この記事を読んでわかること
・頚椎症性神経根症で痛みが続く理由がわかる。
・トラマドールやリリカが効かない場合の代替治療法がわかる。
・セルフケアやストレス管理の重要性がわかる。
頚椎症性神経根症は、神経根が圧迫されることによる痛みやしびれといった症状を指します。
この記事では、頚椎症性神経根症の痛みが続く理由や、トラマドールやリリカが効かない場合の代替治療法について、また神経ブロック注射や理学療法、認知行動療法といった他の治療法の効果、そしてセルフケアやストレス管理の重要性についても説明します。
頚椎症性神経根症の痛みが続く理由を理解する
頚椎症性神経根症における痛みが続く理由はいくつかあります。
その中でも最も一般的な原因は、神経根の圧迫が長期間続くことで、慢性的な炎症や神経自体の損傷が生じることです。
頚椎の椎間板が加齢や外傷により変性し、神経根に圧力をかけることで痛みが発生します。
この圧迫が長期間にわたって続くと、神経が過敏になり、痛みの信号が過剰に伝達されるようになります。
これは「中枢感作」と呼ばれる現象で、脳や脊髄が痛みの刺激を強く感じる状態です。
中枢感作が起こると、通常の鎮痛薬では十分に痛みを抑えられなくなり、痛みが持続することがあります。
さらに、頚椎の構造自体が不安定になっている場合、神経根にかかる圧力が時間とともに変動し、症状が悪化することがあります。
特に、悪い姿勢や過剰な動作によって頚椎の不安定性が増すと、痛みが激しくなることがあります。
また、骨棘(こつきょく:骨が変性し、一部が棘のような形になる)や椎間孔狭窄などの構造的な問題が進行することで、神経根への圧迫がさらに強くなる可能性もあります。
心理的要因も痛みの持続に影響を与える重要な要素です。
慢性的な痛みは患者に大きなストレスや不安を引き起こし、これがさらに痛みを悪化させるという悪循環を生み出します。
このような心理的な側面が痛みの感受性を高め、痛みの管理をより難しくすることがあります。
最後に、頚椎症性神経根症の痛みが続く理由として、治療が遅れることで症状が悪化するケースも少なくありません。
早期に適切な治療が行われなかった場合、神経の損傷が進行し、痛みがより慢性化することがあります。
適切な治療が行われないまま痛みが長期化すると、治療が効きにくくなり、症状が持続する傾向にあります。
トラマドールやリリカが効かない場合の他の治療法
頚椎症性神経根症の治療において、トラマドールやリリカ(プレガバリン)は一般的に使用される痛み止めですが、これらが効果を示さない場合や副作用が強くて使用できない場合、他の治療法が検討されます。
ここでは、トラマドールやリリカが効かない場合に推奨されるいくつかの代替治療について詳しく説明します。
1. 神経ブロック注射
神経ブロック注射は、神経根に直接局所麻酔薬やステロイドを注入することで、痛みの信号を遮断する治療法です。
これは、薬物治療が効かない場合や、強い痛みが持続する場合に行われます。
ステロイドは強力な抗炎症作用があり、神経周囲の炎症を抑えることで、神経への圧迫を軽減し、痛みを緩和します。
また、局所麻酔薬は即効性があり、短期間での痛みの軽減が期待されます。
神経ブロックは一時的な緩和を目的とするものですが、痛みを和らげてリハビリテーションや他の治療を進める上で重要な役割を果たします。
2. 理学療法(リハビリテーション)
頚椎症性神経根症の治療には、理学療法が非常に効果的です。
理学療法士の指導の下で行われるストレッチやエクササイズは、首や肩の筋肉の緊張をほぐし、神経への圧迫を減少させるのに役立ちます。
また、姿勢改善や筋力強化のトレーニングは、頚椎の安定性を向上させ、再発のリスクを低減する効果もあります。
特に、痛みが長期にわたって続く患者においては、日常生活の中で負担のかからない姿勢や動作を知っておくことが大切です。
3. 認知行動療法(CBT)
痛みが慢性化すると、心理的な影響も無視できません。
認知行動療法(CBT)は、痛みの管理において有効な治療法の一つです。
CBTは、痛みに対する認知や反応を再評価し、痛みをコントロールするために大切です。
また、ストレスや不安が痛みを悪化させることがあるため、心理的なサポートも並行して行います。
それによって痛みの感受性を低減させ、症状の緩和を図ります。
特に、薬物治療だけでは効果が限定的な場合、CBTの併用が勧められます。
4.電気刺激療法(TENS)
電気刺激療法(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation, TENS)は、皮膚の上から電気パルスを送ることで、神経の痛み信号を遮断し、痛みを軽減する方法です。
