この記事を読んでわかること
・胸髄損傷の基本的な特徴がわかる。
・胸髄損傷による感覚や運動機能への影響がわかる。
・胸髄損傷と他部位の脊髄損傷の違いがわかる。
胸髄損傷は、胸椎(T1〜T12)に損傷が生じることで、下半身の運動麻痺や感覚障害、体幹機能の低下、排尿・排便障害を引き起こします。
本記事では、胸髄損傷の原因や症状、頸髄・腰髄損傷との違いを詳しく解説。
リハビリや再生医療の可能性についても紹介しています。
脊髄損傷の回復を目指す方は、ぜひご覧ください。
胸髄損傷の基本的な特徴とは?
胸髄とは、胸の領域にある脊髄という神経の太い束のことです。
胸椎はT1からT12の12個の椎体からなります。
(参照サイト:Thoracic Spinal Cord Injury | We Treat patients with this condition(TSCI)|Southwst Scolosis and Spine Institute)
(参照サイト:Thoracic Spine: What It Is, Function & Anatomy|Cleveland Clinic)
胸椎は、頸椎や腰椎よりも硬く安定しているため、損傷を受ける頻度は低いとされています。
しかし、転倒や交通事故などで損傷を受けてしまうことがあります。
胸椎が損傷を受けると、その中を走る胸髄にも損傷を与えてしまう可能性があります。
胸椎の損傷には、以下のような種類があります。
- 靭帯断裂:脊椎をつなぐ役割をはたす靭帯が断裂するため、脊椎が不安定になります。
- 脊髄断裂:重大な神経障害につながる可能性がある、重度の損傷です。
- 椎間板の損傷:脊椎と脊椎の間にあるクッションの役割を果たしている椎間板に損傷が起こると、脊髄にも影響が出て、痛みが引き起こされる可能性があります。
- 椎骨の脱臼:椎骨の位置がずれてしまい、脊髄にストレスがかかる可能性があります。
胸髄損傷の特徴としては、胸髄は体幹や臓器の機能を司る神経が集まっているため、この部位での損傷はさまざまな問題を引き起こす可能性がある点です。
具体的には、歩行能力や日常の作業などが困難になるということです。
胸髄損傷による感覚や運動機能への影響
胸髄損傷が起こると、胸部から下半身にかけて、感覚や運動機能に障害が生じます。
特に、完全に胸髄が損傷を受けてしまう場合には、損傷を受けた部位よりしたの運動機能と感覚機能が完全に失われてしまいます。
(参照サイト:Thoracic Spinal Cord Injury | We Treat patients with this condition(TSCI)|Southwst Scolosis and Spine Institute)
(参照サイト:Thoracic Spine: What It Is, Function & Anatomy|Cleveland Clinic)
主な症状は、以下のようなものです。
- 排便及び排尿のコントロールの喪失
- 腰痛
- 呼吸困難
- 性機能障害
- 心臓と肺機能の問題
なお、胸髄損傷は転倒や交通事故、スポーツなどの外傷によることが多いとされています。
例えば、以下のようなものが原因として挙げられます。
- 重大な自動車事故
- 銃創
- 手術の失敗
- 高い場所からの落下
- 特定の慢性疾患
完全な損傷の場合には、呼吸コントロールなど、生命に不可欠な機能が失われてしまうことがあります。
一方で、不完全な損傷の場合には、感覚の部分的な喪失や排便・排尿コントロールが不安定になること、筋肉のけいれんやしびれなどの症状が現れます。
しかし、損傷部位より下の感覚と動きはある程度維持されます。
脊髄損傷の予後は、損傷の程度や回復の早さ、経過などによって異なります。
麻痺が部分的で、外傷から1週間以内に運動機能と感覚機能の回復が始まった場合は、良好な回復が見込めます。
(参照サイト:脊椎および脊髄の損傷 – 25. 外傷と中毒 – MSDマニュアル家庭版)
胸髄損傷と他部位の脊髄損傷の違い
脊髄損傷は、損傷を受けた部位によって 頸髄損傷・胸髄損傷・腰髄損傷 に分類され、それぞれ異なる症状が現れます。
胸髄は胸椎(T1〜T12)の中を通る神経であり、主に 体幹の筋肉や内臓の働き、下半身の運動や感覚 に関与しています。
そのため、胸髄が損傷されると、主に 下半身の運動麻痺や感覚障害、体幹の機能低下、排尿・排便障害 などの症状が現れます。
