この記事を読んでわかること
・慢性疼痛の定義と分類
・神経障害性疼痛の定義と原因、治療
慢性疼痛は典型的には三ヶ月以上もしくは治癒期間を超えて残存する痛みであり、多くの人が悩んでいる問題です。
神経障害性疼痛は慢性疼痛の一つであり、糖尿病などの基礎疾患に付随することもあります。
この記事では慢性疼痛、特に神経障害性疼痛についての解説を行います。
慢性疼痛の定義と疫学
そもそも痛みとは、国際疼痛学会((International Association for the Study of Pain:IASP)から「実際の組織損傷若しくは組織損傷が起こりえる状態に附随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験」と定義されています。
慢性疼痛は典型的には3ヶ月以上移乗持続する、もしくは通常の治癒期間を超えて持続する痛みです。
慢性疼痛の頻度は11-40%と報告されています。
イギリスでは生活に支障がでるレベルの疼痛の有病率が10.4-14.3%と報告されています。
日本での調査でも近い有病率であり、誰しもに訪れる可能性があると言えます。
慢性疼痛の分類と原因
慢性疼痛は様々な分類法があります。
以下に国際等津学会の慢性疼痛の分類を記載します。
- 一次性慢性疼痛(広汎性、局在性、その他、一次性慢性疼痛としか分類できないもの)
- がん性慢性疼痛(がんと転移、抗がん剤、がん手術、放射線治療、その他、癌性慢性疼痛としか分類できないもの)
- 術後痛および外傷後慢性疼痛(術後、外傷後、その他、術後痛および外傷後慢性疼痛としか分類できないもの)
- 慢性神経障害性疼痛(末梢性、中枢性、その他、神経障害性疼痛としか分類できないもの)
- 慢性頭痛および口腔顔面痛(一次性頭痛、二次性頭痛、慢性口腔顔面痛、慢性頭痛および口腔顔面痛としか分類できないもの)
- 慢性内臓痛(持続炎症、血管性、閉塞性もしくは膨張性、牽引性もしくは圧迫、複合性、関連痛、がん性、機能性もしくは説明不能、その他、慢性内臓痛としか分類できないもの)
- 慢性筋骨格系疼痛(持続炎症、骨関節の構造的な変化、神経疾患、非特異性、その他、慢性筋骨格系疼痛としか分類できないもの)
上記の分類を見ると分かる通り、「~としか分類できないもの」などクリアに全て分類できるわけではありません。慢性疼痛は臓器だけでなく、心理社会的な側面も強く、多くの要因が複雑に絡み合っているのです。
慢性疼痛の治療法と管理の目標
慢性疼痛の治療には、原疾患の治療はもちろん、薬物療法やブロック療法、リハビリテーション、心理的アプローチなどがあります。しかし、原因が複雑に絡み合っている慢性疼痛患者の痛みをゼロにすることは困難です。
よって、治療の目標は患者の生活の質(Quality Of Life:QOL)や日常生活動作(Activities of Daialy Living:ADL)を向上させることとするのが望ましいです。痛みがなくなったが、薬の副作用で生活が困難になってしまった、では本末転倒です。
神経障害性疼痛の特徴と基本メカニズム
ここからは慢性疼痛の分類のなかでも「4.慢性神経障害性疼痛」に目を向けてみましょう。
神経障害性疼痛は「体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛」と定義されています。
慢性疼痛の一般論の通り、単一の疾患だけで説明できるものではありません。
有病率は6.4%と報告されています。
自覚症状としては、「刺すような、ちくりとするような」「電撃が走るような」「やけるような」「しびれたような」などの訴えが特徴的です。
神経障害性疼痛の原因となりうる疾患には以下の様なものがあります。
- 栄養代謝性:アルコール性多発ニューロパチー、脚気、ペラグラ、甲状腺機能低下症、糖尿病性神経障害など
- 遺伝性:圧脆弱性遺伝子ポリニューロパチーなど
- 外傷性:医原性神経症外、幻肢痛、神経根ひきぬき損傷、脊髄損傷後遺症、他多発性脳神経障害など
- 虚血性:アレルギー性肉芽腫性血管炎、可逆性虚血性神経障害など
- 中毒性:化学療法誘発性ユーロパチー、水軍中毒、シンナーなど
- 感染性:ジフテリア、神経梅毒、帯状疱疹後神経痛、HIVなど
- 圧迫性:頚椎症性神経根症、絞扼性神経障害、坐骨神経痛など
- 免疫性:がん性ニューロパチー、ギラン・バレー症候群など
- 腫瘍性:悪性腫瘍、神経サルコイドーシスなど
- 変性疾患他:アミロイド性自律神経ニューロパチー、シャルコー関節、パーキンソン病など
神経障害性の治療と管理法
まず、原疾患が治療可能であれば治療を行います。
疼痛の管理目標としては、慢性疼痛の項と同様に「患者のQOLやADLの向上を目指す」となります。
特に神経障害性疼痛では痛み以外に睡眠障害や活力の低下、抑うつなどの併存状態が多いです。
これらの併存状態がさらに痛みを増強させるスパイラルを形成してしまうので、どこかでスパイラルを断たなければなりません。
治療は薬物療法を中心に、ブロック療法や運動療法、心理的アプローチを行います。
認知行動療法や、リラクゼーション法、運動療法などの非薬物療法も、痛みの管理に寄与することが示されています。
慢性疼痛と神経障害性疼痛についてのまとめ
この記事では慢性疼痛と、その中でも神経障害性疼痛について解説をしました。慢性疼痛は様々な要因が複雑に絡み合っているため、完全にゼロにすることは難しいです。
しかし、いくらQOLやADLが良くなったとしても、ずっと痛みと付き合うというのも気が重いでしょう。今後は更なる治療の発展が望まれます。
その一つとして注目されているのが再生医療です。
慢性疼痛に対する再生医療のエビデンスは豊富ではありませんが、効果が期待できる治療法もあります。
例えば、脊髄損傷後遺症に対しての再生医療では運動機能が改善することが多く報告されていますが、神経再生できるのであれば痛みの改善にも自然と期待が向くものです。
当院では狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療リニューロ®という骨髄由来間葉系幹細胞点滴を導入し、脳卒中や脊髄損傷の後遺症に悩む方へ診療を行っています。
さらに同時刺激×神経再生医療®で先進機器を用いながらより充実した医療を提供しています。
少しでも慢性疼痛に悩む患者さんが減るように、更なる今後の研究開発が待たれます。
よくあるご質問
神経障害性疼痛の特徴は?
神経障害性疼痛の臨床的特徴は、傷害された神経支配領域に一致した部位に、自発的な痛みや刺激によって誘発される痛みがあることです。
その部位に以上間隔を合併することもあります。
刺すような痛み、しびれたような痛み、電気が走るような痛みという性質を訴えることがあります。
神経障害性疼痛の対処法は?
神経障害性疼痛の対処は薬物療法を基本とし、薬物療法の効果がない場合や忍容性が低い場合には神経刺激療法や神経ブロック療法を検討します。QOLとADLの向上のためにリハビリテーションなどの機能訓練を併用することもあります。
<参照元>
神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版:https://www.jspc.gr.jp/Contents/public/kaiin_guideline06.html
慢性疼痛診療ガイドライン:https://www.jhsnet.net/pdf/totsu_guideline_jp.pdf
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