この記事を読んでわかること
・脊髄出血とは
・脊髄出血の症状
・脊髄出血の治療と後遺症
脊髄は脳からの指令を体へ伝える神経の束ですが、障害が起こると運動の麻痺や感覚障害などの症状が発生します。
脊髄の障害が起こる原因は外傷や炎症、骨の変形などの頻度が高いのですが、珍しいものに血管障害があります。
血管障害と言えば脳梗塞や脳出血が思い浮かびますが、実は脊髄でも同様に血管障害が起こることがありそれぞれ脊髄梗塞、脊髄出血と呼びます。
この記事では脊髄出血について解説します。
脊髄出血とは
脊髄は脳と同じように、3層の膜によって守られています。
外側から硬膜、くも膜、軟膜と呼ばれています。
脊髄内や脊髄周囲から出血するのが脊髄出血であり、出血する場所によって分類されます。
硬膜の外で出血するのが硬膜外、硬膜とくも膜の間が硬膜下、くも膜と軟膜の間がくも膜下、脊髄内部の出血が髄内出血とされています。
交通事故や転落など大きな外力が原因となることもあれば、血管奇形や腫瘍などが原因となることもあります。
頻度として比較的多いのは「脊髄動静脈奇形」や「脊髄海綿状血管腫」と呼ばれる病気です。
ただし全体的な頻度が高いわけではないため、この疾患に精通した専門医は必ずしも多くありません。
診断や治療が難しい疾患の一つであると言えます。
脊髄出血の症状
脊髄出血が起きると、血液により脊髄が圧迫されるため運動麻痺や感覚障害など神経の症状が発生します。
出血は急に起こるため、症状が突発的に発生するという特徴があります。
硬膜下・硬膜外出血では血液の塊(血腫)により強い脊髄圧迫が起こります。
胸椎部で起こることが多いため、急で激烈な背部痛、下肢麻痺(急に両足が動かなくなる)で発症します。
頚椎部で起こった場合には上肢にも症状が及ぶことがあります。
ただし頚椎部の硬膜外出血では麻痺の発生が片側になることがあり、その場合脳梗塞と類似した症状を起こします。
また、海綿状血管腫からの出血である場合は症状が比較的軽いことがあるなど、症状は個人によって異なります。
出血が続いている場合症状は徐々に進行し、麻痺の程度が強くなります。
麻痺が進行する前に対処することが重要となります。
脊髄出血の治療と後遺症
脊髄出血は緊急治療の適応となる可能性があるため、専門医へ直ちに搬送される疾患です。
出血の場所や程度により対応が検討されますが、硬膜下・硬膜外出血では少なくとも24時間以内に手術をして血腫を取り除くことができれば、回復を望むことができます。
背髄動静脈奇形の場合は手術と血管内治療があります。
一刻も早く神経の圧迫を取り除き出血を抑える治療が必要となりますが、髄内出血の場合は治療による脊髄損傷が危惧されるため、保存的治療が行われるケースがあります。
血腫による圧迫が強い場合や長時間に及んでしまった場合、出血の量が多い場合などでは神経のダメージが強くなり後遺症が残ります。
頚椎部で発生すれば手足の麻痺が残る可能性があり、胸椎部での出血では下半身の麻痺が残ります。
治療後早期に一定程度の自然回復が起きる可能性もありますが、完全に足が動かなくなるような麻痺が発生した場合、すでに手遅れというケースがあります。
脊髄出血の後遺症に対する再生医療の可能性
脊髄出血による後遺症は一度確定してしまうと回復は難しく、生涯残る後遺症となってしまいます。
神経の回復能力には限界があるからです。
脊髄出血の治療は神経圧迫の原因を取り除く治療であり、神経を直接修復する治療ではありません。
傷ついた神経を治療する方法は現時点でほぼ無いのです。
近年になり治療困難な神経障害を改善させる方法として、再生医療が発展してきています。
再生医療では「幹細胞」という神経の元になる細胞を使用します。
幹細胞は体内に移植されると神経に対する保護因子や修復因子を分泌するとともに、自身が神経に成長して機能するようになる、つまり神経を再生する作用が期待されています。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
脊髄出血に対しては、再生医療と最先端のリハビリテーションを組み合わせることで最大限の機能回復を達成できると考えています。
脊髄出血の症状にお悩みの患者さんやご家族の方は、ぜひご相談ください。
まとめ
脊髄出血について解説しました。
脳出血や脳梗塞と比較すると頻度の少ない疾患ですが、突然に発症し後遺症を残すという点でやっかいな病気であるということが共通しています。
早期対応が重要になるとともに、新たな後遺症対策として再生医療の効果が期待されています。
よくあるご質問
脊髄出血の原因は?
脊髄出血の主な原因は「脊髄動静脈奇形」や「脊髄海綿状血管腫」と呼ばれる病気です。
どちらも、脊髄を栄養する血管に先天的もしくは後天的な異常奇形を認め、脆い部分が発生するためにそこから出血を引き起こします。
脊髄出血の症状は?
脊髄出血の主な症状は、麻痺などの運動障害、しびれなどの感覚障害、疼痛が挙げられ、これらの症状が突然出現します。
出血の部位や範囲に応じて症状が出現する程度や部位も異なり、無症状の時もあれば四肢が全く動かなくなる可能性もあります。
<参照元>
・「脊髄血管障害」日本医事新報4986, 2019
・「脊髄血管障害」日本医事新報5092, 2021
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