この記事を読んでわかること
・前頭葉の役割にはどのようなものがあるのか
・側頭葉と前頭葉はどのように関連して働いているのか
・前頭葉や側頭葉が障害を受けるとどのような症状がでるのか
脳にはいろいろな部位がありますが、その中でも前頭葉は人格・社会性・言語を、側頭葉は記憶・聴覚・言語を主に司どっています。
今回の記事では、前頭葉や側頭葉の働きや、この二つの脳の部分がどのように連携しているのか、さらに障害を受けるとどのような症状が出てしまうのかを解説していきます。
前頭葉の役割と認知機能への影響
ヒトの脳は、大脳と間脳、中脳、橋、延髄といった部位に分かれています。
さらに、大脳は大脳皮質と基底核に分けられます。
大脳皮質は大脳の表層の灰白質(かいはつしつ)という部分のことを指します。
この灰白質は、ニューロン(神経細胞)の細胞体が集まっており、灰色がかってみられるためにこう呼ばれます。
さて、この大脳皮質は大きなしわのようなもので大きく区分されています。
部位としては、前の方を前頭葉、頂上の部分を頭頂葉、後ろの方を後頭葉、側方の部分を側頭葉と呼んでいます。
そして、それぞれの部分は特有の機能を持っています。
ここでは、まず前頭葉の役割と認知機能への影響について述べていきましょう。
前頭葉、とくに前頭前野(ぜんとうぜんや)といわれる部分は社会生活において重要な役割を果たしています。
前頭葉を構成する脳神経は、神経科学的には行動制御、作業記憶、実行機能の順に発達していきます。
そして、脳内での情報処理は、大脳皮質を経由する認知処理経路と、視床を経由して扁桃体に転送される情動処理経路の二重構造になっています。
これらが相互作用を行う脳領域が前頭前野と考えられています。
そのため、前頭葉が障害を受けると、認知障害が生じることにつながるのです。
前頭葉の機能低下は、思考力や集中力の低下、無関心や意欲の減退を引き起こす可能性があります。
ストレスや脳の損傷が原因でこれらの機能が低下し、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。
前頭葉の役割と重要性
前頭葉は、私たちの脳の司令塔とも呼ばれ、様々な高次脳機能を司る重要な部位です。
運動機能においては、一次運動野が身体の各部位を直接支配し、運動前野が複雑な動作の計画と実行を担っています。
高次認知機能では、前頭前野が、計画性、実行機能、ワーキングメモリ、感情の制御など、人間らしい思考や行動を可能にする上で不可欠な役割を果たしています。
例えば、目標を設定し、計画を立て、実行するといった一連の行動は、前頭前野の働きによって支えられています。
感情や社会性に関しても、前頭葉は重要な役割を果たしています。
例えば、衝動的な行動を抑え、社会的なルールに従うといった行動は、前頭葉の働きによって制御されています。
前頭葉の損傷は、無関心、衝動性、社会性低下などの前頭葉症候群を引き起こすことがあります。
また、アルツハイマー病や前頭葉変性症などの神経疾患においても、前頭葉の機能低下が重要な役割を果たしています。
側頭葉の役割と記憶・聴覚への影響
では、次に側頭葉の役割を述べていきましょう。
側頭葉は、脳の後方側面を占める脳領域で、視覚や聴覚などの認知機能や記憶の中枢として知られています。
側頭葉に特異的な主な機能は、聴覚情報処理・意味処理・記憶に関連する処理の3つがあります。
例えば、両側の聴皮質あるいは聴放線という側頭葉の一部分を損傷すると「聞こえるが何が聞こえているかわからない」聴覚失認の病態になり、言語理解が妨げられます。
また側頭葉前方部が萎縮する意味性認知症では意味記憶が選択的・進行的に障害されてしまうということがあります。
二つの脳葉が連携して行う主な機能
それでは、前頭葉と側頭葉が連携して行う機能について解説していきましょう。
前頭葉と側頭葉は脳の異なる領域でありながら、様々な機能を連携して行います。
以下に、前頭葉と側頭葉が連携して行う主な機能についてのいくつかの例を挙げていきます。
- 実行機能
- 前頭葉は計画の立案、意思決定、課題の実行、自己統制など、高次の認知機能に関与します。そ