TENSは、非侵襲的で副作用も少ないため、薬物治療に代わる補助的な治療法として利用されています。
痛みを和らげるためにできる提案
頚椎症性神経根症による痛みを和らげるためには、いくつかの方法があります。
まず、自宅でできるセルフケアとして、温熱療法や冷却療法が効果的です。
温熱療法は血流を促進し、筋肉の緊張を緩和する効果があります。
一方で、冷却療法は炎症を抑え、痛みを一時的に軽減するのに役立ちます。
また、ストレス管理も重要です。
慢性的な痛みは精神的な負担を増やし、逆に痛みの感受性を高めることがあります。
リラクゼーションや瞑想、軽い運動などでストレスを軽減し、痛みと向き合う精神的な余裕を持つことが大切です。
さらに、バランスの取れた食事や十分な睡眠を確保することも、全体的な健康状態を改善し、痛みの管理に貢献します。
頚椎症性神経根症で薬が効かない時のまとめ
頚椎症性神経根症の痛みが薬物治療で管理できない場合、神経ブロックや理学療法、さらには低侵襲手術などの治療法を検討することが必要です。
また、セルフケアやストレス管理も痛みを和らげるために効果的な手段です。
頚椎症性神経根症は個々の症例に合わせた総合的なアプローチが重要です。
医師と相談しながら、自分に最適な治療法を見つけることが大切です。
当院、脳梗塞脊髄損傷クリニックでは、脳卒中・脊髄損傷を専門として、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しております。
リニューロ®では、同時刺激×神経再生医療®、骨髄由来間葉系幹細胞を用いて狙った脳や脊髄の治る力を高めた上で、神経再生リハビリ®を行うことで神経障害の軽減を目指しています。
頚椎症性神経根症の痛みにお悩みの方も、ぜひ一度当院までお問い合わせくださいね。
よくあるご質問
- 頸椎症性神経根症の痛みを緩和するにはどうしたらいいですか?
- 痛みを緩和するためには、まず神経への圧迫を軽減する治療が重要です。
神経ブロック注射や理学療法が効果的で、筋肉の緊張をほぐし姿勢を改善することが助けになります。
さらに、温熱療法や冷却療法もセルフケアとして痛みの軽減に役立ちます。
ストレス管理も痛みの緩和に有効です。 - 頚椎神経根症に効く薬は?
- 頚椎神経根症には、通常、鎮痛薬や抗炎症薬が使用されます。
具体的には、トラマドールやリリカ(プレガバリン)が一般的に処方されますが、効果が限定的な場合もあります。
その場合は、神経ブロックや理学療法などの他の治療法も検討されます。
<参照元>
・「頚椎症性神経根症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/cervical_radiculopathy.html
・頚椎症性脊髄症診療ガイドライン2020 改訂第3版:https://minds.jcqhc.or.jp/common/wp-content/plugins/pdfjs-viewer-shortcode/pdfjs/web/viewer.php?file=https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00606.pdf&dButton=false&pButton=false&oButton=false&sButton=true#zoom=auto&pagemode=none&_wpnonce=3b871a512b
・疼痛および炎症の治療のためのリハビリテーション – MSD Manuals:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/24-その他のトピック/リハビリテーション/疼痛および炎症の治療のためのリハビリテーション
・中枢神経感作とは何か? 原因不明の様々な症状に立 ち向かう疫学研究から見えてきたこと.日健教誌.2023; 31(1): 14–20.:https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenkokyoiku/31/1/31_310104/_pdf/-char/ja
・慢性疼痛治療ガイドライン:https://www.mhlw.go.jp/content/000350363.pdf
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