この記事を読んでわかること
交通事故による脊髄損傷に関する統計がわかる
交通事故による脊髄損傷患者の社会復帰の課題や方法がわかる
交通事故による脊髄損傷後のサポート体制の構築方法がわかる
交通事故によって脊髄損傷を発症すると、身体の運動・感覚機能が大きく障害され、その後の日常生活や社会生活に大きな支障をきたします。
後遺症を負った場合、家族や周囲の介護者の十分な理解とサポートも必要不可欠です。
そこでの記事では、交通事故による脊髄損傷と現実と向き合うその後の生活について詳しく解説します。
交通事故が原因の脊髄損傷の統計と傾向
脊髄は脳と身体を繋ぐ神経組織であり、脳からの運動の指令を身体に、身体からの感覚を脳に伝達しています。
その脊髄が損傷すれば四肢麻痺によって歩行や体位変換など、基本的な日常生活動作にも支障を来すため、注意が必要です。
中でも、交通事故による脊髄損傷は脊髄損傷以外に、多臓器の損傷や出血リスクも高まるため、注意すべきです。
日本せきずい基金の報告によれば、脊髄損傷の原因は全体では平地転倒が1位で38.6%、次いで交通事故が20.1%、低所からの転落が13.7%でした。
交通事故による脊髄損傷は全体で言えば頻度は2位ですが、これは高齢者において平地転倒が非常に多いためであり、年齢別に見ると若年層ほどより交通事故が原因となることが多いです。
特に0〜9歳では交通事故が原因となる確率が60%超と非常に高く、年齢によって原因が異なる点が特徴です。
次に、工藤らの報告によれば1990年〜1992年の調査では交通事故が原因となることが最も多く、次いで転落、平地転倒が主な原因でした。
しかし、2018年の調査では交通事故は平地転倒に次いで2番目の原因となっており、交通事故が原因となる頻度が減少傾向であることがわかります。
事故後のリハビリと社会復帰の課題
交通事故による脊髄損傷後には、四肢麻痺やしびれなどの神経学的後遺症が残り、その程度にもよりますが少なからず歩行や食事、入浴など日常生活のさまざまなシーンで影響が出ます。
そこで、社会復帰や日常生活への復帰については、事故後のリハビリが肝要です。
まず受傷直後の急性期には全身状態の安定化が重要で、循環動態や呼吸状態が安定した後に脊髄損傷の二次被害予防のために必要であれば脊椎の固定術を行います。
ある程度病状が落ち着いたら、体位変換や呼吸訓練、関節が固まらないように関節可動域訓練など、極力早期からリハビリテーションを実施することがその後の予後にとって重要です。
次に、急性期を脱した後は積極的なリハビリテーションを実施します。
例えば、下肢麻痺を認める場合は上肢の筋力維持のための筋力トレーニングを行い、関節が拘縮するとさまざまな動作に支障が出るため、関節可動域訓練も欠かせません。
その上で、社会復帰する上ではリハビリと並行して、社会復帰のために下記のような行動も必要です。
- 復職に関する情報収集
- 復職にむけた健康管理の検討
- 生活リズムの調整
- 作業内容訓練
- 自助具の作成
- 通勤訓練
- 職場関係者との面談
- 職場訪問
- 職場環境調整
一方で、渡邉らの報告によれば脊髄損傷後の復職率は約40%と低く、そのうちの半数は元職に復帰しているものの、残りの半数は配置転換や働き方の変更を余儀なくされており、まだまだ社会復帰における課題は少なくありません。
家族や周囲のサポート体制の構築方法
脊髄損傷後は、医療機関からの医学的なサポートはもちろんのこと、家族や周囲のサポート体制の構築が必要不可欠です。
家の中での日常生活のサポートや、リハビリに関するサポート、復職に関するサポートなど、後遺症を持った状態で一人では困難な活動に対して多方面からのサポートが必要となります。
サポート体制を構築するためには下記のような方法が有効です。
- 家族、周囲の介護者に対して自身の状態や脊髄損傷への理解を深める
- 家族の負担が大きい場合は、外部の専門家(ヘルパーなど)を頼る
- 地域の相談窓口や福祉施設など積極的に利用する
- 精神的負荷が重い場合は、精神科やカウンセラーも積極的に頼る
上記のような方法で、心身をしっかりサポート・ケアしてもらうことが、社会復帰、生活復帰のためには非常に重要です。
まとめ
今回の記事では、交通事故による脊髄損傷と現実と向き合うその後の生活について詳しく解説しました。
脊髄損傷には四肢麻痺などの重篤な後遺症が残り、その後の社会生活や日常生活に大きな支障を与えます。
そのため、家族や外部専門職のサポートが必要不可欠であり、また後遺症改善のためには受傷早期からのリハビリも必要です。
一方で、どんなにリハビリを行っても現状では後遺症を完全に根治するのは困難です。
そこで、近年では脊髄損傷の後遺症に対する新たな治療法として、再生医療が非常に注目されています。
また、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善困難であった脊髄損傷による後遺症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 脊髄損傷は日常生活にどのような影響がありますか?
- 脊髄損傷によって重度の麻痺を負った場合、歩行や移動、体位変換など日常生活の基本動作に支障をきたします。
また、軽度の麻痺であったとしても、細かな動きができなくなることで仕事や社会生活が困難となる可能性が高いです。 - 交通事故による脊髄損傷の後遺障害は?
- 交通事故による脊髄損傷の後遺障害として、四肢麻痺、呼吸筋麻痺、膀胱直腸障害、感覚障害などの神経症状が挙げられます。
自賠責保険ではその障害の程度によって後遺障害等級を1〜14級まで規定しています。
<参照元>
(1):日本脊髄障害医学会による外傷性脊髄損傷の全国調査|日本せきずい基金:https://www.jscf.org/wp-content/uploads/2022/05/Immunesurvey.pdf
(2):日本における完全頸髄損傷の疫学|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/60/12/60_60.1038/_article/-char/ja
(3):脊髄損傷者の復職の現状とその支援|日本職業・災害医学会:http://www.jsomt.jp/journal/pdf/067060467.pdf
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