この記事を読んでわかること
・LDLコレステロールと脳梗塞の関係がわかる
・HDLコレステロールと脳梗塞の関係がわかる
・コレステロールが悪者かどうかわかる
脳梗塞の発症にはコレステロール、特に血液中のLDLコレステロールの値が密接に関わっています。
運動不足や不規則な食習慣を繰り返すと血液中にLDLコレステロールが蓄積し、脳梗塞や脳出血の発症リスクが増大するため注意が必要です。
この記事では、LDLコレステロールやHDLコレステロールと脳梗塞の関係性を詳しく解説します。
LDLコレステロールが脳梗塞リスクに与える影響
LDLコレステロールが血液中に増加すると、結論から言えば脳梗塞の発症リスクは増加します。
この意味を理解するためには、そもそもLDLコレステロールとは何かを知っておく必要があります。
LDLコレステロールとはいわゆる悪玉コレステロールのことで、血液中でコレステロールを運搬する乗り物です。
LDLコレステロールはまるでゴミや排気ガスを撒き散らしながら道路を進むトラックのように、全身の血管にコレステロールを運搬することでさまざまな有害事象を招きます。
本来であればLDLコレステロールはLDL受容体によって細胞内に取り込まれ、血管内に増えすぎないように制御されていますが、肉類やバター、生クリーム、加工食品にはたくさんの飽和脂肪酸が含まれており、これらの飽和脂肪酸はLDL受容体の合成を抑制することで、血液中にLDLコレステロールが増加してしまいます。
この結果動脈硬化が進行し、脳梗塞の発症リスクを増大させてしまうわけです。
日本脳卒中学会によれば、血液中のコレステロール値と脳梗塞の発症リスクは相関関係にあり、特にLDLコレステロールが高い場合はアテローム性血栓性脳梗塞を発症しやすいそうです。
そのため、脳梗塞を予防する上では脂質や油分の過剰摂取は控える必要があります。
(参照サイト:危険因子の管理(3)脂質異常症|脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕|日本脳卒中学会)
HDLコレステロールが脳を守る役割とは?
健康診断などを受けると、LDLコレステロールとともに必ず測定されるのがHDLコレステロールですが、LDLコレステロールとどのような違いがあるのでしょうか?
HDLコレステロールはLDLコレステロールと同様に血液中でコレステロールを運搬する作用を持つコレステロールの乗り物ですが、実はコレステロールを回収するゴミ清掃者のようなもので、血液中の過剰なコレステロールを肝臓に戻す役割を持ちます。
つまり、HDLコレステロールが多ければ血液中のコレステロール値が下がり、動脈硬化の進展を予防できるというわけです。
当然、動脈硬化が予防されれば脳梗塞の発症リスクも軽減できます。
逆に健康診断などでHDLコレステロールの低値を指摘されている場合、動脈硬化の進展リスクが増加するため、有酸素運動を行ったり日常における食習慣を見直すことでHDLを増加させると良いでしょう。
(参照サイト:健康診断で異常を言われたら?|日本動脈硬化学会)
コレステロール値が高いと脳梗塞の危険性が高まる理由
では、なぜ血液中のコレステロール値が高いと脳梗塞の危険性が高まるのでしょうか?
高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病は長期化すると血管内皮細胞を損傷し、その損傷部位からLDLコレステロールが血管壁内に侵入します。
血管壁内にLDLコレステロールが侵入すると、血管本来の弾性や柔軟性が失われ、血管は硬く脆く変性してしまいます。
これを動脈硬化と呼び、さらに症状が進むと徐々に血管内腔にプラークと呼ばれるコブが形成されますが、これこそが脳梗塞の原因です。
プラークが肥大化すると血管腔内は狭小化し、なんらかのきっかけでプラークが破綻すると一気に血栓が形成されて脳梗塞を発症し、これをアテローム性血栓性脳梗塞と呼びます。
(参照サイト:動脈硬化性疾患とは?|日本動脈硬化学会)
以上のメカニズムからも、血液中にLDLコレステロールが多いと動脈硬化やプラーク形成が進み、脳梗塞や心筋梗塞の発症リスクが増大するため注意が必要です。
果たしてコレステロールは本当に悪者なのか?
ここまでコレステロールの危険性ばかりをフューチャーしてきましたが、必ずしも悪者かというとそうではありません。
コレステロールは全ての細胞の表面の膜(細胞膜)の形成に深く関わっており、またステロイドホルモンや胆汁酸の原料などにもなるため、生きていく上で必要不可欠な成分でもあります。
コレステロールが少なすぎると、血管壁を構成する細胞が脆弱となり、むしろ脳出血の発症リスクは増えてしまいます。
また、免疫力が低下する可能性も示唆されており、コレステロール=必ずしも悪者というわけではない事を理解しておきましょう。
(参照サイト:危険因子の管理(3)脂質異常症|脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕|日本脳卒中学会)
まとめ
今回の記事では、脳梗塞とコレステロールの関係性について詳しく解説しました。
LDLコレステロールは血管の動脈硬化を促し、特にアテローム性血栓性脳梗塞の発症リスクを増大させるため、注意が必要です。
一方でHDLコレステロールは血液中の余分なコレステロールを肝臓内に戻す機能を持つため、運動や食事でHDLコレステロールを高く保つことが重要です。
もし不摂生を繰り返し、脳梗塞を発症して後遺症が残ってしまうと、現状ではリハビリテーションが唯一の改善策ですが、症状の根治は困難です。
一方で、近年では新たな治療法として再生医療が大変注目されています。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、これまで改善の困難であった脳梗塞に伴う後遺症の改善が期待できます。
よくあるご質問
- 脳梗塞になるコレステロール値は?
- 血液中のLDLコレステロール値が140mg/dL以上の場合を高LDLコレステロール血症と呼び、脳梗塞の発症リスクが増加するため注意が必要です。
また、HDLコレステロール値が低い場合もリスクが上がることが知られています。 - コレステロールが高いと脳梗塞になりやすいですか?
- コレステロールが高いと脳梗塞になりやすいです。
血管壁内にコレステロールが蓄積し、動脈硬化が進展することで血管内腔が狭小化するため、梗塞を引き起こしやすくなるためです。
<参照元>
(1):危険因子の管理(3)脂質異常症|脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕|日本脳卒中学会:https://www.jsts.gr.jp/img/guideline2021_kaitei2023.pdf
(2):健康診断で異常を言われたら?|日本動脈硬化学会:https://www.j-athero.org/jp/general/3_kenkoushindan/
(3):動脈硬化性疾患とは?|日本動脈硬化学会:https://www.j-athero.org/jp/
・喫煙と循環器疾患 | e-ヘルスネット(厚生労働省):https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/tobacco/t-03-002.html
・脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血後の言語性記憶の特徴.Jpn J Rehabil Med.2012;49(9):625-630.|J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/49/9/49_625/_pdf
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