この記事を読んでわかること
脳梗塞の後遺症か認知症かを見分けるポイント
脳梗塞後に発症することがある血管性認知症の症状と特徴
家庭でできる生活の工夫や外部の専門職に相談する方法
脳梗塞を発症した後は高次脳機能障害や認知症が症状としてみられることがあります。
特に血管性認知症と呼ばれる脳梗塞の後に出現する認知症は、高次脳機能障害と症状が似ているため判別が付きづらいことも少なくありません。
この記事では高次脳機能障害と血管性認知症の違いや家庭での生活環境の工夫、専門職への相談窓口を解説します。
脳梗塞の後遺症での高次脳機能障害と認知症の違い
脳梗塞を発症すると運動麻痺などの障害以外にも、もの忘れが増えたり、予定管理が難しくなったりする症状が出現することがあります。
これらの症状は脳梗塞の症状である高次脳機能障害や血管性認知症で見られます。
脳梗塞で出現する高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、脳がダメージを受けることによって出現する記憶障害・注意障害・遂行機能障害などの認知機能が障害されることの総称です。(高次脳機能障害者支援法の成立及び法の施行に関する政令について|厚生労働省)
これらの障害が出現すると日常生活に様々な影響を与えます。
記憶障害では数分前に話したことを忘れたり、次にすることを思い出せないため適切な行動が取れないなどの症状があります。(記憶障害のリハビリテーション―その具体的方法―|J-stage)
他にも注意障害があると周囲の物を見落としたり、遂行機能障害があると目標を立てて行動できなくなるため、作業内に見落としが出るなどの症状が出現することがあります。
このように高次脳機能障害は一見すると、物忘れに見える様な症状が出現するため認知症と間違えてしまうケースがよくあります。
高次脳機能障害と認知症の違いは経過を見て判断する
高次脳機能障害と認知症の決定的な違いは経過にあります。
高次脳機能障害は脳に障害を受けた日に出現します。
その後、発症した日から時間が経過すると徐々に症状が改善していきます。
また、リハビリテーションを行うことで症状が改善したり、障害を受けた機能に代わる工夫ができる可能性があります。
一方、認知症はゆっくりと進行し症状が出現する日の特定が難しいことがほとんどです。
経過は徐々に進行し、リハビリを行っても認知症の症状を改善することは期待できません。
そのため、認知症による問題が起こりにくいような対応を行ったり、生活環境を整えることで症状による困り事を減らすことを目指します。
高次脳機能障害と認知症を見分けるためには経過を観察し、症状がどのように変わっていくかを確認しましょう。
脳梗塞によって引き起こされる血管性認知症の症状と特徴

脳梗塞を発症することで血管性認知症を引き起こすことがあります。
血管性認知症は脳梗塞を再発するたびに悪化したり、まだら認知症と呼ばれる特徴的な症状が見られます。
階段状に進行する血管性認知症の自然経過
血管性認知症の特徴の一つに症状が階段状に進行することがあります。
最も多い認知症のアルツハイマー型認知症は緩やかに症状が進行しますが、血管性認知症は脳卒中を再発するたびに症状が進行します。
血管性認知症は小さな脳梗塞を何度も繰り返すことで発症するケースも多くあります。(認知症疾患診療ガイドライン2017|日本神経学会)
そのため、脳梗塞の再発を予防することが症状を進行させない治療になります。
まだら認知症や神経症状などの特徴的な症状
血管性認知症は判断能力は保たれていても記憶に障害が出現するなど、できることとできないことの差が激しいまだら認知症と呼ばれる症状が特徴です。
アルツハイマー型認知症と比較すると血管性認知症は長期記憶が保たれやすい反面、遂行機能が障害されやすい特徴があります。
遂行機能とは、目標を立てて物事を行う能力のことで、低下することで順序立てて作業に取り組むことが難しくなります。
また、運動麻痺や失語などの脳梗塞による神経症状を合併しやすいことも特徴です。
家庭でできる環境の工夫と相談窓口の使い方
高次脳機能障害と血管性認知症は適切な対応や環境調整を行うことで生活の困り事を減らすことができます。
また、相談窓口を把握しておくことで家族だけで抱え込まず、社会資源を利用して生活の負担を減らすことができます。
本人の生活しやすい環境を整える
高次脳機能障害や血管性認知症があると見落としや物忘れなどの症状が出現しやすくなりますが、生活環境を整えることで困り事を減らせることがあります。
記憶障害や注意障害がある場合、物を片付ける場所を固定したり、目立つラベルを活用することで見落としを防ぐことができます。
また、認知症の症状によって薬の飲み忘れなどがある場合は、服薬カレンダーを使用する事で飲み忘れの回数を減らせます。
この様に環境を工夫することで少しでも日常生活を行いやすく過ごすことができます。
家族だけで抱え込まず専門職へ相談を
脳梗塞の後遺症や血管性認知症への対応を家族だけでなく、外部に相談や支援を依頼することも重要です。
自宅での生活の中で介護保険を利用すると、普段から気軽に専門職に相談を行うことができます。
介護保険を利用すると、要介護認定ではケアマネジャー、要支援では地域包括支援センターの担当者がつきます。
ケアマネジャーや地域包括支援センターの担当者は介護保険のサービスについての専門職であり、認知症の支援についても相談を行うことができます。
また、介護保険で利用できる訪問リハビリテーションや訪問看護のスタッフとも生活での困り事を相談することができます。
もし困り事があれば、家族だけで対応せずに専門職にいいアイデアがないか相談してみましょう。
まとめ
この記事では、脳梗塞の後遺症である高次脳機能障害と血管性認知症のチェックすべき観察ポイントと適切な対応方法について解説しました。
高次脳機能障害と血管性認知症はよく似た症状が出現することもありますが、経過でどちらかを判断することができます。
血管性認知症はまだら認知症という症状の偏りが特徴で、階段状に進行します。
生活環境を工夫したり、専門職に相談することで困り事を減らすことができます。
脳梗塞後に高次脳機能障害か血管性認知症を疑えば、経過を確認した上で専門職に相談しましょう。
よくあるご質問
- 失語症と認知症はどう見分ければいいですか?
- 失語症は言葉を理解する・話す・読む・書く機能に影響が出る状態で、状況の判断や記憶力はしっかり保たれているのが特徴です。
言葉のコミュニケーションが難しい場合は、言語聴覚士の評価を受けることで正確な状態が分かります。
- 血管性認知症を完全に治す「特効薬」はありますか?
- 残念ながら、一度ダメージを受けた脳の組織を完全に元通りにして血管性認知症を完全に治す薬は現在のところありません。
処方される薬は、脳梗塞の再発を防ぐ薬や、認知症の進行を穏やかにする薬が中心となります。
<参照元>
(1)高次脳機能障害者支援法の成立及び法の施行に関する政令について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001634482.pdf
(2)記憶障害のリハビリテーション―その具体的方法―|J-stage 綿森淑子 本多留美 リハビリテーション医学 2005;42:313-31
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1963/42/5/42_5_313/_pdf
(3)認知症疾患診療ガイドライン2017|日本神経学会
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/sinkei_degl_c_2012_07.pdf












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