して、側頭葉は視覚的な情報処理や空間的な認識に関与します。 - 作業記憶
- 前頭葉は短期記憶や情報の一時的な保持に関与しています。
方や、側頭葉は視覚的な作業記憶や視覚的な情報の処理に関わっています。 - 社会的認知
- 前頭葉は他者の感情や意図の理解、社会的な行動の調整など、社会的認知を司ります。
側頭葉は顔認識や感情の処理など、視覚的な社会的情報処理をしています。 - 言語処理
- 前頭葉は言語の生成、意味の理解、文法処理など、言語に関連する機能に影響を与えますその一方で、側頭葉は視覚的な情報からの言語理解や語彙の処理に関与しますなお、前頭葉には発語を担当するブローカ野があり、側頭葉には言語の理解を担当するウェルニッケ野があります。
- 感覚の統合
- 前頭葉は複数の感覚情報を統合して意思決定を行います。
側頭葉は視覚、聴覚、触覚などの感覚情報を統合し、全体的な認知プロセスに関与しているのです。
前頭葉と側頭葉についてのまとめ
今回の記事では、前頭葉と側頭葉の基本機能と重要性について解説しました。
前頭側頭葉型認知症という、前頭葉と側頭葉が萎縮してしまう病気があります。
この病気では、社会性が欠如したり、抑制が効かなくなる、同じことを繰り返してしまう、感情が鈍くなる、自発的な言語の低下、といった特徴的な症状が現れます。
この部位の神経が変性してしまうことが原因と考えられていますが、現時点では有効な治療法はまだありません。
こうした病気に対しても、最近再生医療の効果が期待されています。
そこで、神経障害に対する治療として、私たちは、『神経障害が治るのを当たり前にする取り組み』を、ニューロテック®、脳卒中や脊髄損傷、神経障害の患者さんに対する『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』を、リニューロ®と定義しました。
リニューロ®は、同時刺激×神経再生医療、骨髄由来間葉系幹細胞、神経再生リハビリにて『狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療』です。
もしご興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。
よくあるご質問
前頭葉と側頭葉の機能の違いは何ですか?
前頭葉は主に人格・社会性・言語をつかさどり、側頭葉は記憶・聴覚・言語を主につかさどっています。前頭葉と側頭葉が萎縮してしまう前頭側頭葉型認知症では、これらが障害されてしまうので、社会性の欠如などの症状が現れます。
前頭葉がやられるとどうなる?
前頭葉が障害を受けると、注意障害や遂行機能障害、社会的行動障害といった症状が現れます。また、感情を抑制することが難しくなる脱抑制や易怒性(いどせい)も生じます。
<参照元>
前頭葉の発達とその障害.2014.認知神経科学:16(1);49-54.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ninchishinkeikagaku/16/1/16_49/_pdf/-char/ja
記憶を正しく思い出すための脳の仕組みを解明~側頭葉の信号が皮質層にまたがる神経回路を活性化 東京大学/科学技術振興機構(JST)
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20150424-2/index.html
脳の機能と構造.1987.ファルマシア:23(8);811-817.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/23/8/23_KJ00002920028/_pdf/-char/ja
右側頭葉の脳梗塞の再発により社会的行動障害が出現した 両側側頭葉損傷の1例.2022.高次脳機能研究:42(3);365-373.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hbfr/42/3/42_365/_pdf
あわせて読みたい記事:脳卒中による前頭葉と後頭葉や側頭葉への影響
外部サイトの関連記事:脳卒中による嚥下障害を改善する3つの方法
コメント