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脳梗塞後の胃ろうと寿命の関係

           

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この記事を読んでわかること

脳梗塞と栄養摂取の関係
口以外からの栄養摂取法
脳梗塞後の胃ろうと寿命の関係


脳梗塞の後遺症の1つに嚥下障害が挙げられ、食べ物の飲み込みが上手くできなくなるため誤嚥性肺炎のリスクが増加し、最悪の場合死に至ります。
誤嚥性肺炎予防のため、カテーテルを経由して体外から胃に直接栄養を流し込む「胃ろう」を造設する方もいます。
そこでこの記事では、脳梗塞後の胃ろうと寿命の関係について解説していきます。

脳梗塞と栄養摂取

脳梗塞と栄養摂取
咽頭部には喉頭蓋と呼ばれる蓋が存在し、口から摂取した食事が気管に入らないように普段は蓋をしており、空気を吸い込む時だけ蓋が開く仕組みです。
しかし、脳梗塞や脳出血などで脳の神経細胞が損傷すると、部位によってさまざまな機能が障害され、特に麻痺やしびれなどの症状が出現します。
喉頭部や咽頭部の筋肉が麻痺すると喉頭蓋を含む機能が障害され、口からの食事や水分の飲み込みが上手くできなくなり、これを嚥下障害と言います。
嚥下障害によって食事や水分が気管に入り込むと、通常であれば強くむせ込み、圧をかけて気管から異物を排出しようと働きますが、脳梗塞後は全身の筋力低下を認めやすく、うまく排出することもできません。
その結果、口腔内の病原菌が付着した食事や水分が気管、さらに奥深く肺まで到達し、誤嚥性肺炎に至ります。
厚生労働省の報告によれば、嚥下障害をきたす原因疾患として脳梗塞が最も多く39.1%、次いで脳出血が12.2%、くも膜下出血が5.1%であり、原因疾患の上位3疾患を脳血管障害が占めていることがわかります。
脳梗塞後の死因として誤嚥性肺炎は最も多く、嚥下障害を認める患者に対して口以外からの栄養摂取法がこれまで模索されてきました。
具体的には3つの方法があります。

  • 経鼻胃管栄養
  • 経静脈栄養
  • 胃ろう

経鼻胃管栄養

経鼻胃管栄養とは、鼻から胃へ胃管を留置し、胃管経由で栄養を投与する方法です。
鼻や咽頭部の違和感が問題となります。

経静脈栄養

経静脈栄養とは、点滴から栄養を血管に直接投与する方法です。
しかし、十分な栄養を投与するには手や足の細い血管では血管炎のリスクがあり、頸部や大腿部の太い血管に点滴を留置する必要があります。
また、感染のリスクも高く、長期留置には不向きというデメリットもあります。

胃ろう

胃ろうは、体外から胃に直接穴を開けて、そこからチューブを通して栄養を直接胃に投与する方法です。
1980年にGaudererとPonskyによって初めて内視鏡を用いて造設され、その安全性や簡便性から日本でも瞬く間に普及しました。
ほかの栄養法よりも在宅で管理しやすく、利用者の生活の質を向上させやすいと言われています。

脳梗塞後の胃ろうと寿命の関係

脳梗塞によって嚥下機能が低下した場合、胃ろうを造設することで多くのメリットを得られます。
経鼻胃管栄養では咽頭部の違和感が強く、口からの食事摂取も困難ですが、胃ろうの場合は咽頭部の違和感が少なく、口からの食事摂取も併用できます。
経静脈栄養と異なり感染リスクも低く長期間使用できるため、体力が回復してリハビリが進めば口からの食事摂取を再開できる可能性もあります。
しかし、胃ろう造設はメリットだけではありません。
脳梗塞後に嚥下機能が低下した方たちを対象とした研究によると、胃ろうによる栄養摂取は、死亡率の有意な減少をもたらしませんでした。
また脳梗塞を発症して6ヵ月後に、予後不良となる患者数を有意に増加させました。
1つの原因としては、胃ろう造設に伴う更なる嚥下機能の低下が挙げられます。
胃ろう造設によって口からの食事摂取の頻度が低下すると、食べ物を誤嚥するリスクは確かに低下しますが、咽頭部や喉頭部の筋肉を使用しなくなるため、筋肉が萎縮していきます。
これを廃用と言い、廃用が進行すると口腔内で分泌された唾液ですら誤嚥性肺炎を起こすリスクが増加します。
また、胃から投与する栄養剤は液体であり、胃から食道を介して口腔内に逆流し、誤嚥を引き起こす可能性もあります。
以上のことからも、「胃ろう=誤嚥しない」ということではなく、胃ろうで栄養を摂取しながら、嚥下訓練や口腔内ケアなどを積極的に行う必要があります。

まとめ

今回の記事では、脳梗塞後の胃ろうと寿命の関係について解説しました。
脳梗塞を含む脳血管障害は嚥下障害を引き起こす最大の原因であり、嚥下障害によって誤嚥性肺炎を招く可能性があります。
誤嚥性肺炎は最悪死に至る可能性もある病気であり、予防のためにも胃ろうなどの経口摂取以外の栄養摂取法が選択されます。
しかし、胃ろうを造設しても誤嚥性肺炎を100%予防できる訳ではなく、口腔内が不潔であったり、咽頭部の筋肉の廃用が進めば唾液などを誤嚥する可能性があり注意が必要です。
現状、嚥下障害に対しては嚥下訓練などのリハビリテーションが一般的ですが、近年では機能回復の治療法として再生医療の分野が非常に発達しています。
再生医療によって投与される幹細胞が、嚥下に関わる神経の損傷を回復すれば、嚥下障害が改善する可能性もあり、現在のその知見が待たれるところです。

Q&A

胃ろうの平均余命は?
胃ろう造設後の余命は平均で約3年と言われています。
胃ろうからの栄養投与で栄養状態が改善し、動けるようになったり、口からの食事が進む方もいます。
一方で誤嚥性肺炎のリスクがなくなる訳ではないため、注意が必要です。
関連記事▶︎ 脳梗塞後の胃ろうについて〜寿命との関係

胃ろうになる原因とは?
胃ろう造設の主な目的は繰り返す誤嚥性肺炎の予防、消化管の減圧、栄養投与ルートの確保などです。
これらの原因として、食道狭窄などの通過障害がある場合や脳梗塞などの脳血管障害によって嚥下障害を認める場合などが挙げられます。

<参照元>
・ Smajlovic D, et al. Five-year Survival after first-ever stroke. Bosn J Basic Med Sci. 2006; 6(3): 17-22
・みんなの介護:https://www.minnanokaigo.com/guide/disease/stomach-wax/
・厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000135467.pdf



貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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