それに対して、頸髄損傷や腰髄損傷との違い を詳しく見てみましょう。
1. 頸髄損傷(けいずいそんしょう)との違い
頸髄は、脊髄の中でも最も上部にあり、首から手足、呼吸に関係する神経が通っています。
頸髄損傷の場合、以下のような特徴があります。
(参照サイト:脊髄損傷のリハビリテーション|KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト)
- 四肢麻痺(手足の完全または部分的な麻痺) が起こる
- 呼吸筋の麻痺により自発呼吸が困難 になり、人工呼吸器が必要になる場合がある(特にC3以上の損傷)
- 手や指の細かい動き(巧緻運動)の障害 が生じ、日常生活の動作が大きく制限される
- 重度の自律神経障害(血圧の調節障害、発汗異常など) が生じやすい
つまり、頸髄が損傷されると 手足の麻痺や呼吸障害 など、生命維持に関わる重大な症状が出ることが特徴です。
これに対し、胸髄損傷では呼吸障害は比較的少なく、主に下半身の麻痺が中心となる という違いがあります。
2. 腰髄損傷(ようずいそんしょう)との違い
腰髄は、脊髄の下部に位置し下肢の運動や感覚、排尿・排便のコントロールに関与しています。
腰髄損傷の場合、以下のような特徴があります。
- 下肢麻痺が主な症状 となる(上半身の運動は保たれる)
- 膀胱や直腸の神経障害が起こりやすく、排尿・排便障害が顕著 に現れる
- 性機能の障害(勃起障害や膣の潤いの低下など)が頻繁に見られる
- 体幹の筋肉は保たれるため、座位バランスは比較的良好
つまり、腰髄損傷では、胸髄損傷よりも より下肢の障害が中心となり、体幹の筋力は比較的保たれる という違いがあります。
まとめ
今回の記事では、胸髄損傷の特徴や症状、他の部位の脊髄損傷との違いを解説しました。
脊髄損傷が起こった場合、リハビリテーションが重要になります。
その効果を高めるため、当院ニューロテックメディカルでは、同時刺激×神経再生医療®、骨髄由来間葉系幹細胞を用いて狙った脳や脊髄の治る力を高めた上で、神経再生リハビリ®を行うことで神経障害の軽減を目指す、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療リニューロ®を提供しています。
ご興味のある方は、ぜひ当院までご相談ください。
よくあるご質問
- 胸髄損傷の症状は?
- 胸髄損傷では、主に下半身の運動麻痺や感覚障害が生じます。
また、排尿・排便のコントロール障害、体幹の筋力低下、腰痛、性機能障害、自律神経の乱れによる血圧異常なども見られます。
損傷の程度によっては、呼吸困難が発生することもあります。 - 胸髄とは何ですか?
- 胸髄は、胸椎(T1〜T12)の中を通る脊髄の一部で、主に体幹や内臓の働き、下半身の運動・感覚を制御する神経が集まっています。
胸髄が損傷すると、歩行能力の低下や感覚障害、排泄機能の問題などが生じることがあります。
<参照元>
(1):Thoracic Spinal Cord Injury | We Treat patients with this condition(TSCI)|Southwst Scolosis and Spine Institute:https://scoliosisinstitute.com/thoracic-spinal-cord-injury/
(2):Thoracic Spine: What It Is, Function & Anatomy|Cleveland Clinic:https://my.clevelandclinic.org/health/body/22460-thoracic-spine
(3):脊椎および脊髄の損傷 – 25. 外傷と中毒 – MSDマニュアル家庭版:https://www.msdmanuals.com/
(4):脊髄損傷のリハビリテーション|KOMPAS 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト:https://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000159.html
あわせて読みたい記事:脊髄とは?脳とのつながりとその役割を詳しく解説
外部サイトの関連記事:脊椎損傷で引き起こされる神経因性膀胱排尿障害とは
コメント