この記事を読んでわかること
パーキンソン病で転倒が増える理由
リハビリテーションでの転倒予防
自宅の環境調整と転倒を防ぐ工夫
パーキンソン病を発症すると身体の動きが制限される様々な症状が出現します。
中でも足が前に出にくくなるすくみ足やふらついた時にバランスを保てない姿勢反射障害などの症状が出現すると、転倒対策が必須になります。
この記事では、パーキンソン病になると転倒が増えてしまう理由とその対応策について解説します。
パーキンソン病で転倒のリスクが上がる理由

パーキンソン病を発症すると様々な身体の動きに関わる症状が出現します。
特に転倒につながる症状は、すくみ足・突進歩行、姿勢反射障害、ウェアリングオフ現象などがあります。
歩く時に転倒につながるすくみ足と突進歩行
パーキンソン病でよく起こる歩行障害はいくつかのパターンがあり、すくみ足と突進現象が特によく見られます。(パーキンソン病のリハビリテーション|J -stage)
すくみ足とは歩こうとした際に上手く足が出せず、歩けない状態のことです。
特に歩行開始時、方向を転換する時、目的地に近づいた時、狭いところに入った時などに起こりやすいですが、何もない場合でも出現することもあります。
すくみ足があると歩こうとした際に足が出ず、前方に転倒するリスクが上がります。
突進現象は身体が前に傾いた状態で、歩くスピードがどんどん上がってしまう歩行を指します。
パーキンソン病では身体が前に傾いた姿勢になりやすく、立っている時は意識的に重心を後方に調整しています。
しかし、歩く時は前方に重心を移動させる必要があるため、動作を始めると過度に重心が前に移り勢いが付きすぎることでスピードが上がってしまいます。
すくみ足も突進現象もどちらも歩行時に転倒につながってしまう危険な歩行のため、対策が必要です。
ふらついた時にバランスを立て直せない姿勢反射障害
パーキンソン病が進行するとふらついた時にバランスを保つことができなくなる姿勢反射障害が出現します。
通常であればふらついた際に足を踏み替えたり、身体を反ることで転倒しないようにバランスを保つ反射が働きます。
しかし、パーキンソン病が進行するとこれらの反射が出現せず、バランスが保てないため転倒につながることがあります。
特に方向転換時などはふらつきやすいことが多く、注意が必要です。
薬の効き目に波があるウェアリングオフ現象
パーキンソン病は進行度によって症状や障害の程度が大きく変わる疾患です。(神経難病理学療法ガイドライン|理学療法ガイドライン第2版)
薬剤を使用した治療を開始して数年間は薬がよく効き症状が安定しやすいですが、長期間の内服治療を継続するとウェアリングオフ現象という病状の変動が起こります。
ウェアリングオフ現象は薬を飲んでからしばらくすると、薬の血中濃度の低下とともにパーキンソン病の症状が出現することをいいます。
経過が長くなると多くのパーキンソン病の患者にウェアリングオフ現象が見られます。
ウェアリングオフ現象が出現している間は上述のすくみ足や突進現象、姿勢反射障害が強く現れることがあり、細心の注意が必要になります。
リハビリテーションで行うパーキンソン病の転倒対策

