この記事を読んでわかること
・視神経脊髄炎が寿命に与える影響がわかる
・視神経脊髄炎の症状がわかる
・視神経脊髄炎の再発予防について理解できる
視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica Spectrum Disorders:NMOSD)の影響、症状、そして再発予防に関する包括的ガイド。
このブログでは、この病気が寿命にどう影響するかから、症状の詳細、予防策まで、あなたが知る必要があるすべてを解説します。
視神経脊髄炎(NMOSD)の寿命への影響
視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica Spectrum Disorders:NMOSD)とは、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患です。
難しい漢字が連続していますが、末梢神経ではなく脳や脊髄などの中枢神経系において、慢性的に髄鞘に炎症が生じる疾患という意味です。
髄鞘とは、神経を守っている鞘状の構造物であり、この髄鞘に対する自己抗体が産生されることで髄鞘が破壊され(これを脱髄という)、さまざまな神経症状をきたします。
本来であれば体内に侵入した病原体や異物を攻撃する役割を持つ抗体ですが、誤って自分自身の細胞を異物として認識して攻撃してしまう抗体を自己抗体と呼びます。
同じような病気に多発性硬化症と呼ばれる疾患もありますが、視神経脊髄炎では多発性硬化症と比較して視神経や脊髄の炎症が強い点で特徴的です。
気になるのは、視神経脊髄炎が寿命に与える影響です。
多発性硬化症とともに、どちらの疾患も再発と寛解を繰り返し、徐々に神経症状が悪化していく病気ですが、適切な治療を施せば長期予後は悪くありません。
ただし、発見が遅れたり治療が適切でなければさまざまな合併症を併発して。
寿命を縮める可能性もあるため、慎重な対応が必要です。
視神経脊髄炎(NMOSD)の主な後遺症
NMOSDの後遺症は、視力低下、手足の麻痺、けいれん、しびれ、痛みだけでなく、疲労感、認知機能障害、排尿障害など、人によって様々です。
これらの症状は、再発を繰り返すことで蓄積され、日常生活や仕事、社会参加に大きな影響を与えることがあります。
例えば、視力障害により運転ができなくなったり、麻痺によって歩行が困難になったり、排尿障害により外出を控えざるを得ないといったケースも少なくありません。
視神経脊髄炎(NMOSD)の再発とその症状
前述したように、視神経脊髄炎は再発と寛解を繰り返す病気です。
Wingerchukらの報告では、無治療の場合は3年以内の再発率は78%、5年以内の再発率は90%と高率に再発します。
また、再発を繰り返すたびに症状改善の程度が低くなっていき、発症から期間が経っていくほど後遺症も残りやすくなります。
視神経脊髄炎で起こり得る代表的な症状は下記の通りです。
- 重度の視神経炎
- 3椎体以上に及ぶ比較的長い脊髄病変
- そのほかの神経症状(麻痺・しびれ・膀胱直腸障害など)
視神経脊髄炎はその名の通り、視神経と脊髄に炎症が生じやすい自己免疫性疾患です。
特に、視神経炎が繰り返し再発すると徐々に視力は低下し、最悪の場合失明に至ることも稀ではありません。
また脊髄が障害されることで脳からの運動の指令が身体に届かず、麻痺などの運動障害が出現します。
さらに、身体からの感覚も脳に届かなくなるため、しびれなどの感覚障害も出現します。
再発と後遺症のリスク
NMOSDは再発を繰り返す病気で、再発するたびに新たな後遺症が残る可能性があります。
再発の頻度は患者さんによって異なり、適切な治療を行っても完全に再発を予防することは難しいのが現状です。
しかし、早期に診断し、適切な治療を行うことで、再発の頻度を減らし、後遺症の進行を遅らせることができます。
また、生活習慣の改善やストレス管理なども、再発予防に重要です。
再発予防と長期管理
上記でも記したように、視神経脊髄炎は再発を繰り返すたびに症状の改善度も低下していくため、いかに再発させないかが重要です。
そこで、再発予防のためのセルフケアとしては、身体や心にストレスをかけないことです。
ストレス、過労、感染症などは再発のリスクを増加させる要因として知られています。
その上で、医薬品による適切な治療に努めるべきです。
ステロイドの登場で再発率は劇的に低下しましたが、その一方でステロイドの長期内服に伴う合併症の問題もあり、ステロイドに代わる新薬の開発は長年の課題でした。
最近では、エクリズマブとサトラリズマブという2つの新たな分子標的薬が国内で承認され、どちらの治療薬でも再発リスクを低減させる効果を認めています。
しかし、エクリズマブには髄膜炎菌感染リスクが高まること、サトラリズマブには感染症症状が出にくくなることなど、いくつかの問題点を抱えており、今後も新たな治療薬の開発が待たれるところです。
多発性硬化症との誤診による影響
NMOSDと多発性硬化症は、症状が似ているため、誤診されることがあります。
しかし、両者の治療法は異なり、多発性硬化症の治療薬をNMOSD患者さんに投与すると、症状が悪化する可能性があります。
そのため、正確な診断に基づいた治療を行うことが非常に重要です。
血液検査、MRI検査、髄液検査などの検査を行い、抗AQP4抗体などの特異的な検査で診断を確定することが必要です。
視神経脊髄炎の寿命と再発についてのまとめ
今回の記事では、 視神経脊髄炎の寿命と再発について詳しく解説しました。
視神経脊髄炎は全世界で人口10万人あたり1名が発症すると言われる、非常に稀な病気です。
しかし、一度発症すると自己免疫が原因となるため、根治する術はなく、一生付き合っていく必要があります。
適切な治療を行わなければ、麻痺による歩行障害や視力低下、最悪の場合失明に至る可能性もあり、日常生活に大きな影響を与える病気です。
現状、ステロイドや新たな分子標的薬の登場により再発予防がなされていますが、治療薬にはいくつかの問題点もあるため、新たな治療法が待たれるところです。
一方で、最近では「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって、これまで改善の難しかった視神経炎や脊髄炎に伴う症状の改善が期待されます。
よくあるご質問
- 視神経脊髄炎は完治しますか?
- 結論から言えば、視神経脊髄炎は現状の医療技術を持ってしても完治できない病気です。原因が自己免疫であるため、完全に自己免疫を押さえ込んでしまうと感染症に対する防御力もなくなってしまい、根治が難しいです。
- 視神経脊髄炎の治療方法は?
- 視神経脊髄炎に対して現状行われている治療方法は、急性期におけるステロイドパルス療法や血液浄化療法などです。急性期を脱して、再発予防の際にはステロイド内服や分子標的薬などが主に用いられます。
<参照元>
・難病情報センター|多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13):https://www.nanbyou.or.jp/entry/3807
・MNOSDナビ|NMOSDと診断されたら:https://nmosd-navi.net/diagnosed/prognosis.html
・Pub Med|The clinical course of neuromyelitis optica (Devic’s syndrome):https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10496275/
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