この記事を読んでわかること
・虫歯が進行することで、脳梗塞のリスクが約40%高くなることがわかる。
・定期的な歯科治療を受けることで、虚血性脳卒中の発生率が低下することがわかる。
・歯周病菌が血管に炎症を引き起こし、動脈硬化や血栓形成を通じて脳梗塞リスクを高めることがわかる。
口腔内の感染や歯周病が脳梗塞のリスクを高めるということについて、意外に思われる方もいるかもしません。
しかし、これらの関連性については科学的な研究結果も多数報告されており、口腔内の細菌は、血管を傷つけることで脳梗塞のリスクを高めてしまう可能性があります。
この記事では、そのメカニズムと対策について、詳しく解説します。
口腔ケアが脳を守る!虫歯と脳梗塞の意外なつながり
脳梗塞は、脳の血管が血栓やアテローム血栓などによって詰まってしまうことにより、脳に必要な血流が途絶え、脳が壊死してしまう病気のことです。
この脳梗塞が虫歯と関連していることは意外かもしれません。
しかし、虫歯と脳梗塞の間には密接な関係があります。
虫歯がある人は脳卒中のリスクが高くなるのです。
Stroke 誌に最近発表されたデータ(2024年10月現在)によると、1つ以上の虫歯がある人は、脳卒中のリスクが約40%高くなることが示されています。
一方で、定期的な歯科治療を受けている人は、一時的な歯科治療を受けている人と比較して、虚血性脳卒中の発生率が約23%低下するということも報告されました。
(Senら、2024)
また、虫歯によって歯が欠けたり、詰め物が入ったりしている方も脳卒中のリスクが高いとされています。
口腔内の健康も、脳卒中との関連があります。
歯肉炎や歯周炎、歯が抜けてしまうことなどの口腔疾患は、脳卒中のリスクを高める可能性があります。
こうした病気が、感染や炎症を引き起こす可能性があります。
すると、血液が固まりやすくなり、脳卒中を引き起こす可能性があります。
口腔内の細菌が血管を詰まらせる!脳梗塞リスクを高めるメカニズム
口腔内の細菌は、血管を損傷して炎症を引き起こすことにより、脳梗塞や虚血性脳卒中のリスクを高める可能性があります。
ここでは、口腔内の細菌が血管を詰まらせてしまい、脳梗塞リスクを高めるメカニズムについて解説します。
虫歯から細菌が脳に移動して動脈を詰まらせる可能性があります。
歯周病による細菌も歯茎の血管を損傷し、口腔細菌が血流に侵入する可能性があります。
また、歯周病による細菌は、心臓や脳を含む全身の血管に炎症を引き起こす可能性があります。
この炎症は、血栓、心臓発作、脳卒中を引き起こす可能性があります。
P. gingivalis や P. endodontalis などの一部の細菌は、内皮細胞に侵入して内皮機能を妨害することがあります。
こうした細菌によって、心血管疾患になりやすくなってしまう可能性があります。
口腔の健康と脳卒中に関わる可能性のある要因は、他にもあります。
研究によると、脳梗塞患者では口腔衛生不良であることが示されています。
また、喫煙、遺伝、医療へのアクセスの悪さ、運動不足はすべて、口腔衛生不良と心血管疾患の両方に関わっている可能性があります。
虫歯が進行することで血管に与える悪影響
虫歯が進行すると、歯の表面だけでなく、歯の内部にある神経や血管にまで細菌が到達します。
この細菌は、歯髄(歯の中心部)を通じて体内に侵入し、全身に悪影響を及ぼす可能性があります。
特に注目されるのは、細菌が血流に乗り、血管内で炎症を引き起こすことです。
炎症が続くと血管の内壁が傷つき、動脈効果のリスクが高まります。
動脈硬化は血管が狭く硬くなる状態で、血流を妨げ、血栓(血の塊)が作られやすくなります。
血栓が形成されると、特に脳や心筋梗塞のリスクが高くなります。
歯周病と脳梗塞リスクの関連性:口腔ケアの重要性
歯周病は、歯を支える歯茎や骨に炎症を引き起こす疾患で、進行すると歯を失う原因となります。
その影響は口腔内にとどまらず、全身に及ぶことが知られています。
特に、歯周病菌が脳梗塞のリスクを高めることが、近年の研究で明らかにされています。
歯周病が進行すると、歯茎から出血しやすくなります。
すると、歯周病菌が出血した部位から血流に入ってしまう可能性があります。
このように、細菌が血管内に入ると、免疫系が反応し、全身に炎症が広がります。
この炎症反応は、血管の内壁を傷つけることがあり、結果として動脈硬化を引き起こすリスクが高まります。
動脈硬化が進むと、血管が狭くなり、血栓ができやすい状態になるため、脳梗塞を発症する確率が上昇します。
また、歯周病は慢性的な炎症状態をもたらすため、全身の血管に継続的な負担をかけます。
この慢性炎症は、心血管疾患全般のリスクを高める要因とされており、特に脳の血管に影響を与えることで脳梗塞のリスクが増大するのです。
このようなリスクを減らすためには、定期的な口腔ケアが不可欠です。
歯磨きやフロスを用いた日々のケアに加え、定期的な歯科検診を受け、早期に歯周病を発見し治療することが重要です。
歯周病を予防することは、全身の健康、特に脳梗塞の予防にもつながるのです。
歯周病菌が全身に及ぼす影響と脳梗塞との関係
