この記事を読んでわかること
・パーキンソン病とは
・パーキンソン病の症状
パーキンソン病は65歳以上では100人に1人が罹患する難病です。
最初はなぜか手足が震えて、進行すれば表情がなくなりベッド上で寝たきりになり介護が必要になっていく病気です。
しかしながら早期発見、早期介入すれば症状の進行を遅らせることも可能です。
そこで今回は、パーキンソン病の病態や症状をわかりやすく解説していきます。
パーキンソン病とは
一度ぐらいはパーキンソン病という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
名前が独特な上にテレビCMなどでよく流れていますので目につきますが、実際にどんな病気か説明できる人は多くないと思います。
パーキンソン病とは一言で言えば、「上手に動けなくなる」病気です。
人間は意識して動く随意運動と、意識せずに動く不随意運動の2つの動作がバランスを取り合って生活しています。
例えば「腕を曲げる」という動作をするときに上腕二頭筋を収縮させることで腕は屈曲します。
しかしこの動きをもっとスムーズに行うには、腕を伸ばす筋肉である上腕三頭筋を完全に弛緩させる必要性があります。
この場合、上腕二頭筋の収縮運動は随意運動、上腕三頭筋の弛緩は不随意運動なのです。
仮にこのバランスが崩れると、腕を曲げる筋肉と伸ばす筋肉が同時に収縮してしまい上手に腕を曲げられなくなります。
随意運動をするときには大脳皮質と言われる場所から指令が出ます。
大脳皮質から出た指令は神経細胞が連結してできる道路を通って、大脳皮質→中脳→橋→延髄→脊髄と徐々に下行していき、脊髄から上肢や下肢の神経に伝わって最終的に各筋肉に指令が届き、筋肉が収縮することで動作が起こります。
意識の外で行う不随意運動は、中脳の黒質と言われる部分から分泌されるドーパミンが作用して、大脳皮質に指令を送ることで指令は神経を通って各筋肉に刺激を送ります。
指令の通り道である神経は長い一本道ではなく、小さい神経細胞が連結して長い道を作っています。この神経細胞同士の連結部分では指令を伝達するのにドーパミンやアセチルコリンというホルモンを使っています。高速道路の料金所におけるECTみたいなものです。ECTがあるから料金所でスムーズに次の道路に進めるわけで、ドーパミンがあるから神経を通る指令はスムーズに次の神経に情報を伝達できるのです。
このドーパミンというホルモンは中脳の黒質という部分で作られています。この黒質にα-シヌクレインというタンパク質が異常蓄積することで、中脳黒質の神経細胞が少しずつ減少してドーパミンが産生されず、その機能が失われていく病気をパーキンソン病と言います。
ドーパミンが産生されなければ、主に不随意運動が障害され結果的に上手く動けなくなってしまうのです。
1817年にイギリスのJames Parkinsonが最初に患者を報告したことが名称の由来で、現在に至るまで病気の解明や治療法が検討されてきましたが、現在も厚生労働省の定める難病に指定されています。
パーキンソン病の症状
さて、パーキンソン病=黒質の変性に伴うドーパミンの枯渇ということは理解できましたね。
具体的にどんな症状があるのか解説していきます。
安静時振戦
パーキンソン病患者の約6割に見られる最も多い初期症状です。
ドーパミンの枯渇に伴い筋肉に対して適切な指令を送れなくなるため、筋肉が収縮と弛緩を小刻みに繰り返すことで、何もしていないときに勝手に手足が震えてしまう症状です。
初期には片側の手足に症状が出ますが、2〜3年後には逆側の手足にも症状が出現します。
筋固縮
不随意運動が上手くできなくなると、意識せずとも筋肉が緊張している状態が続きます。
その結果筋肉が硬くなってしまい動作のスムーズ性が失われます。
パーキンソン病の場合、手足を動かそうにも歯車のようにギシギシと抵抗がある固縮が起きます。
無動
上手く体を動かせなくなり筋肉も固縮していくため、全ての動き出しが遅くなり徐々に運動自体も緩慢になっていきます。
進行していくと顔面の筋肉も動かなくなり、まばたきにも時間がかかるようになり、一点を見つめて動かない仮面様顔貌と言われる症状になります。
姿勢反射障害
随意運動と不随意運動が調和を取れないために、体のバランスを上手く取れなくなり転倒しやすくなります。
例えば背中を後ろから押された場合は勝手に足が前に出てバランスを取りますが、足が上手く出せないために転倒してしまうのです。
これら4つの症状は4大症状と呼ばれ、パーキンソン病でよく見られる症状になります。
また、パーキンソン病患者では黒質の変性(α-シヌクレインの異常蓄積)とともに、自律神経にも同様の変性を来す可能性が高く、進行とともに自律神経障害を来すことがあります。
自律神経障害
自律神経とは交感神経と副交感神経の総称で、その名の通り自律的に活性化したり不活化して人間の心臓や内臓、睡眠など様々な機能を支配しています。
例えば緊張すると交感神経が活性化して、心臓の鼓動を早め血管を収縮させ血圧を上昇させます。逆にリラックスすると副交感神経が活性化して、心臓の鼓動を抑え、腸管や膀胱の運動を刺激して排尿や排便を促します。
つまり、パーキンソン病が進行すると自律神経が障害され、排尿や排便に支障を来たし、起立性低血圧や睡眠障害など様々な症状が出現する可能性があるのです。
まとめ
神経細胞は一度損傷すると機能の回復は困難です。
その結果パーキンソン病が進行してしまえば日常生活に大きな支障をきたします。
しかし、近年では再生医療の発達が目覚ましいです。
骨髄から採取した幹細胞を点滴から投与すれば、幹細胞が神経に定着して死んだ神経細胞の代わりとなり再び機能が甦る可能性があるのです。
再生医療を併用すれば、リハビリによる機能回復にさらなる期待が持てます。
現在、多くの治療結果を積み重ねており、その成果が期待されています。
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