この記事を読んでわかること
中枢神経系血管炎の分類や定義がわかる
中枢神経系血管炎と脳梗塞の関係がわかる
中枢神経系血管炎の症状がわかる
中枢神経系血管炎とは、脳を栄養する血管に何らかの原因で炎症が生じ、さまざまな神経症状をきたす難治性疾患です。
原因や血管のサイズによって分類されますが、どの分類であっても症状が多彩で、しばしば診断に難渋するのが特徴的です。
この記事では、中枢神経系血管炎の定義や分類、脳梗塞との関係とその症状を解説します。
中枢神経系血管炎の定義と分類
中枢神経系血管炎とは、その名の通り中枢神経系に限局して生じる血管炎のことで、症状が極めて多彩、発症が稀、検査所見が非特異的などの理由から診断に難渋することの多い病気です。
2012年に実施されたChapel Hill Consensus Conference 2012において、中枢神経系血管炎の分類が定義し直され、その原因や血管のサイズによって新たに下記のように分類されました。
血管のサイズ | 具体的な病気 | |
---|---|---|
原発性中枢神経系血管炎 | 大径血管 | 高安病 巨細胞性血管炎 |
中径血管 | 結節性多発動脈炎 川崎病 |
|
小径血管 | 多発血管炎性肉芽腫症 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 顕微鏡的血管炎 IgA血管炎 |
|
その他 | ベーチェット病 | |
二次性中枢神経系血管炎 | – | 全身性エリテマトーデス シェーグレン症候群 感染症 悪性腫瘍 薬剤性 |
なお、脳の生検によって採取できた検体を調べ、神経病理学的所見によって下記のようにも分類されます。
- 肉芽腫性血管炎:最も多いタイプで、単核球と多核巨細胞による肉芽腫形成あり
- リンパ球性血管炎:小児に最も多いタイプで、リンパ球が浸潤
- 壊死性血管炎:最も少ないタイプで、血管壁にフィブリノイド壊死を認める
脳梗塞を引き起こすメカニズムとそのリスク要因
中枢神経系血管炎では脳梗塞の併発リスクが高く、特に高安病や巨細胞性血管炎などの大径血管炎では発症しやすいです。
実際に、高安病では15〜24%、巨細胞性動脈炎では2〜20%に脳梗塞、もしくはTIAを発症することが知られており、そのリスクは決して低くありません。
中枢神経系血管炎で脳梗塞を併発するメカニズムとしては、炎症に伴う下記のような反応が挙げられます。
- 炎症に伴う活性酸素の産生
- 血管内皮細胞の障害に伴うリンパ球や単核球の浸潤
- 血管壁の肥厚とそれに伴う血管内腔の狭小化
- 炎症性物質による血小板活性化や血液凝固因子放出による血栓形成
上記のような反応によって血管内腔は狭小化しやすく、また血栓も形成されやすくなるため、脳梗塞の発症リスクは増大します。
加えて、血管炎とは別に下記のような脳梗塞のリスクを元々有している場合、よりリスクは高まります。
- 高血圧
- 糖尿病
- 高脂血症
- 喫煙
- 肥満
特に、高安病や巨細胞性血管炎などの大径血管炎では脳梗塞を発症すると、梗塞範囲も大きくなり、神経学的後遺症や症状も重篤化しやすくなるため、上記のようなリスク要因は日常生活から回避することが肝要です。
代表的な症状と早期発見の重要性
中枢神経系血管炎の代表的な症状は、主に下記の通りです。
- 亜急性に出現する頭痛(約60%)
- 緩徐に進行する認知機能障害
- 片麻痺
- 失語
- 嘔気・嘔吐
- 視野欠損
- 運動失調
- 痙攣
特に頭痛や認知機能障害は発症しやすいですが、障害される部位によって多彩な神経症状を有することが知られています。
また、何らかの疾患に伴う二次性中枢神経系血管炎の場合、原発疾患の症状も同時に生じるため、より診断が困難になる可能性があり、注意が必要です。
元々予後不良な疾患と考えられており、対応が遅れると後遺症が残ったり、最悪の場合死に至る可能性もあるため、早期発見が肝要です。
まとめ
今回の記事では、中枢神経系血管炎の定義や分類、症状や病態について詳しく解説しました。
中枢神経系血管炎は何らかの原因で中枢神経系の血管に炎症が生じ、さまざまな神経症状をきたす疾患です。
血管のサイズや原因、病理的所見によって分類され、それぞれの分類によって症状の特徴や脳梗塞の合併率なども異なります。
特に、大径血管における血管炎である高安病や巨細胞性血管炎では脳梗塞を発症しやすく、対応が遅れれば麻痺やしびれなどの後遺症が残ってしまうため、注意が必要です。
一方で、近年では中枢神経系血管炎の後遺症に対する新たな治療法として、再生医療が非常に注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善困難であった中枢神経系血管炎の後遺症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 血管炎の後遺症は?
- 血管炎によって脳梗塞や脳炎を発症した場合、障害された部位に応じて麻痺やしびれ、認知機能障害、嚥下障害など、さまざまな神経症状が後遺症として残る可能性があります。
- 原発性中枢神経血管炎とは?
- 原発性中枢神経血管炎とは、原因不明に脳血管に限局した血管炎のことで、非常に稀な病気です。
主に、高安病や川崎病、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症などの疾患が挙げられます。
<参照元>
(1):標準的神経治療:中枢神経の血管炎|日本神経治療学会:https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/kekkanen.pdf
(2):全身性血管炎による中枢・末梢神経障害の診断と治療|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/110/9/110_1910/_pdf
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