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脳出血退院後における性行為について

           

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この記事を読んでわかること

脳出血後の性行為について
脳出血後の性行為は危険?


脳出血による後遺症は麻痺や痺れのみならず、しばしば性機能にも障害を及ぼす事が報告されています。
また性行為そのものが心筋梗塞や脳卒中を引き起こすきっかけになることもあり、脳出血退院後の性行為に対する恐怖や不安を抱く方も少なくありません。
そこ今回は、脳出血後の性行為の可否について医学的にわかりやすく解説していきます。

脳出血後の性行為について

脳出血とは
脳出血とは脳の血管がなんらかの原因で破綻し、その結果頭蓋内で出血を起こし部位に応じて様々な神経症状を来す疾患です。
外傷などによる出血を除けば、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病に伴う動脈硬化が進展した状態に血圧の変動が加わることで血管が破綻することが主な原因だと考えられています。
出血部位に応じて様々な神経症状が出現し、その症状は主に麻痺などの運動障害、しびれなどの感覚障害嚥下機能障害、認知などに関わる高次機能障害などが挙げられます。
また中には後遺症の1つとして性機能障害に悩む患者も少なくありません。
なぜ脳出血後に性機能障害が出現するのでしょうか?

性交渉の頻度低下

最初の原因として性交渉の頻度低下が挙げられます。
脳出血を発症した多くの方は、退院後に麻痺という後遺症と付き合って生活を営む必要があります。
麻痺の程度にもよりますが、発症前と同じレベルの運動機能を保てなくなった場合、性交渉が困難になり頻度が低下してしまうのです。
しかし、実際には麻痺と性機能障害の関連を結論づける様な研究はほとんど行われていません。
そもそも脳出血の発症する年齢は性欲が減退する年齢層でもあるため、一元的な評価は難しいと言えます。
そのため、麻痺は性欲減退のあくまで1つの要因として考えられます。

抑うつ気分

脳血管障害の後遺症の1つに、抑うつ気分が挙げられます。
これは脳卒中後うつ病と言われ、うつ病と同様に様々な精神症状を来す後遺症です。
中には性欲の減退も含まれ、性交渉の頻度低下に繋がる可能性があります。

再発の恐怖

脳出血を始めとする脳血管障害や心筋梗塞は、性行為そのもので発症する可能性があります。
例えば心筋梗塞であれば、性行為に伴う血圧の変動や酸素需要の増大に伴い心筋が酸素不足に陥り発症する可能性があるのです。
脳出血でも同様で、もともと脳の血管が脆弱になっている状態で激しい運動を行えば誰でも血圧の変動に伴い脳出血を起こす可能性があります。
一度脳出血になった方の中には、生活習慣が改善されていて問題無い方でも再発の恐怖でなかなか性行為を営む事ができなくなる人も少なくありません。
これらの事からも、性機能障害の原因は客観的に計測された運動機能障害によるものより、むしろ自分の能力に対する精神的不安の方が強いと考えられます。

脳出血後の性行為は危険?

上記の様に、性機能障害が出る主な理由は精神的不安や抑うつが大きいと考えられる中で、果たして性行為は危険な行為なのでしょうか?
心筋梗塞を例にあげれば、2020年9月にはテルアビブ大学(イスラエル)のYariv Gerber氏らが発表した研究結果では、心筋梗塞を発症してから数カ月以内に性行為を再開することは、むしろ生存期間の延長に繋がる可能性があると報告されました。
これは健康上問題ない患者、つまりある程度の運動負荷に耐えられる予備能力を持った患者であれば、性行為に対する恐怖で性行為を控えるよりも、むしろ性行為を早期に再開し精力的な生活を送る方が健康的な生活習慣に繋がり得るという内容でした。
これは医学的観点から見れば、脳出血後の患者にも同様の事が言えると筆者は考えます。
脳出血後の再出血は血圧の変動がリスクファクターである事は周知ですが、規則正しい食事や適切な負荷の運動はむしろ再発予防になります。
またパートナーとの性行為はそれ以外にも副次的な効果があります。
性行為はパートナーとの関係強化に繋がり、より良いサポートを受けやすくなれば脳卒中からの回復にも役立つ可能性があるのです。
もちろん患者の状態次第ですが、適切な負荷の範囲内であれば性行為は問題ない、むしろ身体的にも精神的にもより健康的な生活を営めると考えられます。

まとめ

今回は脳出血後の性行為について解説しました。
患者の性行為の話題を積極的に取り扱う研究は実に乏しく、実際に話題にあげて取り扱う難しさがあるのも事実です。
しかし、患者目線になって見れば性行為が重要なテーマである事は間違いありません。
脳出血の後遺症は身体的な機能障害のみならず、自信喪失や恐怖などの精神的負担を伴う可能性が高いです。
また、神経細胞は一度損傷するとなかなか回復が難しい点も、患者にとって精神的な負担になっています。
しかし、近年では損傷した神経細胞を再生する、再生医療の発達が目覚ましいです。
自身の幹細胞を抽出、増幅し体に戻すことで、幹細胞が神経に定着して死んだ脳細胞の代わりとなり再び機能が甦る可能性があるのです。
再生医療により脳出血による後遺症を少しでも軽減できる可能性があり、性機能障害にも良い影響を与える可能性が期待できます。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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