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脳梗塞とお風呂の関係について

           

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この記事を読んでわかること

お風呂が身体に与える影響
お風呂と脳梗塞の関係
サウナと脳梗塞の関係


お風呂に入ると汗をかいて脱水につながり、その結果血栓ができやすくなったり、また血圧の急激な変化を起こしたりするため脳梗塞を起こしやすくなると言われています。
しかし、最近の研究では入浴が脳梗塞の発症に与える影響はさほど大きくはないばかりか、定期的な入浴やサウナ浴は脳梗塞を発症するリスクを下げている可能性が指摘されています。

お風呂が身体に与える影響

世界的には、シャワーによる入浴が最も一般的ですが、日本では温水に全身を浸す入浴スタイルが一般的です。
全身がお湯に浸かるスタイルの入浴をすると、温熱作用の影響で血管拡張と血流増加が起こり、手足の先まで多くの酸素と栄養が供給されます。
その結果、入浴によって健康状態が改善することが、知られています。
日本では、温泉に浸かることで病気を癒す、湯治という考え方もあります。
温水に浸かることが、身体や精神面にどのような影響を与えているかについて評価した研究があります。
この研究では、38人の被験者に、温水(40℃)の風呂に毎日10分間浸かる入浴を2週間続けて行った後、シャワー入浴を毎日2週間入ったグループ(19人)、またはその逆の順番で行ったグループ(19人)で、それぞれの入浴スタイルの健康に対する効果を比較しています。
その結果、疲労、ストレス、痛み、幸福感については風呂に浸かる入浴を行ったときに有意に良好な傾向がみられました。
これは風呂に浸かることによる温熱作用によって、血流の増加や代謝老廃物の排出が促進され、身体的リフレッシュがもたらされたと考えられています。

(出典:Goto Y, et al. Physical and metal effects of bathing: a randomized intervention study. Evid Based Complement Alternat Med. 2018; 2018: 9521086)

お風呂と脳梗塞の関係

サウナ
このように入浴は心身ともに健康であるために、有効な方法であることが報告されている一方で、入浴やサウナを利用している際に脳梗塞を発症したり、風呂に溺れて亡くなられたりする高齢者がおられることが、ニュースなどで報道されています。
実際はどのように関係しているのでしょうか?

お風呂が脳梗塞の原因となる可能性

脳梗塞は、もともと動脈硬化を持っている人に起こりやすいことが知られています。
入浴すると汗をかきますが、汗をかくと体内の水分量、さらに血管内の水分量の減少を招きます。
血管内の水分が減少すると、血液が固まりやすくなり、血栓ができやすくなります。
したがって、入浴しても十分な水分が補給されないと、血栓ができ、脳梗塞を発症しやすくなると考えられています。
このほかにも寒い冬に熱いお湯に浸かることで血圧の上昇をきたし、脳卒中を発症する危険性を高めると言われています。

お風呂は脳梗塞の発症にあまり関係しない可能性

脳梗塞の発症と入浴の可能性
入浴中に発生した脳卒中の臨床的特徴、また脳卒中と溺水事故との関連性を評価することを目的とした研究があります。
この研究では、まず脳卒中患者1,939例の臨床データを見直し、入浴中に脳卒中を発症した患者を特定しています。
その上で、入浴に関連した脳卒中と他の活動中に発生した脳卒中の違いを評価しました。
その結果、全脳卒中患者のうち、78人が入浴中に脳卒中を発症していました。
この内訳は、脳出血が32人、脳梗塞が28人、くも膜下出血が18人でした。
入浴中に脳卒中を発症した人が占める割合で比較すると、全くも膜下出血の患者のうち8.6%が入浴中に発症しており、次いで全脳出血のうち5.5%が入浴中に発症していました。
入浴中に発症した脳梗塞は、全脳梗塞の2.6%と最も低くなっていました。
また脳卒中のタイプに関係なく、浴槽内で倒れたり、溺れたりした患者は極少数でした。
この研究から、入浴が脳梗塞の発症の原因となるとは言い切れない可能性が示されました。

(出典:Inamasu J, et al. Clinical Characteristics of Stroke Occurring while Bathing. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2017; 26(7): 1462-6.)

お風呂が脳梗塞に良い影響を与える可能性

また定期的な入浴が、脳梗塞に良い影響を与える可能性を示唆した研究もあります。
約3万人の成人を対象に、およそ20年かけて行われた追跡調査では、追跡期間中に冠動脈性心疾患や脳卒中を発症した人と入浴習慣との関連を調べています。
その結果、定期的に浴槽に浸かる入浴は、心筋梗塞や脳卒中による死亡リスクの低減につながることがわかりました。
しかも週に1、2回の入浴よりも、毎日の入浴の方がより効果的であることが、調査結果から示されました。
ただし入浴の頻度は、くも膜下出血の発症とは関連していませんでした。
また、脳卒中のリスクと水温の間に有意な関連は見られませんでした。

(出典: Ukai T, et al. Habitual tub bathing and risks of incident coronary heart disease and stroke. Heart. 2020;106:732-7.)

サウナと脳梗塞の関係

サウナ入浴の頻度と脳卒中リスクとの関連を評価することを目的に行われた研究もあります。
フィンランドにおいて、脳卒中の既往のない53~74歳の成人男女1,628名を対象に、サウナ入浴習慣と脳卒中を発症するリスクを検討しています。
その結果、週に1回サウナ入浴をした人に比べ、週に4~7回サウナ入浴をした人の脳卒中のリスクは大幅に減少していました。
この関係は脳梗塞においてより顕著で、脳出血やくも膜下出血との関係は、さほど強くありませんでした。

(出典: Kunutsor SK, et al. Sauna bathing reduces the risk of stroke in Finnish men and women: a prospective cohort study. Neurology. 2018;90(22):e1937-e1944.)

まとめ

お風呂と脳梗塞の関係について、研究結果を元に説明いたしました。
熱い湯での入浴が脳梗塞を起こすことは、これまでずっと指摘されてきたことです。
最近の研究結果は、入浴をすることを支援する内容ではありますが、しっかりと水分を取りながら、ゆったりとお風呂に入ることは、ぜひ意識したいところです。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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