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再生医療とびまん性軸索損傷について

           

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この記事を読んでわかること

再生医療の基本情報がわかる。
びまん性軸索損傷に対する再生医療の研究成果がわかる。
高次脳機能障害に対する再生医療の将来展望がわかる。


中枢神経疾患に対する細胞治療や再生医療の開発が積極的に行われています。
脳梗塞や頭部外傷、パーキンソン病などに対する治験も国内で行われています。
特に幹細胞治療は重要であり、自己複製能と多分化能を持つ幹細胞が利用されています。
特に骨髄由来の間葉系幹細胞は近年応用が進んでおり、脳内の神経細胞再生や保護効果が期待されています。

神経障害に対する再生医療の基礎知識と技術

神経障害に対する再生医療の基礎知識と技術
中枢神経疾患に対する細胞治療や再生医療の開発が進んでいます。
国内では、脳梗塞や頭部外傷、パーキンソン病などに対する治験が進んでいます。
神経障害に対する再生医療としては、幹細胞治療が重要な物となります。
幹細胞とは、自己複製能(自分と同じ能力を持った細胞を複製する能力)と、多分化能(異なる系列の細胞に分化する能力)をもった細胞のことと定義されています。
現在、多くの基礎研究や臨床研究が進められているのは、胚性幹細胞(Embryonic stem cell,ES細胞)、人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell,iPS細胞)、体性幹細胞(間葉系幹細胞、神経幹細胞など)が挙げられます。
その中でも、近年応用が進んでいるのが、骨髄由来の間葉系幹細胞(bone marrow stem cell:BMSC)です。

ES細胞

ES細胞は、胚胎盤期という動物の発生初期段階にできる胚の一部の内細胞塊から作られ、理論上は全ての組織に分化する万能性を有しています。
そして、神経細胞のみならず、心筋細胞や血管内皮細胞、色素細胞、血液細胞などに分化させることが可能です。
一方で、受精卵を材料とする倫理的な問題や、免疫拒絶などの問題もあります。

iPS細胞

iPS細胞は、体細胞に特定の遺伝子(Oct3/4,Sox2,c-Myc,Klf4)を導入(リプログラミング)することで、万能性をもつES細胞と同様の細胞が作成されます。
患者本人の細胞から幹細胞を作り出すことができるという利点があります。
その一方で、iPS細胞のがん化のリスクがあることや細胞培養などに多額のコストや労力、時間がかかることはデメリットとなります。

間葉系幹細胞

間葉系幹細胞は、中胚葉系組織(間葉)に由来する体性幹細胞で、骨髄や脂肪組織、臍帯組織、歯髄などから採取されます。
そして、間葉系に属する細胞(骨、血管、筋肉、軟骨)への分化能を持ちますが、本来中胚葉由来ではない神経系細胞(外胚葉)や、肝臓(内胚葉)にも分化可能ということが証明されています。
メリットとして、間葉系幹細胞の採取・培養法は確立されており、患者本人から取得した場合には、免疫拒絶の問題や倫理的な問題が生じないことがあります。
一方、他人から採取した細胞でも、骨髄幹細胞は強い免疫拒絶反応が生じないので、頭蓋内に投与される場合でも免疫抑制剤なしで投与されることもあります。
こうした特徴から、現在脳梗塞に対する幹細胞移植治療としてはMSCの治験が大半を占めています。

幹細胞の作用機序

幹細胞の作用機序は、大きく2つに分けられます。
一つは、分化(differentiation)による直接効果で、2つ目は保護効果(nursing effect)による間接効果です。
分化の効果としては、神経細胞に分化したBMSCが脳内で長い期間生存し、神経細胞のネットワークを再構築することがわかってきています。
元通りに改善しているのかどうかという意見もありますが、神経細胞以外にもMSCは血管内皮などへの分化も確認されており、脳内の環境に応じて柔軟に分化する可能性が示唆されています。
保護効果としては、脳のダメージに対してBMSCから分泌される数々の神経栄養因子(nerve growth factor(NGF)や、hepatocyte growth factor(HGF)、brain-derived neurotrophic factor(BDNF)が保護的に働きかけたり、過剰な炎症反応を抑制することがわかっています。

