この記事を読んでわかること
・橋出血の初期症状と緊急性がわかる。
・橋出血の予後や予測因子がわかる。
・橋出血が引き起こす具体的な障害がわかる。
橋出血(脳幹部にある「橋」という部位で発生する脳出血)は、突然の重篤な症状を引き起こし、命に関わる可能性のある緊急疾患です。
この症状を早期に認識し、迅速に対応することで、命を救うだけでなく、後遺症を最小限に抑えることが可能です。
この記事では、橋出血に関連する特徴的な症状と早期対応の重要性について詳しく解説します。
突然の意識低下や昏睡が示す危険信号
橋とは、脳幹の一部であり、脳と脊髄とをつなぐ構造です。
橋は、睡眠と覚醒のサイクルや呼吸など、生命を保つために重要な役割を果たしています。
また、運動の制御や、感覚情報の伝達をする神経の接合点もあります。
(参照サイト:Pons: What It Is, Function & Anatomy|Cleveland Clinic)
さて、橋に起こる出血のことを橋出血と呼びます。
脳内出血の中でも、約10%を占めます。
そして、橋出血は予後不良であることが一般的とされています。
(参照サイト:Behrouz R. Prognostic factors in pontine haemorrhage: A systematic review. Eur Stroke J. 2018 Jun;3(2):101-109. doi: 10.1177/2396987317752729. Epub 2018 Jan 8. PMID: 31008342; PMCID: PMC6460408.)
橋出血の初期症状として、突然の意識低下や昏睡がよく見られます。
このように、橋は呼吸や心拍を司る生命維持中枢が集中する部位であるため、出血がこの部位にダメージを与えると、瞬時に生命の危機に直結することがあります。
主な症状の例
- 意識レベルの低下(軽い眠気から完全な昏睡まで)
- 突然の混乱状態
- 運動失調(協調運動障害)
- 意識を失う直前に見られる重度の頭痛や吐き気
- 難聴
- 複視
- 感覚障害
- 眼振
- 麻痺(特に、橋に広範囲の損傷があると、眼球運動意外の全身の麻痺を引き起こし、閉じ込め症候群といわれる状態に)
- めまい
- 耳鳴り
特に、病院に運ばれた際にすでに昏睡状態である場合、橋出血による死亡や障害が残ってしまうことを強く示唆することが報告されています。
その他にも、橋出血での予後予測因子として、出血の大きさなどもあります。
こうした因子は、入院時などにCT検査やMRI検査などによって推定されます。
橋出血は進行が速い疾患であるため、初期症状を見逃さず、早期に適切な医療機関へ搬送することが極めて重要です。
迷わず119番通報を行い、救急搬送を依頼してください。
また、治療開始のタイミングが遅れると、後遺症や予後に深刻な影響を与える可能性が高まります。
早期の対応が、命を救い、障害を最小限に抑える鍵となります。
四肢の麻痺や呼吸困難の可能性を考える
橋出血では、脳幹部に損傷が及ぶことで四肢麻痺や呼吸困難が生じることがあります。
四肢麻痺が起こる理由について考えてみましょう。
手足の運動は、大脳から手足を動かすという指令が大脳→脊髄→手足の神経、というような経路で伝わります。
橋は、全身の運動や感覚の指令が通る経路でもあります。
その出血の量が多いと、出血した部分の神経が障害され、その伝達路が断たれてしまいます。
すると、橋出血による四肢麻痺が起こる、ということになるのです。
(参照サイト:Pons: What It Is, Function & Anatomy|Cleveland Clinic)
また、橋には呼吸中枢もあります。
そのため、出血が起こると呼吸困難が生じてしまうことになるのです。
具体的な症状
- 片側性または両側性の麻痺:手足の動きが鈍くなる、または完全に動かなくなる場合があります。
- 呼吸リズムの乱れ:自律神経がダメージを受けることで、呼吸が浅くなる、または止まる危険があります。
- 嚥下困難:飲み込む力が低下し、窒息のリスクが高まります。
このような症状が確認された場合、人工呼吸管理や集中治療を早急に受ける必要があります。
橋出血で見られる眼球運動障害の特徴とは
橋出血のもう一つの重要な特徴が、眼球運動障害です。
橋は、目の動きを調節する神経核を含む部位であり、ここが障害されることで眼球運動に異常が見られることがあります。
(参照サイト:Pons: What It Is, Function & Anatomy|Cleveland Clinic)
よく見られる眼球運動障害
- 眼球の左右不随意運動
「水平注視麻痺」と呼ばれる症状で、患者が目を横に動かすことが困難になる場合があります。 - 眼振(がんしん)
目が意図しない動きを繰り返す現象で、患者の視覚に混乱を与える原因となります。 - 瞳孔反射の異常
光を当てても瞳孔が縮小しない、あるいは左右の瞳孔の大きさが不均衡になるといった症状が発生することがあります。
これらの症状は、橋出血がどの範囲に及んでいるかを判断する重要な手がかりとなります。
医師によるCTやMRIの迅速な検査で病変部位を特定し、適切な治療計画が立てられます。
まとめ
橋出血は、突然の意識低下や昏睡、四肢の麻痺、眼球運動障害など、命に直結する深刻な症状を伴います。
これらの症状を見逃さず、早期に適切な医療機関で対応することが、患者の命を救う鍵となります。
また、リハビリを通じた後遺症の軽減も重要です。
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よくあるご質問
- 脳の橋出血の症状は?
- 脳の橋出血では、突然の意識低下や昏睡、片側性または両側性の四肢麻痺、呼吸困難、眼球運動障害(水平注視麻痺や眼振)などが主な症状です。
また、めまいや難聴、感覚障害、吐き気、重度の頭痛なども見られることがあります。
これらの症状は命に直結するため、早急な医療対応が必要です。 - 橋出血で四肢麻痺になるのはなぜ?
- 橋は、大脳から脊髄を通じて手足へ運動指令を送る経路が通る重要な部位です。
橋で出血が起こると、この神経経路が損傷され、指令が手足に伝わらなくなります。
その結果、四肢が麻痺する状態が引き起こされます。
出血が広範囲に及ぶと、片側だけでなく両側の麻痺が起こることもあります。
<参照元>
(1)Pons: What It Is, Function & Anatomy|Cleveland Clinic:https://my.clevelandclinic.org/health/body/23003-pons
(2)Behrouz R. Prognostic factors in pontine haemorrhage: A systematic review. Eur Stroke J. 2018 Jun;3(2):101-109. doi: 10.1177/2396987317752729. Epub 2018 Jan 8. PMID: 31008342; PMCID: PMC6460408.:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6460408/
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