この記事を読んでわかること
・脳梗塞の回復期リハビリの効果がわかる
・回復期リハビリの種類がわかる
・リハビリの進め方や注意点がわかる
脳梗塞によって障害を受けた神経細胞は基本的に再生しないため、麻痺やしびれなどの後遺症が残ってしまいます。
一方で、回復期における積極的なリハビリはそれらの症状の改善や、障害された機能の回復・再生を目指せるため、積極的に行うべきです。
この記事では、脳梗塞の回復期におけるリハビリについて詳しく詳しく解説します。
リハビリで回復期の後遺症を減らすことはできるのか
結論から言えば、回復期のリハビリによって脳梗塞の後遺症を減らすことは可能です。
回復期とは、生命の危機的状況(急性期)を脱して症状が安定に向かっている時期を指し、家庭生活や社会生活に復帰するまでの期間を指します。
回復期は身体機能の回復や日常生活動作の改善が最も見込める時期であり、この時期のリハビリテーションは大変効果的です。
実際にこれまでの多くの研究で回復期リハビリテーションの有効性については論じられており、具体的には下記のような効果が挙げられます。
- 自宅退院率の向上
- 回復期リハビリテーション在院日数の短縮
- 日常生活動作(ADL)の改善
多くの論文で上記項目における改善を認めており、脳卒中ガイドラインでも改訂の度に回復期リハビリテーションの重要性を推しています。
また、全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会の報告によれば、脳卒中発作4ヶ月以内にリハビリテーション科へ転院、あるいは転科した脳卒中初発患者(2,733例)では、歩行能力を始めとするADLが大幅に改善し、自宅退院率が約6割に達していることが示されています。
また、西岡らの報告では、リハビリテーションによる栄養状態の回復についても言及しており、低栄養状態で回復期リハビリテーション病棟に入院した高齢脳卒中患者に対して管理栄養士や理学療法士がリハビリテーションに介入したところ、91%の患者で栄養状態が改善したそうです。
以上のことからも、回復期におけるリハビリテーションはその患者の予後にも影響を与えるため、積極的に敢行すべきであることがわかります。
回復期リハビリの種類と効果
回復期リハビリの種類は、大きく分けて下記の3種類です。
- 理学療法(PT):バランスと歩行能力の回復
- 作業療法(OT):日常生活動作の改善
- 言語療法(ST):コミュニケーション能力の向上
神経障害を負ったことによって失われた機能次第で、上記3つのリハビリをどのように組み合わせて治療するかが変わり、患者の病状に合わせたリハビリ計画を立てることが重要です。
それぞれについて解説します。
理学療法
回復期リハビリの1つに、理学療法が挙げられます。
理学療法とは、体の身体機能の改善を図るリハビリであり、起きる・立つ・座るなどの動作はもちろん、歩行や体位変換などの日常生活動作をスムーズに行えるようにするリハビリです。
理学療法士が担当し、その患者の身体機能に合った負荷のリハビリを実施します。
特に脳卒中患者では、歩行や日常生活動作の改善のためにトレッドミル訓練・下肢筋力増強訓練などが有用です。
作業療法
回復期リハビリの1つに、作業療法が挙げられます。
作業療法とは、身体や精神になんらかの障害を負った患者が、日常生活において必要な動作を正常に行えるように訓練するリハビリです。
具体的には、食事や排泄、着衣や脱衣、入浴などを訓練しますが、社会参加や社会復帰を目指した精神的ケアも行います。
作業療法士が担当し、その患者の日常や仕事での動きに近い動きを訓練することで社会復帰を目指します。
言語療法
回復期リハビリの1つに、言語療法が挙げられます。
これは脳卒中などによって言語に関わる機能が障害され、うまく人とコミュニケーションが取れなくなってしまった患者の機能回復を図るリハビリです。
耳が聞こえなくなる聴覚障害や、うまく言葉が話せなくなる言語障害、もしくは舌や咽頭喉頭の筋肉がうまく動かなくなる構音障害などに対して改善を図ります。
特に、飲み込みに関わる嚥下機能が低下すると、命に関わる誤嚥性肺炎のリスクも高まるため、早期介入が肝要です。
リハビリの頻度と段階ごとの進め方について
脳梗塞のリハビリは、発症後すぐに始めることが重要です。
急性期は医師の指導下で軽い運動を行い、回復期には強度の高い運動を取り入れていきます。
特に発症から6か月が最も改善しやすい期間です。
適切な頻度は1日3〜4回程度が理想で、最初は短い時間から始め、徐々に時間と強度を増やしていきます。
回復期におけるリハビリの進め方は?
具体的に回復期リハビリテーションを行う場合は、回復期リハビリテーション病棟に入院して1日3時間ほど専用の医療スタッフとともに励むことになります。
急性期病院での入院日数は年々短縮傾向にあり、最近では発症から2週間で退院し、その後に回復期リハビリテーション病棟に移ってリハビリを行います。
回復期リハビリテーション病棟では、疾患や病状によって入院できる期間が決まっており、一般的な脳梗塞や脳出血なら150日間、高次脳機能障害を伴う重度の脳血管障害なら180日間の入院が可能です。
その間行われるリハビリ内容はそれぞれの患者の疾患や年齢によっても異なります。
特に回復期でのリハビリの注意点と禁忌事項
急性期からわずか2週間ほどで回復期のリハビリが行われるため、医学的にいくつか注意点もあります。
特に高齢者の方では身体機能が下がっているため、リハビリの強度や負荷には注意が必要です。
具体的には、転倒や転落、嚥下障害に伴う窒息などの注意点が挙げられます。
過度に負担のかかるリハビリによってかえって退院や社会復帰が遅れてしまうこともあるため、専門のスタッフとともに十分注意して行うようにしましょう。
脳梗塞の回復期リハビリの重要性についてのまとめ
今回の記事では、脳梗塞の回復期にやっておきたいことについて詳しく解説しました。
脳梗塞では、発症から約2週間経過した回復期に理学療法や作業療法を行うことで、ADLの改善や入院期間の短縮など、多くのメリットが得られます。
特に、この時期のリハビリは身体機能の回復への寄与度も高いため、積極的にリハビリを敢行すべきです。
また脳や脊髄の損傷に対しては、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しており、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって、より効果的なリハビリを行うことができるため、後遺症からの再生を期待できます。
よくあるご質問
脳梗塞後の回復期リハビリとは?
脳梗塞に陥ってから病状がある程度落ち着いた後、最も身体機能の回復が見込まれる回復期にリハビリを行うことが、その後のADLにとって重要です。
リハビリ期間は病状によっても異なりますが、その後の自宅や社会活動への復帰を目指します。
脳梗塞の患者が運動をするときに注意すべきことは何ですか?
脳梗塞の患者が運動をするときに注意すべき点は、その負荷や強度です。
あまりに負荷が強いと転倒や転落、また心臓や血管に負荷がかかることで心血管合併症のリスクも上がります。
一方で、負荷が弱いと意味がなくなるため、身体に合った適切な強度のリハビリが肝要です。
<参照元>
・回復期リハビリテーション.net:https://kaifukuki.doctorsfile.jp/rehabilitation/#topic02
・脳卒中ガイドライン:https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf
・回復期リハビリテーション病棟協会:http://www.rehabili.jp
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