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高次脳機能障害と薬物療法

           

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この記事を読んでわかること

高次機能障害とは
高次脳機能機能障害の原因
高次脳機能機能に対する薬物療法


認知力や社会的行動が障害される高次脳機能障害では、頭部外傷や脳卒中の影響を受け、注意力、記憶、遂行機能、また計画的な行動などが障害されます。
症状は広範ですが、それぞれの障害に対してメチルフェニデート、アマンタジン、ドネペジルなどが有用であることが知られています。

高次脳機能障害とは

高次脳機能障害の注意障害

高次脳機能とは情動や記憶、言語などの人間が人間らしくいるための機能の総称です。
障害されることで注意障害や失語症などの様々な障害が生じます。
特に注意障害は集中力が欠如し、なんらかの作業がままならなくなってしまう病気です。
進行すれば日常生活に大きな影響を与えてしまうため早期の診断と介入が必要になります。


まず高次脳機能について、そして高次脳機能障害の原因や症状について説明いたします。

高次脳機能機能とは?

高次脳機能とは、思考や記憶、そして会話や目的を持った運動の実行など、複雑な行動を指す用語として使用しています。
わたしたちが社会活動をする上で、必要不可欠なすべての機能を含むとも解釈できます。
この機能は、私たちの大脳皮質の神経細胞が制御しているものです。
大脳は体内で構築されている神経系ネットワークの階層構造のなかで、最も高いレベルの制御を行っています。

高次脳機能機能障害の原因

大脳皮質が障害を受けることで、高次機能障害がみられます。
その原因はさまざまですが、一般的には外傷、脳炎などの感染症、また脳卒中が主たる原因となっています。
そのほかにも脳神経の変性疾患、代謝障害による低血糖なども原因となります。

高次脳機能機能障害でみられる症状

次に、高次脳機能障害でみられる症状について説明します。
高次脳機能には多くの行動が含まれていますので、高次脳機能障害もさまざまな症状を認めます。
主たる症状として、注意力や集中力を欠いてしまう注意障害、物事を覚えられなかったり、思い出せなくなったりする記憶障害がみられます。
また自分で計画を立てて行動できなくなる遂行機能障害が生じます。
これらはまとめて認知障害とも言われます。
そのほか感情や欲求をコントロールできなくなるため、怒りっぽくなったり、金遣いが荒くなったりすることもあります。
これらはまとめて社会的行動障害と呼ばれます。

高次脳機能機能に対する薬物療法

高次脳機能は複雑ではありますが、個々の障害に対する薬物療法が試みられています。
続けてそれぞれの障害に対する薬物療法について、説明します。

注意障害に対する薬物療法

注意障害があると、集中力が続かない、情報の処理に時間がかかる、不注意で見落としが多いなどの症状がみられます。
注意障害に対しては、メチルフェニデートが有効です。
メチルフェニデートは、脳内の神経端末においてドーパミンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害する作用があります。
再取り込みが阻害されることで、神経端末(シナプス)におけるドーパミンとノルアドレナリン濃度が上昇、これが脳神経の興奮を促し、活動性の向上や覚醒度の向上につながります。
注意欠陥・多動性障害(ADHD)の子どもたちに対する治療薬としても知られています。
そのほかにも、同様に脳内でドパミンの放出を促進する作用のあるアマンタジンも、注意障害に効果があります。
なおドネペジルと呼ばれるコリンエステラーゼ阻害薬は、注意力を持続させる効果があることが知られています。
ちなみに、ドネペジルはアルツハイマー型などの認知症の進行を抑制する薬としても知られています。

記憶障害に対する薬物療法

記憶は、記憶を保持する期間から短期記憶や長期記憶に分けられますが、それぞれ脳内の異なる部位が作用しています。
この記憶が障害されると、新しいことを覚えられなくなったり、覚えても数分後には忘れてしまったり、また以前に体験したことや家族の顔が思い出せなくなったりしてしまうことがあります。
この記憶障害にもメチルフェニデートやドネペジルが有用だと言われています。
特にドネペジルは、短期記憶だけでなく、長期記憶が障害された人たちの記憶力の向上に貢献することが知られています。

遂行機能障害に対する薬物療法

自分の意思を持って計画を立て、その計画をもとに段取りよく実行する能力を遂行機能と呼びます。
遂行機能が障害されると、目的を持って買い物に出かけても目的通りの買い物ができない、予定通りに出かけたり人と会ったりすることができなくなります。
仕事も予定通り仕上げることができなくなるため、社会生活に大きな支障をきたします。
この遂行機能障害に対しては、アマンタジンが有用であることがわかっています。
そのほかブロモクリプチンというドーパミン受容体作動薬も、遂行機能障害の改善に貢献することがわかっています。

社会的行動障害と薬物療法

感情や欲求のコントロールが難しくなる社会的行動障害では、ほかに意欲の低下、うつ症状、攻撃性の増加などの症状がみられます。
意欲の低下などのうつ症状に対しては、いわゆる抗うつ薬が使用できます。
セロトニン再取り込み阻害薬が一般的によく利用される薬剤です。
攻撃性の増加に対しては、逆に興奮状態にある脳神経を鎮める必要があり、抗精神病薬が有効である可能性があります。

まとめ

高次脳機能機能に対する薬物療法について、簡単に紹介しました。
高次脳機能障害の症状は多岐に渡るため、個々の症状に対し、しっかりと評価したうえで処方薬を検討することになります。
今後再生医療がさらに進歩すると、高次脳機能障害も一気に解決できますので、薬剤も不要になるでしょう。
そのような日が早く訪れることを願っています。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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