この記事を読んでわかること
・進行性核上性麻痺(PSP)の特徴や発症メカニズム、代表的な症状についてわかる。
・PSPによる睡眠障害の種類と生活の質への影響がわかる。
・薬物療法や非薬物的アプローチを組み合わせた効果的な睡眠管理方法がわかる。
進行性核上性麻痺(PSP)は、運動機能や視覚、嚥下、認知機能に影響を与える神経変性疾患で、睡眠障害も生活の質を大きく左右します。
不眠や昼間の過度な眠気、睡眠時無呼吸などがあり、薬物治療に加え、生活習慣の改善や感情的サポートが重要です。
適切な治療と非薬物的アプローチを組み合わせることで、PSP患者の睡眠の質向上が期待できます。
PSPが引き起こす睡眠障害の種類とその影響
進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy;PSP)は、脳の中にある大脳基底核、脳幹、小脳といった部分の神経細胞が減少し、転倒しやすくなったり、下の方が見にくくなったり、しゃべりにくくなったり、あるいは飲み込みにくくなったりするといった症状が現れる病気です。
40代以降で発症することが多く、50から70代の方に特に多くみられます。
脳内の黒質や中脳、淡蒼球、視床下核、小脳歯状核などの神経細胞が減少し、神経が糸屑のような物質に変性してしまう(神経原線維変化)が現れます。
また、グリア細胞にも異常な構造が出現し、過剰にリン酸化したタウが溜まってしまいます。
なぜ、こうした変化が起こるのかはまだ不明です。
さて、PSPの症状は、転倒のしやすさ、目の動きの悪化により下が見にくくなる、しゃべりづらくなる、飲み込みが困難になる嚥下障害、認知症などがあります。
その他にも、睡眠障害もみられる症状であり、生活の質に大きな影響を与えます。
PSPにおける睡眠障害の種類や影響には、以下のようなものがあります。
不眠症
入眠しづらくなる、長く眠り続けるのが難しくなる、または目覚めが早すぎる、などの症状が現れます。
その結果、十分な睡眠がとれなかったり、疲労感が改善しません。
睡眠が断片化する
夜中に何度も目が覚めてしまうことがあります。
主に筋肉のこわばりや痛み、または寝返りを打つのが難しいといった運動症状が原因です。
過度の昼間の眠気
夜に十分な睡眠をとっているはずなのに、日中に疲れやすくなったり、強い眠気を感じたりします。
レム睡眠行動障害(RBD)
レム睡眠中に、夢の中の行動を実際に体で再現してしまう状態で、睡眠が妨げられたり、思わぬケガにつながることがあります。
睡眠時無呼吸
眠っている間に呼吸が止まったり浅くなったりすることで、睡眠が中断され、体内の酸素が不足する睡眠障害です。
睡眠薬使用の注意点と過剰摂取を防ぐ方法
PSPでの睡眠障害に対しては、以下のような薬が処方されることがあります。
- メラトニン
睡眠の質を改善し、夜間覚醒を減らすことに役立ちます。 - クロナゼパム
レム睡眠行動障害(RBD)の場合に処方されることがあります。
睡眠薬を使用する際の注意点としては、医師の指示する用法容量を守ることがあります。
過剰摂取を防ぐためには、自己判断での追加服用を避けることが大切です。
眠れないからといって、自己判断で追加の服用を行うと、過剰摂取のリスクが高まります。
非薬物療法で改善を目指す睡眠管理のポイント
PSPに伴う睡眠障害の改善には、薬物治療だけでなく、ライフスタイルの調整や環境づくりなどの非薬物的アプローチが重要です。
以下は、その具体的な方法です。
1. 睡眠衛生の改善
良好な睡眠衛生を実践することは、PSP患者の睡眠の質を向上させるための基本です。
一貫した睡眠スケジュールを確立することで体内時計を整え、寝室を涼しく、静かで暗い環境に保つことで良い眠りを促進できます。
また、就寝前1時間はスクリーンの使用を控え、カフェインやニコチンの摂取を避けることも効果的です。
2. 認知行動療法(CBT-I)
CBT-Iは、不眠症や睡眠障害に対処するための心理療法で、睡眠を妨げる思考や行動のパターンを修正します。
また、リラクゼーション技術や睡眠制限戦略を学ぶことで、睡眠の質を向上させます。
CBT-Iはさまざまな患者で有効性が証明されており、PSP患者にも有益です。
3. 適度な身体活動と運動
定期的な運動は、夜間の不快感を軽減し、良質な睡眠を促します。
理学療法士の指導のもと、個々の能力に合わせた運動プログラムを行うことで、身体の柔軟性や強度を保つとともに、睡眠障害の改善が期待できます。
4. 共存疾患の管理
うつ病や不安、痛みなどの共存疾患に適切に対応することも、睡眠の質を改善する鍵です。
これには、投薬や心理療法、ライフスタイルの調整が含まれます。
医療専門家と相談し、最適な治療計画を立てることが大切です。
5. 感情的サポートと教育
患者と家族が睡眠障害やPSPに対する理解を深め、オープンにコミュニケーションを取ることで、協力的な環境を整えることができます。
また、感情的な支援を通じて、患者の全体的な幸福感を向上させることが可能です。
これらのアプローチを組み合わせることで、PSP患者が抱える睡眠障害を効果的に管理し、生活の質を向上させることが期待できます。
まとめ
今回の記事では、PSPとはどのような病気なのか、そしてどのような睡眠障害が現れるのかについて解説しました。
進行性核上性麻痺(PSP)の睡眠障害改善には、薬物治療や非薬物的アプローチに加え、ニューロテック®が目指す「神経障害は治るを当たり前にする」取り組みが注目されています。
特に、リニューロ®が提唱する「狙った脳・脊髄の治る力を高める治療」は、同時刺激×神経再生医療®を基盤に、骨髄由来間葉系幹細胞や神経再生リハビリ®との併用でさらなる効果が期待できます。
ご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談くださいね。
よくあるご質問
- 進行性核上性麻痺は進行が早い病気ですか?
- 進行性核上性麻痺(PSP)は、ゆっくり進行することが多いですが、個人差があります。
発症から症状が進行し、日常生活に支障が出るまで数年を要する場合もあります。
ただし、転倒や嚥下障害などが悪化すると生活の質に大きな影響を及ぼしますので、早期診断と適切な治療が重要です。 - 進行性核上性麻痺で寝たきりになると余命はどのくらいですか?
- 進行性核上性麻痺(PSP)で寝たきりになると、平均余命は数年程度とされています。
ただし、状態によって異なり、感染症や呼吸障害などの合併症が命に関わる場合もあります。
適切な医療ケアやリハビリ、家族や介護者のサポートにより、生活の質を保つことが重要です。
<参照元>
・(1)進行性核上性麻痺(指定難病5)|難病情報センター:https://www.nanbyou.or.jp/entry/4114
・(2)Sleep Issues in Progressive Supranuclear Palsy: Understanding, Managing, and Coping|CCF for PSP Awareness:https://pspawareness.com/
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