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脊髄損傷後に起こる立ちくらみとその対策

           

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この記事を読んでわかること

脊髄損傷後に立ちくらみ(起立性低血圧)が起きやすい理由
病院で行う起立性低血圧に対する治療
日常から行う起立性低血圧の対策


脊髄損傷を受傷すると自律神経障害が出現し、症状として立ちくらみがみられることがあります。
日常生活の中で立ちくらみが出現すると、ふらつきがあるだけでなく最悪の場合は失神してしまうことがあるため、治療と対策を行うことが必要です。
この記事では脊髄損傷後に起こる立ちくらみとその対策について解説します。

脊髄損傷で起こる立ちくらみのメカニズム

寝起きで頭痛に顔をゆがめる男性
脊髄損傷を受傷すると、自律神経と呼ばれる体の状態を調整する神経が障害を受ける場合があります。

特に首や胸の上の高さにある脊髄を損傷すると自律神経の障害は起こりやすいです。
自律神経の障害の症状の中でも、血圧が下がることによって起こる立ちくらみ(起立性低血圧)が出現すると、生活に大きな影響があります。

脊髄損傷と起立性低血圧の関係性

自律神経の1つである交感神経は背骨の中にある脊髄の神経の一部です。
脊髄損傷によって交感神経がダメージを受けると身体に様々な症状が現れます。
交感神経が障害された際の症状として、便秘や尿が出なくなる・体温調節が上手くできなくなるなどがあり、その中の一つとして血圧を上げることが難しくなる症状があります。
そのため、脊髄損傷を受傷すると交感神経が障害され、血圧が下がりやすくなります。
また脊髄損傷を発症した後、ベッドで寝ている時間が長くなってしまうと廃用症候群と呼ばれる全身の機能低下が起きます。
廃用症候群は筋力低下などの様々な症状がありますが、症状の中に起立性低血圧があります。
ベッドで寝ている時間が長くなると交感神経の反応が弱くなり、姿勢を変えた際に血圧が下がる可能性が高くなります。
さらに脚の筋力が低下することで、重力によって足へ降りてきた血液を十分に心臓に送り返すことができなくなります。
このように、脊髄損傷そのものの障害としてだけでなく、様々な要因があるため起立性低血圧は出現しやすくなってしまいます。

起立性低血圧の症状と生活への影響

起立性低血圧とは寝ている状態や座っている状態から立ち上がった際などに、めまいや失神などの症状が出現する状態です。
起立性低血圧が出現すると、脳への血流が低下するため倦怠感や疲労感・ふらつき・めまい・目の前が暗くなる感覚などが出現します。

症状は主に姿勢を変えた場面で出現することが多いですが、長い時間座っていたり、立っていたりすると現れることがあります。
血圧が下がる症状が強ければ、起き上がって活動すること自体が制限されます。
また、大きな血圧低下がなくても一時的にめまいを感じて、仕事や勉強などを中断しなければならないこともあります。
そのため、起立性低血圧があると日常生活に支障を来たしてしまうことがあり、対策が必要です。

病院で行う起立性低血圧に対する治療

脊髄損傷における起立性低血圧は受傷してすぐの急性期でよく見られます。
そのため、急性期では起立性低血圧を予防・治療するために早期からリハビリテーションを行います。
リハビリテーションは血圧が下がっていないかを確認しながら段階的に進めます。
受傷してすぐはベッドを上げて徐々に座る練習から開始し、血圧が下がらないかを見ながら、車椅子に乗車します。
同じ座る姿勢でも脚をベッドから下ろすと血圧は下がりやすくなるため、注意が必要です。
起立性低血圧の程度によっては、傾斜台という器具を用いて治療を行うことがあります。
傾斜台はベッドに寝ている状態から台が傾いて立つ姿勢を取ることができ、安全に治療を行うことができます。

車椅子で座ることに慣れてくると、ベッドで寝ている時間を短くするためにリハビリ時間以外でも車椅子で過ごします。
脚が動く方はスクワットなどの筋力トレーニングや歩行練習を積極的に行います。
リハビリをしてもなかなか血圧が改善しない場合は、弾性包帯で足を圧迫して心臓へ血液を戻しやすくしたり、腹帯を使用することも検討します。
また、点滴を使用して身体の中の水の量を増やすことも起立性低血圧の対策になります。
入院してすぐのリハビリテーションは起立性低血圧の治療から開始し、症状が落ち着けば病棟でも起立性低血圧の対策としてベッドから離れる時間を長くすることが重要です。