パーキンソン病の転倒対策には理学療法などのリハビリテーションを行うことが重要です。
理学療法はストレッチや筋力トレーニング、バランス練習、動作練習などを組み合わせて行います。
身体の機能を改善するストレッチとバランス練習
ストレッチは硬くなりやすいパーキンソン病の方の関節を柔らかくして、動作を行いやすくすることができます。
バランス練習は姿勢反射障害が出現するパーキンソン病の方に対するリハビリとして特に重要です。
立っている状態でバランスを保つ練習や周りから刺激を入れた時にバランスを保つ練習などを行い、日常生活でのふらつきの軽減を目指して行います。
パーキンソン病特有の転倒対策を行う動作練習
動作練習ではパーキンソン病の方特有の動作方法を練習します。
すくみ足がある方は目標を跨ぐように歩くと足が出やすくスムーズに歩くことができます。
また、メトロノームや理学療法士が「1・2・1・2」と声かけをすることで足が出やすくなるため、生活の中でも声を出しながら歩くことを意識するように練習します。(パーキンソン病のリハビリテーション−歩行障害とバランス障害に対する運動療法−|保健医療学雑誌)
姿勢反射障害に対しては素早く方向転換を行ってしまうと出現しやすいため、大きく回るなどの対策を身につけるための訓練を行います。
このようにパーキンソン病のリハビリは様々な運動を組合せて行います。
転倒しにくい住環境の調整と生活の工夫
パーキンソン病の方の転倒を防ぐためには住環境を工夫することも重要です。
転倒を防ぐ自宅内の環境調整
転倒に直結するすくみ足は狭い場所や方向転換を行う際に起こりやすいです。
そのため、家の中の廊下や階段の踊り場などの狭い場所や方向転換を行う場所にはあらかじめ踏み越えるための線を引いておくことで、転倒のリスクを減らすことができます。
他にもスマートフォンのメトロノームなどのアプリを使用し、リズム刺激を聞ける状況を作っておくと歩行が行いやすくなります。
ウェアリングオフに対する生活のリズム
ウェアリングオフ現象に対して、どの時間に薬の効果が減ってしまうかを事前に確認しておくことも大切な対策です。
ウェアリングオフ現象が出にくい内服後などに入浴や家事などの活動を行うことで転倒を防ぐことができます。
普段の生活でも工夫を行うことで、転倒のリスクを減らしましょう。
まとめ
この記事ではパーキンソン病の転倒対策について解説しました。
パーキンソン病ではすくみ足、姿勢反射障害、ウェアリングオフ現象などの症状が転倒のリスクを高めます。
リハビリテーションは身体の機能を改善させ、動作を定着させることを目標に行います。
生活の環境を工夫することで転倒のリスクを下げ、安全に生活を行うことができます。
パーキンソン病で損傷した神経の治療は確立されていませんが、再生医療にはその可能性があります。
今後、神経再生医療×リハビリテーションの治療の研究は進んでいきます。
私たちのグループは神経障害は治るを当たり前にする取り組みを『ニューロテック®』と定義しました。
当院では、リハビリテーションによる同時刺激×神経再生医療を行う『リニューロ®』という狙った脳・脊髄の治る力を高める治療を行っていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご連絡をお願いします。
よくあるご質問
- 靴を選ぶときのポイントはありますか?
- 実は靴底が滑りにくい靴は、パーキンソン病の方には逆効果になることがあります。
すり足歩行になりやすいため、靴底のゴムが引っかかって前方に転倒する原因になるからです。
つま先が少し反り上がっていて、適度に滑りの良い靴を選ぶのがポイントです。
- 杖や歩行器はどのようなものがおすすめですか?
- 一本杖は突くタイミングを合わせるのが難しいため、あまりおすすめしません。
すくみ足や突進歩行がある場合は、前腕を乗せてしっかり体重を預けられる歩行器や、車輪の回転にブレーキをかけられて突進を防げるタイプの手押し車が安全でおすすめです。
<参照元>
(1)パーキンソン病のリハビリテーション|J -stage 久永欣哉 Jpn J Rehabil Med 2012 ; 49 : 738.745https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/49/10/49_738/_pdf
(2)神経難病理学療法ガイドライン|理学療法ガイドライン第2版https://cms.jspt.or.jp/upload/jspt/obj/files/guideline/2nd%20edition/p131-217_03.pdf
(3)パーキンソン病のリハビリテーション−歩行障害とバランス障害に対する運動療法−|保健医療学雑誌 岡本昌幸ら JAHS 5 (2): 95-101, 2014https://www.s-ahs.org/jahs/JAHS_Vol5%282%29_004.pdf













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