この記事を読んでわかること
・皮質下出血は脳出血の中でどれくらいの頻度なのか
・右前頭葉の皮質下出血の症状とはどのようなものか
・左側頭葉の皮質下出血の症状とはどのようなものか
皮質下出血は脳出血の中でも約1割を占め、出血する部位によってさまざまな症状を呈します。
この記事では、例として右前頭葉や左側頭葉の皮質下出血の症状を説明します。
また、広い範囲で出血が起こると、脳の障害の中でも重要な高次機能障害が起こりえますので、こちらについても解説します。
右前頭葉皮質下出血の特徴
皮質下出血(ひしつかしゅっけつ)とは、脳出血のタイプの一つです。
そして、脳出血は高血圧などが原因となり、脳の血管が破れてしまう病気のことです。
脳出血が起こりやすい部位としては、大脳の被殻が最多となっています。
続いて、視床、小脳、脳幹、皮質下などにも起こることがあります。
皮質とは大脳を覆っている部分のことですが、そのすぐ下で起こるものが皮質下出血で、脳出血全体の約10%を占めます。
皮質下出血は、高血圧や外傷、脳動脈瘤(動脈にできるこぶ)の破裂、脳動静脈奇形、脳腫瘍、血が止まりにくい、などの明らかな原因を有するものと、こうした明らかな原因がない(特発性)ものがあります。
皮質下は、被殻などの他の脳出血と異なり、部位が大脳全体と範囲が広いため、起こる場所によって様々な症状がでます。
どの部位においても、頭痛が出ることや、てんかんのような症状が挙げられます。
中でも右前頭葉の皮質下出血では、右側の大脳半球(右脳)の前頭葉が障害されます。
右前頭部の痛みに加えて、以下のような症状がでます。
- (1)運動機能障害
- ・麻痺:右脳が障害され、左側の手足が動かなくなる
・構音障害:ろれつがまわらなくなる - (2)遂行(すいこう)機能
- ・遂行機能障害:物事を順序立ててできなくなる
- (3)発言
- ・発言:言葉を話したり、理解ができなくなる
通常は、左前頭葉にブローカの言語中枢という言語機能を司っている部分があります。
この部分が壊れると失語症が起こります。
一方、左でなく右の前頭葉に言語中枢がある人も2%程度はいるとされており、右頭頂葉の皮質下出血が原因で言語能力に影響がでる可能性があります。
左頭頂葉皮質下出血とその影響
頭頂葉は、手足などの体から送られる感覚情報を統合し、体の各部分の位置や姿勢を把握するための情報を処理するなどの機能を持っています。
左頭頂葉で皮質下出血が生じた場合には、左脳の頭頂葉が障害されます。その結果、以下の症状が現れます。
- 半側空間無視:右側の空間を認識できなくなる
- 痺れ:体の右側のしびれと感覚障害
- 左右失認:左右の区別がつかなくなる
出血部位が患者の状態に与える影響
皮質下出血は、その出血部位によってさまざまな症状が現れ、患者の状態に影響を与えます。
出血の範囲が広くなると、感覚障害や視野障害、そして失語症や半側空間無視などの高次機能障害が生じます。
高次機能障害は、思考や記憶、行為、注意などの脳機能の一部に障害が起こるものです。
外見からはわかりにくいため、周りの人から症状に対して理解が得にくいという問題があります。
高次機能障害には、以下のような症状があります。
- 注意障害:集中力が続かず、気が散りやすくなる。複数のタスクを同時にできない。
- 記憶障害:新しい出来事を覚えられない。
- 失語:言いたい言葉を発することができない。聞こえているものの、意味がわからない。
- 遂行機能障害:段取りよく、優先順位をつけて物事を進められない。
- 半側空間無視:目で見えているものの、片側に注意が向かないために見落としがちになり、ぶつかることが増える。
- 感情変化や社会的行動の障害:感情や欲求の制御ができない。やる気が起きない、人柄がかわったような行動変化が現れる。
こうした高次機能障害が起こると、職場では疲れやすく、仕事に集中できない、イライラしてしまう、ということがあります。
まとめ
今回の記事では、脳出血の一つである皮質下出血の症状について解説しました。
これまで、脳出血で損傷を受けた脳神経細胞は、完全に元通りに修復することは難しいとされてきました。
そこで、幹細胞治療で死んでしまった脳神経細胞を再び機能するようにする、再生医療に期待がもたれています。
当院ニューロテックメディカルでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
リニューロ®では、同時刺激×再生医療™(*0)、骨髄由来間葉系幹細胞(*1)を用いて狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高めた上で、神経再生リハビリ(*2)をおこなうことで神経障害の軽減を目指せます。
皮質下出血後の治療の選択肢として再生医療にご興味のある方は、一度当院までご相談くださいね。
(*0同時刺激×再生医療™)
再生医療のタイミングに合わせて同時に刺激をおこなうことが、出来るだけ幹細胞や液性因子を損傷部周辺や代償部に集める、損傷部周辺で幹細胞の生着率を高める、神経細胞や希突起神経膠細胞への分化を促す、神経栄養因子など液性因子を放出させる、ためには必要です。
(*1骨髄由来間葉系幹細胞)
骨髄由来間葉系幹細胞は、他由来間葉系幹細胞より神経系幹細胞や血管系幹細胞に分化することが多く報告され、最も研究された歴史が長い間葉系幹細胞です。それら幹細胞を特殊な培養方法により機能強化した幹細胞を治療には使用しています。
(*2神経再生リハビリ®)
神経再生リハビリ®は、再生医療に合わせて磁気刺激や電気刺激などで神経回路を興奮しやすくした上での反復訓練(川平法®)などをおこなうことで、狙った神経回路の再構築を目指すリハビリです。
よくあるご質問
皮質下出血の症状は?
皮質下出血は、脳のさまざまな部位で起こり得ます。そのため、出血した部位によって症状が異なります。出血すると頭痛やてんかんのような症状がみられます。出血が起こった部位が前頭葉であれば前頭部、頭頂葉ならこめかみ、側頭葉なら耳の中や耳のすぐ前、後頭葉であれば目の周囲の激しい痛みがあげられます。
皮質下出血の原因は?
皮質下出血の原因は、高血圧や外傷、脳動脈瘤の破裂、脳動静脈奇形、脳腫瘍、もともと血が止まりにくいなどの素因があるといった明らかなものがわかる場合と、そうした原因がない(特発性)場合があります。最近では、原因不明の特発性のものに、小さな血管の奇形が関与しているのではないか、という報告もあります。
<参照元>
皮質下出血の臨床的検討 高血圧性と特発性との比較検討.脳卒中7: 210-218,1985.:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke1979/7/3/7_3_210/_pdf/-char/ja
脳卒中 Minds版やさしい解説 | Mindsガイドラインライブラリ:https://minds.jcqhc.or.jp/n/pub/3/pub0081/G0000797/0009
脳出血 | 健康長寿ネット:https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/noukekkansikkan/nounai-syukketsu.html
脳卒中|病気について|循環器病について知る|患者の皆様へ:https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2/
言語野はどうして左にあるのでしょうか? 東京大学:http://mind.c.u-tokyo.ac.jp/Sakai_Lab_files/Staff/KLS_PaperJ/KLS2014Jc.pdf
概説高次脳機能障害の定義−病巣と症候の整理.Jpn J Rehabil Med,51:771-773,2014.:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/51/12/51_771/_pdf
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