虫歯が進行することで、歯周病が悪化することもあります。
これが、さらに血管に対する悪影響を及ぼします。
歯周病菌が血管内に入ると、体内の免疫系が反応して全身的な炎症を引き起こし、動脈硬化や血栓形成のリスクを高める要因となります。
したがって、虫歯を放置することは口腔内の健康の問題だけでなく、心血管系の疾患リスクを増大させることにつながるため、早期の治療が大切です。
まとめ
今回の記事では、口腔内を定期的に保つことで脳梗塞の予防につながるということについて述べました。
万が一脳梗塞になってしまい、後遺症が残った場合には、リハビリテーションが大切になります。
そこで、ニューロテック、脳梗塞脊髄損傷クリニックなどでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
リニューロ®では、同時刺激×神経再生医療®、骨髄由来間葉系幹細胞を用いて狙った脳や脊髄の治る力を高めた上で、神経再生リハビリ®を行うことで神経障害をより軽くすることを目指します。
ご興味のある方は、ぜひ一度当院までご相談くださいね。
よくあるご質問
- 虫歯が脳梗塞を引き起こすのはなぜ?
- 虫歯が進行すると、細菌が血流に入り、血管に炎症を引き起こします。
これが血管の内壁を損傷し、動脈硬化を進行させます。
動脈硬化によって血流が妨げられ、血栓が形成されると、脳梗塞のリスクが高まります。 - 歯周病と脳梗塞とプラークの関係は?
- 歯周病菌が血流に入ると、全身の血管に炎症を引き起こし、プラークの形成を促進します。
プラークは動脈硬化を引き起こし、血栓ができやすくなります。
これにより、脳への血流が遮断され、脳梗塞のリスクが高まります。
<参照元>
Sen S, Logue L, Logue M, Otersen EAL, Mason E, Moss K, Curtis J, Hicklin D, Nichols C, Rosamond WD, Gottesman RF, Beck J. Dental Caries, Race and Incident Ischemic Stroke, Coronary Heart Disease, and Death. Stroke. 2024 Jan;55(1):40-49. doi: 10.1161/STROKEAHA.123.042528. Epub 2023 Nov 29. PMID: 38018831; PMCID: PMC10841981.:
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/STROKEAHA.123.042528
What is the link between stroke risk and dental health?.Valley Creek Dental Care:
https://valleycreekdentalcare.com/blog/what-is-the-relation-between-gum-health-and-strokes
4 fascinating things scientists know about the billions of bacteria in your mouth.:
https://www.jnj.com/innovation/4-things-scientists-know-about-the-bacteria-in-your-mouth
Li X, Kolltveit KM, Tronstad L, Olsen I. Systemic diseases caused by oral infection. Clin Microbiol Rev. 2000 Oct;13(4):547-58. doi: 10.1128/CMR.13.4.547. PMID: 11023956; PMCID: PMC88948.:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC88948/
Shahi S, Farhoudi M, Dizaj SM, Sharifi S, Sadigh-Eteghad S, Goh KW, Ming LC, Dhaliwal JS, Salatin S. The Link between Stroke Risk and Orodental Status-A Comprehensive Review. J Clin Med. 2022 Oct 2;11(19):5854. doi: 10.3390/jcm11195854. PMID: 36233721; PMCID: PMC9572898.:
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9572898/
歯周病が全身に及ぼす影響 日本臨床歯周病学会:
https://www.jacp.net/perio/effect/
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