サイトカインそしてサイトカイン・ストームとは?免疫反応の二面性 | 再生医療 | ニューロテック・メディカル

サイトカインそしてサイトカイン・ストームとは?免疫反応の二面性

           

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この記事を読んでわかること

サイトカインとは?
サイトカイン・ストームとは
サイトカイン・ストームの治療


サイトカイン・ストームとは、わたしたちの体の免疫系が過剰に反応する状態で、重症化すると死に至ることもあります。
この免疫の過剰反応には、炎症を促進し、他の免疫細胞を活性化するサイトカインの過剰分泌が影響しています。
サイトカイン・ストームは、感染症、自己免疫疾患、免疫療法などが原因で起こります。
重症化すると生命を脅かすこともあります。サイトカインの動きを調整する薬剤が利用されますが、ダメージを受けた組織の修復に再生医療が効果を発揮することが期待されています。

サイトカインの定義と役割

サイトカインは、炎症、感染、外傷などが起こった際、生物の体内における免疫反応における細胞間のコミュニケーションを助ける働きをしており、免疫反応が活発になるよう細胞の動きを刺激しています。
この「サイトカイン」という言葉は、ギリシャ語で「細胞」を意味する「cyto」と「動き」を意味する「kinos」という2つの単語の組み合わせに由来しています。
多くの種類のサイトカインが存在しており、具体的には炎症や感染に対する免疫系の反応を制御する、インターロイキンやインターフェロンなどがあります。
サイトカインの作用を説明するときに、「免疫調節作用」という用語がよく使われます。
サイトカインは、サイトカインが分泌された同じ細胞や近くの他の細胞に影響を与えることもあれば、例えば発熱の場合のように、体全体に影響を及ぼすこともあります。

サイトカイン・ストームとは?過剰な免疫反応の脅威

サイトカイン・ストームのメカニズム

ストーム
免疫系の仕事は、有害な異物から体を守り、健康を維持することです。
しかし、ときに免疫系は体に害を及ぼすことがあります。
サイトカイン・ストームもそのような状態のひとつです。
サイトカイン・ストームは、「ストーム(嵐)」からも想像されますが、免疫系がサイトカインを過剰に放出することで起こる、制御不能な炎症反応のことです。
サイトカイン・ストームでは、サイトカインが過剰に放出されます。
その結果、T細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞など、さまざまな種類の免疫細胞が過剰に活性化されます。
これらの細胞の制御不能な活動は、組織の損傷、臓器の機能不全、そしてときには死につながることが知られています。
この現象は自己免疫疾患や感染症、特に新型コロナウイルスなどで見られます。
1918年のインフルエンザ流行時に若年層の死亡者が多かったのも、このサイトカイン・ストームが原因であったと考えられています。
過剰なサイトカインの分泌は、肺や心臓などの臓器不全を引き起こす可能性があり、治療には免疫抑制剤や抗炎症薬の使用が検討されます。

サイトカイン・ストームの原因となる疾患や状況

サイトカイン・ストームは、わたしたちの体が危険だと感じたものに対し、免疫系が過剰に反応することで起こります。
多くの場合、サイトカイン・ストームは特定の感染症がきっかけとなりますが、ある種の免疫療法や自己免疫疾患によっても引き起こされることがあります。
サイトカイン・ストームに関連する疾患には以下のものがあります。

  • COVID-19
  • ペストの原因となるエルシニア・ペスティス
  • 鳥インフルエンザ
  • デング熱
  • 重症急性呼吸器症候群(SARS)
  • 中東呼吸器症候群(MERS)
  • 関節リウマチやループスなどの自己免疫疾患
  • 移植片対宿主病(graft-versus-host disease)
  • 敗血症

このほか、T細胞移植療法やモノクローナル抗体療法などの免疫療法に伴って発生することもあります。

サイトカイン・ストームの症状と治療法

サイトカイン・ストームの一般的な症状
サイトカインストームは、身体のさまざまな部位で発生し、軽度のものから生命を脅かすものまで、さまざまな症状を起こします。
一般的には、以下のような症状があります。

  • 発熱
  • 寒気
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 疲労感
  • 体の痛み
  • 頭痛
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • 発疹

サイトカイン・ストームが重症化すると、多臓器不全に陥る可能性があります。
重症化したときの症状は、基礎疾患や影響を受ける臓器によって異なります。

サイトカイン・ストームの治療

サイトカイン・ストームは、多臓器不全を引き起こし、死に至る可能性もあります。
サイトカイン・ストームの状態になれば、炎症を促進するサイトカインのレベルを下げるために、サイトカイン阻害薬を使用することがあります。
これらの薬の例は以下の通りです。
また炎症を抑えるために、コルチコステロイド(ステロイド)を使用することもあります。
その他、原因となる疾患や重症度によって、以下のような治療法を加える場合もあります。

  • 酸素療法
  • 抗ウイルス剤
  • 心臓病治療薬
  • 電解質
  • 輸液
  • 腎臓透析

なお、研究者のなかにはサイトカイン・ストームを治療することに否定的な考えを持つ人もいます。
この研究者たちは、サイトカインの活動を活性化する原因となった異物(ウイルスなど)を除去するためには、サイトカイン・ストームは必要であり、免疫系を抑制する薬は逆効果であると考えています。

新型コロナウイルスと再生医療

幹細胞
新型コロナウイルスに感染症し、サイトカイン・ストームを経験すると、肺を中心に体内のさまざまな組織が著しいダメージを受けてしまい、再生不能な状態になってしまいます。
この傷ついた組織の修復に、再生医療を活用することが考えられています。
特に脂肪や骨髄に存在する間葉系幹細胞を培養し、十分に増殖した幹細胞を患者さんに投与する試みがすでに行われています。

サイトカインと再生医療

間葉系幹細胞だけでなく、幹細胞を培養する際の上清液を再生医療に利用することも考えられています。
幹細胞を培養した上清液は、サイトカインとして上皮細胞や血管内皮細胞の成長因子を多く含みます。
幹細胞が成長するために活用されていたサイトカインですので、培養上清液に含まれるサイトカインは種類が豊富で濃度も高い特徴があります。
この幹細胞培養液の上清液を患者さんに投与することで、修復作用による臓器や血管の再生だけでなく、炎症の調節能力の回復も期待されます。
これらのサイトカインを利用した再生医療はまだ実用化されるレベルではありませんが、今後の研究成果が期待されます。

サイトカイン(上清液)療法・治療について詳しくはこちら 

サイトカインとサイトカイン・ストームについてのまとめ

サイトカインについて、またサイトカイン・ストームについてご説明しました。
本来は、わたしたちを守る役割を果たしてくれている免疫系が暴走してしまい、私たちの体を傷つけてしまうことは残念なことです。
しかし、その背景にはまだ解明できていない深い理由があるのかもしれません。
今後より研究が進み、適切な対応ができるようになることを期待したいところです。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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