ALSは末梢神経や自律神経にも影響する?よくある誤解と真実 |脳梗塞・脊髄損傷の幹細胞治療|ニューロテックメディカル

ALSは末梢神経や自律神経にも影響する?よくある誤解と真実

           

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この記事を読んでわかること

ALSの病態がわかる
ALSの運動神経以外への影響がわかる
ALSと末梢神経障害の違いがわかる


中枢神経系血管炎とは、脳を栄養する血管に何らかの原因で炎症が生じ、さまざまな神経症状をきたす難治性疾患です。
原因や血管のサイズによって分類されますが、どの分類であっても症状が多彩で、しばしば診断に難渋するのが特徴的です。
この記事では、中枢神経系血管炎の定義や分類、脳梗塞との関係とその症状を解説します。

ALSの中心は運動ニューロン障害、でも例外はある?

何もない道で躓く老人
難病として代表的なALSは、Amyotrophic Lateral Sclerosisの略で、日本語で「筋萎縮性側索硬化症」という病気です。
では、そもそもALSとはどのような病気なのでしょうか?
専門用語を使うと、上位運動ニューロン、下位運動ニューロンがともに障害されることで麻痺や筋萎縮などの症状が原因不明に進行し、最終的に呼吸不全や瞼すら動かさなくなってしまう病気です。
運動ニューロンとは脳から身体に向けて発せられた運動の指令が最終的に筋肉に至るまでの神経回路のことを指し、一般的にこれを錐体路と呼びます。
錐体路(皮質脊髄路)の走行は、上流から順に下記の通りです。

  1. 大脳皮質運動野
  2. 大脳内包後脚
  3. 中脳の大脳脚
  4. 延髄錐体
  5. 錐体交叉
  6. 脊髄側索
  7. 脊髄前角
  8. 末梢神経

このうち、脊髄前角までを上位運動ニューロン、脊髄前角から分岐する末梢神経〜筋肉までを下位運動ニューロンと呼びます。
例えば、脳卒中や脊髄損傷は上位運動ニューロン障害、ギランバレー症候群などは下位運動ニューロン障害に分類されますが、ALSではそのどちらもが障害される点が特徴です。
一方で、この病態からすれば運動ニューロン以外は通常障害されず、知覚神経や自律神経は障害されないのが一般的です。
しかし、中には例外的に知覚神経や自律神経、もしくは認知機能などが障害されるケースも報告されています。
日本神経学会のALS診療ガイドライン2023によれば、発症者の28.4%で状況にそぐわない笑いや泣くなどの情動調節障害を認めています。
また、背部痛や関節痛、頚部痛など、神経障害性疼痛も報告があり、その頻度は15〜85%とばらつきも大きいです。

さらに、横井らの報告によれば、近年ではALSにも自律神経障害が併発すると考えられるようになってきたとしており、実際にALSに伴う自律神経障害によって頻脈・高血圧を発症した症例を報告しています。

以上のことからも、ALSの神経症状は人によって非典型的な経過を辿ることが知られており、複合的な神経症状をきたす可能性がある点には注意が必要です。

自律神経過反射とは?ALSとの関連性を検証

自律神経過反射とは
先述したように、一般的にALSでは知覚神経や自律神経に影響を及ぼさないと知られていますが、横井らの報告ではALSに伴い自律神経の過反射が引き起こされることも珍しくないとしています。
そもそも自律神経とは交感神経と副交感神経の総称であり、相互に作用し合うことで呼吸や体温・血圧・脈拍・排尿・排便・発汗など、人体のさまざまな生理機能を調整している神経です。
ALSでは特に心血管系の自律神経において過反射が起こりやすく、交感神経の過剰興奮に伴う頻脈・高血圧を伴うことが多いです。
このメカニズムとしては、ALSによって中枢自律神経線維網(central autonomic network; CAN)、白質、脊髄などが複合的に障害され、複数の要因が重なることで生じていると考えられていますが、詳細はわかっていません。

また血圧や脈拍以外にも、ALS発症に伴う自律神経障害の症状として下記のような報告があります。

  • 発症早期は発汗量が増加し、進行すると徐々に低下する
  • 涙腺の機能低下
  • 胃腸の通過時間延長
  • 16〜46%に無抑制収縮や残尿などの排尿障害
  • 外肛門括約筋の筋電図では神経原性変化がみられた

以上のように、心血管系以外にもさまざまな自律神経障害を認める可能性があります。

末梢神経障害との違いと鑑別診断のポイント

ギランバレー症候群や糖尿病性ニューロパチーなど、一般的な末梢神経障害はいわゆる下位運動ニューロン障害です。
その一方で、ALSは上位運動ニューロン・下位運動ニューロンともに障害されます。
しかしながら、ALSの発症初期には下位運動ニューロン障害が前景に立ち、上位運動ニューロン障害が隠れやすく、末梢神経障害との鑑別が困難です。
そこで、具体的な鑑別診断のポイントとしては、下位運動ニューロン障害の症状である筋萎縮・筋力低下・線維束性収縮とともに、上位運動ニューロン障害の症状である痙縮や腱反射亢進の有無が重要です。
また、ALSでは筋電図において活動電位の振り幅が小さくなることも特徴となります。

まとめ

今回の記事では、ALSの症状の特徴や自律神経への影響について詳しく解説しました。
ALSは原因不明に上位運動ニューロン・下位運動ニューロンともに障害される病気であり、有効な治療法がないことから難病の1つとされています。
徐々に症状が進行して呼吸不全などに陥るため、対症療法による生命維持が必要です。
一方で、近年ではALSに対する新たな治療法として、再生医療が非常に注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善困難であったALSの改善が期待できます。

よくあるご質問

ALSでは自律神経は侵されますか?
これまで、ALSは自律神経に影響しない疾患と考えられてきましたが、近年ではALS患者において自律神経症状を認める報告も増え、一部の患者では自律神経にも影響を及ぼすと考えられています。

ALSと間違えやすい病気は?
ALSと間違えやすい病気、脊髄性筋萎縮症・慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)、筋ジストロフィー、多発性硬化症などが挙げられます。
どの疾患も症状が似ており、全身のさまざまな部位で神経症状が出現します。

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    <参照元>
    1:ALS診療ガイドライン2023|日本神経学会:https://neurology-jp.org/guidelinem/pdf/als_2023.pdf
    2:筋萎縮性側索硬化症における発作性交感神経亢進の1例|J STAGE:https://neurology-jp.org/Journal/public_pdf/057120782.pdf
    3:筋萎縮性側索硬化症と自律神経障害|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/ans/51/2/51_71/_pdf

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    PROFILEこの記事の監修
    貴宝院 永稔
    貴宝院 永稔 医師
    (大阪医科薬科大学卒業)
    • 脳梗塞・脊髄損傷クリニック 総院長
    • 日本リハビリテーション医学会認定専門医
    • 日本リハビリテーション医学会認定指導医
    • 日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
    • ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

    私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
    リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
    このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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