一部の症例には効果があるとされています。
しかし、病気が進行すると効果が失われてしまいます。
一方、ジストニアに対しては、筋弛緩薬(きんしかんやく)を用いますが、有効性は1割以下です。
ミオクローヌスに対するクロナゼパムは、眠気やふらつきといった副作用がでるために、長期間使うことは難しい場合が多いようです。
運動療法も行われます。
関節の拘縮(こうしゅく)を予防する関節可動域(ROM)訓練や、日常生活動作訓練、歩行や移動の訓練、言語訓練、嚥下訓練、高次機能訓練などがメニューとなります。
飲み込む力が落ちてしまうと、嚥下性肺炎(えんげせいはいえん)が起こりやすいので、胃ろうの造設も考慮します。
新しい治療研究とその進行状況
現時点では、大脳皮質基底核変性症の根本的な治療法はありません。
しかしながら様々な研究が行われ、この病気を治そうという努力がなされています。
大脳皮質基底核変性症で形成されているタウタンパクを人工的に作成することで、大脳皮質基底核変性症の病態を再現するという研究があります。
この研究では、このタウタンパクの構造を変化させて病気の抑制効果がある治療法を開発しようとする試みがなされています。
現時点では、研究は途中の段階のようですが、こうした新規治療法が確立され、治療成功の事例が報告されることが望まれます。
まとめ
大脳皮質基底核変性症は、ゆっくりとしかし確実に脳の神経細胞が障害されていく病気で、現時点では確実に治すことが難しい病気です。
神経そのものを治療することは難しいとされてきました。
当院ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」という、脳卒中や脊髄損傷、神経障害に対する幹細胞治療の基礎特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
そして、幹細胞点滴を投与しながら、リハビリを行う「再生医療×同時リハビリ™」という独自の治療も行っています。
大脳皮質基底核変性症に関する再生医療についてご興味がある方は、ぜひ一度当院までご相談いただければと思います。
よくあるご質問
大脳皮質基底核変性症になるとどうなる?
大脳皮質基底核変性症は大脳基底核と大脳皮質の神経細胞が脱落し、タウタンパクという異常なタンパク質が蓄積する変性疾患です。
大脳基底核の症状であるパーキンソン病のような運動症状(筋肉の硬さ、運動の遅さ、歩行障害など)と大脳皮質の症状(手が思うように使えない、動作がぎこちないなど)の両方の症状が現れます。
大脳皮質基底核変性症の余命は?
大脳皮質基底核変性症になると、徐々に進行していきます。
多くの場合、発症後5〜10年で寝たきり状態となり、その予後は不良とされています。
飲み込みの力が衰え、嚥下性肺炎などが死因となる場合が多いので、全身管理には注意を払う必要があります。
<参照元>
大脳皮質基底核変性症(指定難病7):https://www.nanbyou.or.jp/entry/142
大脳皮質基底核変性症において、神経細胞内のリン酸化TDP-43異常凝集が神経変性に関与している可能性を示しました | 研究成果・実績 | 新潟大学脳研究所(脳研):https://www.bri.niigata-u.ac.jp/research/result/001632.html
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