びまん性軸索損傷に対する再生医療の最新研究

びまん性軸索損傷に対する再生医療の最新研究
びまん性軸索損傷(Diffuse Axonal Injury: DAI)は、外傷性脳損傷の一形態で、急激な加速・減速や回転運動により脳内の神経線維(軸索)が広範囲にわたって損傷される状態を指します。
DAIは、交通事故やスポーツ関連の事故、転倒などによって引き起こされ、意識障害や長期にわたる後遺症を引き起こす可能性があります。
DAIを含む外傷性の脳損傷に対して、さまざまな幹細胞治療の研究が進んでいます。
例えば、損傷した脳組織に幹細胞を補充する神経移植があります。
最近の研究でも、幹細胞移植をすることでヒトの外傷性脳損傷後の神経炎症やその他の神経学的な欠陥を大幅に改善する可能性が示唆されています。
また、脳の物理的な欠損に対して、新たな3D印刷技術の開発・応用も進んでいます。
3D印刷技術を応用することで、より良い神経誘導のための一つの経路を提供する主要なデバイスとなり、神経再生の改善に役立つ可能性があります。
その他にも、胚性幹細胞や星人由来の神経幹細胞、間葉系幹細胞、およびiPS細胞などの研究が進んでいます。

高次脳機能障害における再生医療の将来的な展望

高次脳機能障害とは、外傷や脳卒中によって脳の一部が損傷を受け、思考や記憶、行為、言語、注意などの脳の機能が一部障害を受けてしまった状態のことを指します。
再生医療の中心的なアプローチとして、幹細胞治療が挙げられます。
幹細胞は、特定の条件下でさまざまな細胞に分化する能力を持つため、高次脳機能障害の治療に有望です。
以下は幹細胞治療の最新の進展です。

iPS細胞

iPS細胞は、患者の体細胞から作成され、多能性を持つ幹細胞に変換されます。
これにより、患者自身の細胞を利用して神経細胞に分化させることで、免疫拒絶反応を回避できます。
iPS細胞由来の神経前駆細胞を損傷部位に移植することで、神経再生が促進され、機能回復が期待されています。

MSC

MSCは、骨髄や脂肪組織などから採取され、神経細胞に分化する能力を持ちます。
MSCは、免疫抑制作用もあるため、移植時の拒絶反応を抑える効果も期待されます。
研究では、MSCが神経再生を促進し、高次脳機能障害の改善に寄与することが示されています。

まとめ

今回の記事では、再生医療の基本情報やびまん性軸索損傷に対する再生医療の研究成果、高次脳機能障害に対する再生医療の将来展望について解説しました。
再生医療の中でも、幹細胞治療は研究が進んでいる分野であり、今後の結果にも期待が持てます。
脳卒中や脊髄損傷による神経障害に対して、当院ニューロテックメディカルでは『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』を、ニューロテック®と定義しました。
さらに、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『狙った脳・脊髄の治る力を高める治療』を、リニューロ®と定義しました。
リニューロ®は、同時刺激×神経再生医療®にて『狙った脳・脊髄の治る力を高める治療』です。
また、その治療効果を高めるために骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリ®の併用をお勧めしています。
神経損傷に対する再生医療にご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談くださいね。

よくあるご質問

びまん性軸索損傷は高次脳機能障害と関係あります?
はい、びまん性軸索損傷は高次脳機能障害と密接に関連しています。
脳の組織が広範囲に損傷を受けることにより記憶力、注意力、問題解決能力などの認知機能が著しく低下することがあります。

びまん性脳損傷の後遺症は?
びまん性脳損傷の後遺症には、認知機能の低下、運動機能障害、感情の変動、行動の変化、意識障害などが含まれます。
これらの症状の重さや範囲は、損傷の程度や個人の回復力によって異なります。

<参照元>
・中枢神経疾患に対する再生医療 現状と展望.神経治療.2020;37:386-390.:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/37/3/37_386/_pdf/-char/ja
・Adugna DG, Aragie H, Kibret AA, Belay DG. Therapeutic Application of Stem Cells in the Repair of Traumatic Brain Injury. Stem Cells Cloning. 2022 Jul 13;15:53-61. doi: 10.2147/SCCAA.S369577. PMID: 35859889; PMCID: PMC9289752.:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9289752/
・脳梗塞と脊髄損傷の再生治療:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/suisin/suisin_dai18/siryou6.pdf
・高次脳機能障害 障害特性|ハートシティ東京:https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/tokyoheart/shougai/koujinou.html
・びまん性軸索損傷とʻ脳外傷による高次脳機能障害ʼの特徴.高次脳機能研究.2015;35(3):265-270.:https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/35/3/35_265/_pdf/-char/ja
・びまん性軸索損傷 – MSDマニュアル家庭版:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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