この記事を読んでわかること
アルコールが脳に及ぼす短期的な影響がわかる。
アルコールが脳に及ぼす長期的な影響がわかる。
適切な飲酒量がわかる。
アルコールは気分を高揚させるなどの薬理作用をもち、新年会や忘年会ではつい羽目を外して過剰に摂取してしまう方も少なくないでしょう。
しかし、短期的・長期的に見て脳にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られているため、注意が必要です。
この記事では、アルコールのさまざまな悪影響や適切な飲酒量・飲酒方法を紹介します。
アルコールが短期的に脳に与える影響

これからの時期、クリスマスや忘年会、新年会とたくさんのイベントが控えていますが、この時期に注意しないといけないのがアルコールの過剰摂取です。
アルコールの主成分であるエタノールは、体内に吸収されたのち、脳内で神経伝達物質の機能に下記のような影響を及ぼします。
- 興奮を抑制するGABAの働きを強める
- 興奮を刺激するグルタミン酸の働きを抑える
以上の2つの作用によって、脳のさまざまな機能にブレーキがかけられてしまい、理性を司る大脳新皮質の機能低下や、記憶を司る海馬の機能低下、さらには本能や感情を司る大脳辺縁系の機能亢進などが生じます。
さらに、交感神経系が活性化されることで身体的症状も伴い、アルコールが短期的に身体や脳に与える影響は主に下記のとおりです。
- 陶酔感・気分高揚
- 血管拡張による発赤
- 思考力や集中力の低下
- 記憶力低下
- 運動機能の低下
- 呼吸回数や心拍数の増加
特に、運動機能の低下や記憶力の低下はかなりの量のアルコールを摂取しないと生じるような症状ではなく、これを超えてアルコールを摂取すると急性アルコール中毒に至る可能性があるため、注意が必要です。
急性アルコール中毒は「アルコール飲料の摂取により生体が精神的・身体的影響を受け、主として一過性に意識障害を生じるものであり、通常は酩酊と称されるものである」と定義されます。
特に若年女性や高齢者で生じやすく、意識障害・嘔吐・便失禁や尿失禁などを認め、最終的には呼吸停止による低酸素脳症や死に至ります。
以上のことからも、自発的な少量の飲酒ならまだしも、多量摂取や強制的な飲酒は絶対に控えるべきです。
アルコールが長期的に脳に与える影響
ここまでアルコールの短期的な影響を紹介してきましたが、アルコールには麻薬や覚醒剤と同じくらい強力な依存性があるため、習慣的に飲み続けてしまう方も少なくありません。
長期的な飲酒は脳や全身に下記のような悪影響を及ぼします。
- アルコール依存の形成
- 膵臓や肝臓における臓器障害
- 主に消化管のがん
- うつ
- 認知症
- ウェルニッケ脳症やコルサコフ症候群
アルコールは耐性・精神依存・身体依存全てが形成されてしまう薬物です。
耐性がつけばお酒を飲んでも酔いづらくなり、徐々に飲酒量が増加しやすくなります。
さらに、飲酒しないと振戦や動悸、不眠などの身体症状や、アルコールに対する強い渇望や心理的欲求など、精神症状を認めるようになります。
また、アルコールは口や食道、胃、腸を通過し、体内に吸収されたのちに、肝臓で代謝されるため、過剰な飲酒を行うとこれらの臓器に負荷がかかり、食道がんや肝臓がん、膵臓がんなど発がんリスクを高めることが知られているため、注意が必要です。
他にも、アルコールは脳細胞を萎縮させることが知られており、感情や情動を主に司る前頭葉が萎縮することで、長期的にうつ病や気分障害などの精神症状をきたすことも知られています。
また、アルコールは肝臓で代謝される際、大量のビタミンB1を消費するため、長期的な飲酒によってビタミンB1が不足してしまいます。
ビタミンB1の欠乏は脳にも影響を及ぼし、脳幹部での微小出血に伴う眼振、眼球運動障害、意識障害、ふらつきなどの症状を引き起こすため、注意が必要です。
これらの症状をきたす場合、ウェルニッケ脳症と呼ばれ、さらにこの状態が長期化すると記名力低下、認知症、作話などの症状を認めるコルサコフ症候群に移行します。
コルサコフ症候群に至ると治療は困難となるため、早期発見・早期治療が重要です。
推奨されるアルコール摂取量とは

では具体的に、どれくらいのアルコール摂取量が推奨されるのでしょうか?
これまで推奨されていた飲酒量は、1日平均で純アルコール約20g程度であり、ビールのロング缶1本、もしくは日本酒1合に相当します。
しかし、適切な飲酒量は年齢・性別・体質によっても異なることから、厚生労働省は2024年に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を新たに公表し、これまでのように適切な飲酒量を定めるのではなく、「少なければ少ないほどよい」と変更しています。
また、健康被害から身を守るため、下記のような飲酒方法も推奨しています。
- 自身の飲酒状況を把握する
- あらかじめ飲酒量を決めて飲む
- 飲酒前〜飲酒中に食事も摂る
- 水や炭酸水を一緒に飲む
- 意識的に休肝日を作る
まとめ
アルコールは心身をリラックスさせる効果が期待でき、友人や会社の同僚とのコミュニケーションにも役立つ一方、さまざまな短期的・長期的リスクを伴うため、過剰摂取には注意が必要です。
特に、ウェルニッケ・コルサコフ症候群や認知症の発症、さらには脳梗塞や脳出血の発症リスクを高めることも知られており、これらの疾患も一度発症してしまうと何らかの後遺症を残す可能性があります。
後遺症に対する治療は現状困難であることから、発症する前から、適切な飲酒量・飲酒方法を実践することが重要です。
一方で、近年では、神経障害が「治る」を当たり前にする取り組みとして注目されている「ニューロテック®」という考え方があります。
これは、脳卒中や脊髄損傷に対して「狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療」再生医療「リニューロ®」を軸とするアプローチで、骨髄由来間葉系幹細胞や神経再生リハビリ®を組み合わせた治療法です。
アルコールによる神経障害に対しても、今後このような先進的な治療法が希望となる可能性があります。
回復への選択肢を広げるためにも、医療機関と連携しながら一人ひとりに合った支援を継続することが大切です。
よくあるご質問
- アルコールで萎縮した脳は元に戻りますか?
- 結論から言えば、長期のアルコール摂取で萎縮した脳が元に戻ることは困難です。
一度萎縮して失われた神経細胞は現状の医療では再生できないため、そうなる前に適切な飲酒量・飲酒方法を守ることが重要です。
- 断酒することは健康に効果がありますか?
- 断酒することは健康において非常に効果的です。
数週間〜数ヶ月の断酒で認知機能や抑うつ・不安などの精神症状は大幅に改善される可能性があります。
ただし、突然の断酒は離脱症状をきたす可能性もあるため、医師の指導のもとで行うべきです。
<参照元>
(1):アルコールによる健康被害 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/alcohol-summaries/a-01
(2):20歳未満の者がお酒を飲んではいけない5つの理由 国税庁:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/miseinen/04.pdf
(3):ウェルニッケ・コルサコフ症候群 健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/alcohol/ya-052
(4):飲酒 大阪がん循環器病予防センター:https://www.osaka-ganjun.jp/health/lifestyle/drinking.html
(5):飲酒 大阪がん循環器病予防センター:https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf
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