くも膜下出血で生じる視覚的後遺症とその治療法 | 脳卒中・脊髄損傷|麻痺痺れなど神経再生医療×同時リハビリ™で改善

くも膜下出血で生じる視覚的後遺症とその治療法

           

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この記事を読んでわかること

くも膜下出血について
Terson症候群の特徴
Terson症候群の治療


くも膜下出血は、さまざまな後遺症をきたします。
その多くは神経機能に影響を与えるものですが、そのなかに目に関する後遺症もあります。
Terson(テルソン)症候群もそのひとつです。
Terson症候群は、くも膜下出血によって上昇した頭蓋内圧の影響を受け、眼内の硝子体を中心に出血をきたすもので、視力障害を起こしします。
自然に*軽快することもありますが、手術が必要となることがあります。

くも膜下出血

くも膜下出血は、脳と脳を覆う薄い組織の間の領域に発生する出血のことです。
この領域は、くも膜下腔と呼ばれます。
くも膜下出血は緊急事態であり、早急に医師の診察が必要です。

くも膜下出血の症状

くも膜下出血の主な症状は、突然始まる激しい頭痛です。
多くの人が「今までで最悪の頭痛」と表現し、他のタイプの頭痛とは異なるとよく言われます。
その他に意識レベルの低下、明るいところで生じる目の不快感(羞明)、気分や性格の変化、特に首の痛みと肩の痛み、強い吐き気や嘔吐、体の一部のしびれ、けいれん、首のこわばり、複視や一時的な視力低下などの視力障害などがみられることがあります。

くも膜下出血でみられる目の後遺症・テルソン症候群

テルソン症候群
くも膜下出血後に発生する視覚的後遺症は、日常生活に大きな影響を与えるため、早期のリハビリや専門的な治療が推奨されます。
複視や視野欠損に対するリハビリテーションでは、視覚機能を回復するための訓練や日常的なサポートが重要です。
また、視神経の損傷によっても影響が現れるため、適切な検査を通じた管理が不可欠です。
くも膜下出血後にみられる後遺症のうち、特に目に関する後遺症であるTerson(テルソン)症候群についてご説明します。
Terson症候群はくも膜下出血に伴う眼内出血のことで、特に硝子体と呼ばれる部位に出血することが知られています。
1900年にフランスの眼科医テルソン(Terson)が初めて報告しています。

硝子体出血とは?

硝子体出血とは、眼球の中心部を満たしているゲル状の液体の中に出血した状態です。
通常このゲルは透明なので、光はゲルを通過して網膜に届きます。
硝子体の中に血液があると、網膜に光が届かなくなります。
これが視力障害の原因となります。
出血がひどい場合は、視力低下を引き起こす可能性があります。

Terson症候群が生じるメカニズム

Terson症候群が生じるメカニズムはいくつか考えられています。
くも膜下出血によって生じた圧力は、視神経鞘と呼ばれる視神経を覆う膜を通じて、直接眼球内に伝達される可能性があります。
くも膜下出血後に頭蓋内圧の急激な上昇により、視神経鞘への髄液の急速な浸出が起こります。
視神経鞘内の圧力の上昇は、網膜中心静脈を機械的に圧迫し、静脈の圧を上昇させ、そして網膜毛細血管の破裂をもたらすと考えられています。
実際Terson症候群は、くも膜下出血だけではなく、頭蓋内圧の急上昇を持続させる複数の疾患とも関連することが報告されています。
ちなみにくも膜下出血は動脈瘤の破裂で生じますが、動脈瘤の部位とTerson症候群の発生には、特に関係を証明するデータはありません。

Terson症候群の症状

Terson症候群の症状は、まず目のかすみ、浮遊物が見えるなどがあります。
さらに悪化すると、視力が悪化し、生活に支障をきたすこともあります。
なお、これらの症状は朝起きてから午前中に悪化することがあります。
このよう1日のなかで症状が変化する理由は、横になると血液が目の奥に溜まってしまうからです。
眼内出血はくも膜下出血後1時間程度で発症することが多いと言われています。
ただTerson症候群は発症が遅れることがあり、くも膜下出血後47日目まで眼内出血が発生したという報告もあります。

Terson症候群と神経学的転帰との関係

意識レベルやくも膜下出血による障害の程度が強いと、Terson症候群の発症率が高くなると言われています。
くも膜下出血とTerson症候群を併発した患者の神経学的転帰と死亡率は、一般的にくも膜下出血単独の場合よりも悪くなります。

Terson症候群の診断

眼底検査は、Terson症候群を診断するための必須の検査です。
眼底観察ができない場合、光干渉断層計と呼ばれる特殊な眼科用の検査機器を用いることでも硝子体出血を確認することができます。
なお眼科の検査をする場合、目のなかをよく観察するため瞳孔を拡大させる薬を点眼することが一般的です。
しかし、瞳孔径は神経学的なモニタリングをするためにも重要な確認項目になっています。
したがって、くも膜下出血後は神経学的なモニタリングのために瞳孔を広げることができず、診断が遅れることがあります。
また、くも膜下出血後に意識レベルが低下したり、認知機能が障害されることにより、視覚的な訴えを言語化できなかったり視覚検査に応じられない患者もいます。
なお、Terson症候群の患者における眼内硝子体出血を特定するために眼窩CTの使用が有用な場合があります。

Terson症候群の合併症

Terson症候群の後、複数の合併症が報告されています。
網膜上膜は、Terson症候群の最も一般的な合併症とされています。
網膜上膜は、黄斑と呼ばれる網膜の中心部分に薄い膜が生じる状態で、硝子体内の血液が膜の生成に影響を与えていると考えてられています。
網膜上膜ができると視力の低下、色の見え方が形の見え方が変化します。
そのほか網膜剥離や緑内障が発生することもあります。

Terson症候群の治療

Terson症候群に伴う眼内出血は、しばしば自然に治癒していきます。
また視力低下は通常可逆的ですが、永久的な視力障害が起こることもあります。
自然に*軽快しない場合は手術をして血液を除去します。
Terson症候群における硝子体手術の最適なタイミングについては、コンセンサスが得られていませんが、最大3ヶ月間は経過を観察することができるとされています。

くも膜下出血で生じる視覚的後遺症についてのまとめ

くも膜下出血の後遺症のうち、特に目に見られる後遺症であるTerson症候群についてご説明しました。
視覚が障害されるということは、わたしたちの日常生活が直接的に影響を受けることにもつながります。
そのためには異常があれば、できるだけ早期に専門医の診療を受けることができるようにしましょう。

*軽快とは治療行為による改善があり、通院によって継続的な治療を必要とするものと定義されています。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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