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脊髄梗塞の主な原因と予防

           

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この記事を読んでわかること

脊髄梗塞を引き起こすリスク要素
脊髄梗塞の一般的な原因
脊髄梗塞を予防するための生活習慣


脊髄梗塞とは、脊髄を栄養する動脈が閉塞することで、脊髄が虚血に陥る病気です。
脊髄が壊死することで急激な麻痺の進行や膀胱直腸障害・自律神経障害などの症状をきたすため、原因を把握し、発症を早期から予防することが重要です。
そこでこの記事では、脊髄梗塞の主な原因と予防策について解説します。

脊髄梗塞を引き起こすリスク要素

脊髄梗塞を引き起こすリスク要素
脊髄梗塞とは、脊髄を栄養する動脈がなんらかの原因で梗塞を引き起こし、虚血に陥る病気です。
脊髄を栄養する動脈は主に2つです。

  1. 前脊髄動脈:腹側2/3を栄養する
  2. 後脊髄動脈:背側1/3を栄養する

このうち、解剖学的な理由から前脊髄動脈の方が虚血に陥りやすいことが知られており、特に胸髄が障害されやすいといわれています。
同じような病態の脳梗塞や心筋梗塞では高齢者の発症が多く、高血圧や糖尿病などによる動脈硬化が発症の原因と判明していますが、脊髄梗塞の発症者は若年者も多く、動脈硬化以外のリスク要素があることが示唆されます。
これまでの多くの知見から、下記のようなリスク要素が指摘されています。

  • 若年発症
  • 女性に多い
  • 糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病
  • 低血圧
  • 高血糖

これらの要素を多く含む場合に発症しやすく、脳梗塞や心筋梗塞と異なり心疾患や高血圧の既往との関与ははっきりしていません。

脊髄梗塞の一般的な原因

脊髄梗塞の一般的な原因
では、なぜ脊髄を栄養する動脈が閉塞するのでしょうか?
なんとなく「血栓が詰まるのでは?」とイメージされる方が多いかもしれませんが、多くの場合そうではありません。
脊髄梗塞の一般的な原因として、多くは外的な力によって動脈が損傷することで発症します。
Robertsonらの報告によれば、脊髄梗塞患者115人の発症原因の内訳は大動脈手術に伴うものが45%、特発性が21%、大動脈瘤やアテローム血栓症が7%、大動脈解離が7%、血圧 低下に伴うものが7%、その他の原因が13%でした。
つまり、多くの場合は大動脈の手術の合併症として前脊髄動脈や後脊髄動脈が閉塞し、発症していることが分かります。
また、Romiらの研究によれば、手術の影響で発症した脊髄梗塞の場合は3年間で23%が死亡するのに対し、発症のきっかけが手術ではない脊髄梗塞の場合は7年間で23%が死亡するため、手術による脊髄梗塞は予後不良であることが分かります。
大動脈の手術中は大動脈を遮断するため、大動脈から血液を供給されている脊髄動脈への血流が途絶え、その時間が長いほど脊髄は虚血に陥りやすくなります。
また、手術以外の要因としては大動脈瘤や大動脈解離などの大動脈疾患が多く、大動脈になんらかの異常を持っている方がハイリスクです。

脊髄梗塞を予防するための生活習慣

脊髄梗塞を予防するための生活習慣
脊髄梗塞は一度発症すると上肢や下肢の麻痺・しびれや膀胱直腸障害などが急激に出現し、重い後遺症として残ります。
そのため、原因やリスクを把握した上で早期から予防することが重要です。
そこで、脊髄梗塞を予防するための生活習慣をリスクごとに紹介します。

  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 低血圧
  • 喫煙

糖尿病

脊髄梗塞を予防するために、糖尿病を避けましょう。
糖尿病は、血液中に血糖(グルコース)が多い状態を指し、血液内の血小板凝集作用や動脈硬化の進展を引き起こすことが知られています。
つまり、血管がボロボロになり、血が固まりやすい状態を作り出す病気です。
脳梗塞や心筋梗塞では糖尿病が明らかなリスク因子とされていますが、脊髄梗塞の場合は糖尿病との関連性について諸説あります。
しかし、糖尿病は他の疾患の発症リスクも増加させるため、予防することに越したことはないでしょう。
規則正しい食生活や睡眠習慣を送りましょう。

脂質異常症

脊髄梗塞を予防するために、脂質異常症を避けましょう。
脂質異常症は、血液中にLDLや中性脂肪が多い状態を指します。
血管に脂の塊が沈着し、プラークと呼ばれるコブを形成すると血管壁が硬くなり動脈硬化が進展します。
さらに血管の内腔も狭くなるため、動脈が閉塞しやすくなります。
糖尿病と同じく、脊髄梗塞との関連性については諸説ありますが、予防することで他の疾患の発症リスクも下げることができるため、ぜひ生活習慣を改善しましょう。

低血圧

血圧が高いと体に悪い印象がある方も多いと思いますが、脊髄梗塞の場合は低血圧が発症リスクを増加させるため、血圧の低下に注意しましょう。
特に、サウナや夏場の運動後など発汗が増えて脱水になりやすい状態はリスクが高いため、積極的な飲水を心掛けましょう。

喫煙

喫煙は動脈硬化を進展させ、大動脈解離などの血管病変の原因となるため、控えましょう。
タバコに含まれるニコチンが持続的に交感神経を刺激し、血管を収縮させます。
さらに、タバコによって血液中に増加する一酸化炭素が血管内皮細胞を損傷することで、動脈硬化のリスクを増加させます。
動脈硬化による脊髄梗塞や、大動脈解離に伴う脊髄梗塞のリスクを下げるためにも、喫煙は控えましょう。

まとめ

今回の記事では、脊髄梗塞の原因と予防策について解説しました。
脊髄梗塞の原因は主に大動脈解離や大動脈瘤などの血管病変であり、これに対する手術が最大のリスクとなります。
糖尿病や脂質異常症もリスクとなりますが、高血圧ではなく低血圧がリスクとなる点で他の虚血性疾患とは異なります。
脊髄を構成する神経細胞は一度損傷すると自己修復は困難であり、後遺症が残ってしまうため、予防のためにも生活習慣を整え、動脈硬化の進展を防ぎましょう。
また、近年では再生医療の発達も目覚ましく、脊髄梗塞に伴う後遺症を改善させる治療法として注目を浴びています。
脊髄梗塞に対する新たな治療の選択肢として、再生医療のさらなる知見が待たれるところです。

よくあるご質問

脊髄梗塞の原因は?
脊髄梗塞の原因は、主に大動脈に対する手術や大動脈解離・大動脈瘤などの血管病変が挙げられます。
その他、動脈硬化に伴うアテローム性血栓症や血管炎、低血圧などが原因として挙げられます。

脊髄梗塞の予兆は?
手術以外の理由で発症する場合、なんの前触れもなく突然発症します。
突発的な背部痛や周囲への放散痛が先行し、その後筋力の麻痺やしびれなどの感覚障害が生じます。
特に、感覚障害の中でも温痛覚が強く障害されることが知られています。

<参照元>
・MSD マニュアル:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/07-神経疾患/脊髄疾患/脊髄梗塞
・Pub Med:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22205760/
・Pub Med:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27487411/

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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