この記事を読んでわかること
・くも膜下出血とはどのようなものなのか
・くも膜下出血と突然死
・くも膜下出血で突然死を起こす危険因子
突然激しい頭痛で発症するくも膜下出血は、突然死の原因ともなります。
その発症を予防することが、何よりも突然死の予防になります。
特に喫煙者は禁煙すること、そして血圧を適切な値に管理することが、くも膜下出血を発症した後、病院へ到着する前に死亡してしまう突然死の予防には重要です。
改めてくも膜下出血とはどのようなものなのか?
くも膜下出血は、くも膜下腔と呼ばれる脳の周囲を覆う膜の間にある空間に出血する、脳卒中の一種です。
突然発症する激しい頭痛を特徴とし、時に激しい頭痛のために吐き気や嘔吐がみられ、意識消失を伴うこともあります。
最悪、死に至ることもあります。
出血は通常、動脈瘤という脳内血管の異常な膨らみの破裂から起こります。
高血圧や動脈硬化が危険因子ですが、外傷や動静脈奇形が原因となって出血することもあります。
くも膜下出血と突然死
くも膜下出血を起こすと、急激に脳内に動脈血が流れ出るため、一気に生死に関わる状態になることがあります。
そして、くも膜下出血で亡くなる方の中には、病院にたどり着くことができない、つまり突然亡くなってしまう突然死の方がおられます。
その数や危険因子を知ることはとても重要ですが、くも膜下出血に関する研究の多くは病院に到着した人を対象としています。
そのため、なかなかくも膜下出血によって突然亡くなった方の詳細を知ることが制限されていました。
そこで、ここではくも膜下出血と突然死の関係について、いくつかの論文を元にご説明します。
くも膜下出血による突然死が発生する頻度
くも膜下出血による突然死の臨床的特徴を明らかにするために、ミネソタ州ロチェスターという町で、医療機関に到着することができなかった動脈瘤性くも膜下出血患者の特徴を検証しました。
この研究では、地域住民の健康状態を把握する目的で実施されている疫学研究のデータを用い、1960年から1989年の間に動脈瘤性くも膜下出血と診断された患者をすべて同定し、追跡しています。
ほぼ30年間の調査期間中、くも膜下出血の女性は80人、男性は33人おり、全体の平均年齢は55歳でした。
この113人のくも膜下出血患者のうち、13人(12%)が医療機関にたどり着くことなく突然亡くなっていました。
そして突然死した患者の割合は、研究期間中ほぼ一定の値で推移していました。
これにより、くも膜下出血を起こした方の1割ほどは病院に到着する前に亡くなってしまう、突然死をきたす可能性があると言えるでしょう。
くも膜下出血で突然死を起こす危険因子
このように、一定の割合でくも膜下出血で亡くなる人の中には、生きて病院にたどり着けない「突然死」の人がいます。
その危険因子についても、くも膜下出血に関する研究の多くは病院に到着した人を対象としていたため、解明することが困難でした。
この課題を解決するためにフィンランドで行われた研究結果が、2017年にStrokeという医学雑誌に報告されています。
フィンランドでは、突然死したすべての人に対して、死亡原因を解明するために解剖することが義務付けられています。
そのため、病院に到着する前に死亡した人を特定し、そのデータを含めた研究を実施することができました。
このFINRISK研究では、65,521人を追跡調査し、解剖や一般的な方法でくも膜下出血の診断が確認された事例を検証しています。
この調査では、445人が入院後にくも膜下出血と診断されていますが、98人もの方が病院外で突然死し、解剖によってくも膜下出血と診断されていました。
くも膜下出血により突然死する危険因子を検証したところ、1日当たりの喫煙本数が5本増加すると、突然死の危険性が高くなり、その危険性はくも膜下出血により入院する場合よりも有意に高くなっていました。
また収縮期血圧が高いことも、くも膜下出血による突然死の危険性を高めていました。
これも喫煙と同様、くも膜下出血により入院する場合よりも危険性は高くなっていました。
さらに配偶者やパートナーがいない場合もくも膜下出血による突然死のリスクを高くしていましたが、入院リスクを高めてはいませんでした。
なお50歳未満で血圧が正常である非喫煙者では、くも膜下出血による突然死は発生していませんでした。
まとめ
くも膜下出血と突然死の関係についてご説明しました。
誰しも親しい人を突然失うことは、耐えがたい苦痛ではないかと思います。
それを防ぐためには、やはりくも膜下出血の危険因子である喫煙や高血圧を管理することです。
是非かかりつけ医ともご相談してください。
気になる記事:くも膜下出血の治療法について
外部サイトの関連記事:くも膜下出血の再出血で予後が心配な時の日常生活について
コメント