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下半身不随を引き起こす原因とそのメカニズム

           

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この記事を読んでわかること

下半身不随のメカニズムがわかる
脳卒中と脊髄損傷による下半身不随の違いがわかる
下半身不随を発症予防する方法がわかる


大脳からの運動の指令は、脊髄を経由して末梢神経から筋肉に伝達されることで両下肢の随意的な運動が保たれています。
そのため、その神経経路の一部である大脳や脊髄に異常が生じると下半身不随に陥る可能性があり、日常生活に支障を与えるため、注意が必要です。
この記事では、下半身不随を引き起こす原因とそのメカニズムについて解説します。

脊髄損傷が下半身不随に至るプロセスを解説

脊髄損傷が下半身不随に至るプロセスを解説
脊髄損傷では下半身不随に至る可能性があり、そのメカニズムを理解するためには錐体路の走行を理解する必要があります。
まず、歩いたり走ったりと身体を思い通りに動かせるのは、脳からの運動の指令が錐体路と呼ばれる神経回路を経由して全身の筋肉に伝わっているためです。
錐体路は主に下記のような経路です。

  1. 大脳皮質運動野
  2. 放線冠
  3. 大脳内包後脚
  4. 中脳の大脳脚
  5. 延髄錐体
  6. 錐体交叉
  7. 脊髄前角
  8. 末梢神経

(参照サイト:運動機能に関与する中枢神経系の形態学|J STAGE)
大脳皮質から始まった運動の指令は、上記のような錐体路を経由して徐々に下降し、脊髄に伝達されます。
脊髄は上から順に頸髄・胸髄・腰髄・仙髄と分かれており、上肢の運動の指令は頸髄から末梢神経を経由して上肢の筋肉に、体幹の運動の指令は胸髄から末梢神経を経由して体幹の筋肉に、下肢の運動の指令は腰髄から末梢神経を経由して下肢の筋肉に伝達されます。
そのため、腰髄を損傷した場合は下肢の筋肉に運動の指令が伝達されなくなるため、下半身不随になるわけです。
また、厄介なことに下肢への運動の指令は頸髄→胸髄を経由して腰髄に至るため、上流にある頸髄や胸髄を損傷しても下肢への運動の指令が障害されてしまいます。
そのため、腰髄以上のどの脊髄レベルであっても、損傷すると下半身不随になる可能性があり、注意が必要です。
同様の理論で、脊髄損傷以外にも脊髄腫瘍や脊髄梗塞・血腫による脊髄の圧迫など、脊髄が障害を受けるさまざまな病態で下半身不随のリスクを伴います。

脳卒中や脊髄疾患が下半身麻痺を引き起こす理由

脳卒中や脊髄疾患が下半身麻痺を引き起こす理由も、上記で記した錐体路が障害されるためです。
ここで注意したいのが、脊髄疾患と脳卒中では下半身麻痺の出方が異なる点です。
錐体路を改めて見ると、大脳皮質から始まった運動の指令は放線冠→大脳内包後脚→中脳の大脳脚→延髄錐体を通過し、錐体交叉で左右交差して脊髄内を下降します。
つまり、右大脳半球から生じた指令は左半身の運動を、左大脳半球から生じた指令は右半身の運動を司っているわけです。
脊髄損傷の場合、原因にもよりますが多くの場合は左右両側が同時に障害されるため、両下肢に麻痺が同時に出現します。
一方で、脳梗塞や脳出血の場合は発症した側と左右反対の半身で麻痺が生じます。
ただし、多発性脳梗塞や重度の脳出血であれば左右両側の脳が障害を受けるため、両側の下半身不随を起こす可能性もあり、麻痺の出現の程度や症状の出方には個人差も大きいです。

外傷や事故による下半身不随の可能性と予防策

若年になればなるほどスポーツ外傷による脊髄損傷のハイリスク
特に下半身不随となりやすい原因は、外傷や事故による脊髄損傷です。
脊髄の中でも頸髄や腰髄や首や腰の回旋運動を可能にするため、解剖学的に不安定性が高く、外傷や事故による外力に対して弱いことが知られています。
「日本脊髄障害医学会による外傷性脊髄損傷の全国調査」によれば、脊髄損傷患者のうち88.1%が頸髄損傷で、10.1%が胸髄もしくは腰髄損傷であり、頸髄損傷が多いことがわかります。
また、受傷原因は全体では平地転倒(38.6%)、交通事故 (20.1%)、低所からの転落(13.7%)の順に多く、外傷や事故によって頸髄や腰髄を損傷して下半身不随になる方が多いです。
一方、若年になればなるほど交通事故やスポーツ外傷による脊髄損傷の発症リスクが上がり、特にスキーなどのスポーツでハイリスクです。
(参照サイト:日本脊髄障害医学会による外傷性脊髄損傷の全国調査|日本せきずい基金)
若年者であれば交通事故に気をつけたり、スポーツするにしても無茶なプレイを避けることが予防策となります。
一方で、高齢者では平地での転倒が原因として多いため、日常生活でも転倒に注意し、普段から筋力維持に努めることが重要です。

まとめ

今回の記事では、下半身不随を引き起こす原因とそのメカニズムについて詳しく解説しました。
下半身不随は主に腰髄の損傷によって起こりうる麻痺の1種であり、特に交通事故や転倒転落に伴う腰髄損傷で発症しやすいため注意が必要です。
脳からの運動の指令が下半身に届かなくなることで下半身不随に陥り、歩行をはじめとする日常生活動作に多大な支障を与えます。
また、脳梗塞や脳出血も発症の仕方によっては下半身不随に陥る可能性があり、注意が必要です。
一度後遺症として残ってしまうと、現状ではリハビリテーションが唯一の改善策ですが、症状の根治は困難です。
そこで、近年では新たな治療法として再生医療が大変注目されています。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった下半身不随の改善が期待できます。

よくあるご質問

下半身不随の原因は?
下半身不随の原因は、主に脊髄のうちの腰髄が障害されることです。
具体的には、外傷や転落や交通事故による脊髄損傷、脊髄腫瘍、硬膜外血腫、硬膜外膿瘍、脊髄梗塞などが挙げられます。

下半身不随とはどんな症状ですか?
下半身不随とは、脳や脊髄になんらかの異常が生じることで下半身の筋肉に適切な運動の指令が伝達されず、自身で思い描いた身体の動きや運動、いわゆる随意運動ができなくなる状態です。

<参照元>
1運動機能に関与する中枢神経系の形態学|J STAGEhttps://www.jstage.jst.go.jp/
2日本脊髄障害医学会による外傷性脊髄損傷の全国調査|日本せきずい基金https://www.jscf.org/

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PROFILEこの記事の監修
貴宝院 永稔
貴宝院 永稔 医師
(大阪医科薬科大学卒業)
  • 脳梗塞・脊髄損傷クリニック 総院長
  • 日本リハビリテーション医学会認定専門医
  • 日本リハビリテーション医学会認定指導医
  • 日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
  • ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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