生活での起立性低血圧への対策

ソファに座り水の入ったペットボトルを持つ男性
病院で治療を行った後でも脊髄損傷の方は起立性低血圧が出現しやすい状況にあります。
特に脱水になっている時や車椅子に長時間座っている時などはリスクが高くなります。
そのため、生活の中で起立性低血圧への対策を行うことが重要です。
生活の中で行える予防方法は、意識して水分を取ることや腹帯・弾性ストッキングを使用することが挙げられます。
水分を取ることで脱水を予防し、心臓に戻る血液の量を確保することで血圧の低下を防ぎます。
腹帯や弾性ストッキングは、内臓や足に血液が溜まってしまうことを防いで血液を心臓に戻しやすくするために使用します。
また、対策を行っていても起立性低血圧は出現することがあるため、起きてしまった際の対応方法を知っておくことも大切です。
起立性低血圧が出現した時は、ベッドに寝転ぶことができる場合はベッドに戻ることが最も効果的な対応策です。
外出時などでベッドに寝ることが難しい場合は、車椅子が背もたれを倒せるタイプなら背もたれを倒す、そうでなければ机に伏せた姿勢を取る対応を行います。
脚を動かすことができる場合は、足首を上下に動かすなど脚の筋肉を動かして足に溜まった血液を心臓に戻しましょう。
日常生活では起立性低血圧が出現しにくい工夫を行うことと、症状が出現した時の対応方法を知っておくことで安心して過ごすことができます。

まとめ

この記事では脊髄損傷後に起こる立ちくらみについて解説しました。
脊髄損傷を受傷後は立ちくらみ(起立性低血圧)が出現しやすくなります。
病院ではまずリハビリテーションなどの起立性低血圧に対する治療を行います。
日常生活では起立性低血圧が出現しにくい対策や症状が現れた時の対応方法を知っておくことが重要です。
脊髄損傷で損傷した神経の治療は確立されていませんが、再生医療にはその可能性があります。
今後、神経再生医療×リハビリテーションの治療の研究は進んでいきます。
私たちのグループは神経障害は治るを当たり前にする取り組みを『ニューロテック®』と定義しました。
当院では、リハビリテーションによる同時刺激×神経再生医療を行う『リニューロ®』という狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療を行っていますので、ご興味のある方はぜひ一度ご連絡をお願いします。

よくあるご質問

夏場になると立ちくらみが出やすい気がするのですが、季節は関係ありますか?
季節は立ちくらみに関係します。
夏場は体温を下げるために血管が広がりやすくなる上、汗をかいて体内の水分が減るため、血圧が下がりやすくなります。
夏は意識的に水分と塩分を補給し、涼しい環境で生活することが立ちくらみ対策の要になります。
生活の中で特に気をつけた方がいい場面はありますか?
生活の中でも特に排便コントロールを行う際に注意が必要です。
便を排出する時に強くいきむと、胸の中の圧力が高まって心臓へ血液が戻りにくくなり、血圧が急激に低下する現象(バルサルバ効果)が起こりやすいため注意が必要です。

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    <参照元>
    1:脊髄損傷にともなう自律神経の病態と回路再建|J-stage 上野将紀 自律神経 60 巻 3 号 2023 年:https://www.jstage.jst.go.jp/article/ans/60/3/60_110/_pdf/-char/ja
    2:起立性低血圧|J-stage 河野 律子ら 昭和医会誌 第71巻 第6号 523-529,2011:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsma/71/6/71_523/_pdf
    3:脊髄損傷者に対するリハビリテーション|J-stage 田島文博ら 脊髄外科 vol.30 (1) 2016:https://www.jstage.jst.go.jp/article/spinalsurg/30/1/30_58/_pdf/-char/ja

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    PROFILEこの記事の監修
    貴宝院 永稔
    貴宝院 永稔 医師
    (大阪医科薬科大学卒業)
    • 脳梗塞・脊髄損傷クリニック 総院長
    • 日本リハビリテーション医学会認定専門医
    • 日本リハビリテーション医学会認定指導医
    • 日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
    • ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

    私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
    リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
    このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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