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脳卒中の重症度を評価するスケールについて

           

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この記事を読んでわかること

シンシナティ病院前脳卒中スケール(CPSS)
脳卒中重症度スケール (Japan Stroke Scale: JSS)


脳卒中の発症を早期に発見し、早期治療につなげることを目的に開発されたシンシナティ病院前脳卒中スケールは、顔のゆがみ、手の動き、話し方の3つを調べる簡便なツールです。
また重症度を評価することが目的の米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)脳卒中スケールは、11項目を評価しますが、異なる職種の医療従事者が利用でき、病変の大きさや予後を予測するためにも利用できるものです。

シンシナティ病院前脳卒中スケール(CPSS)

脳卒中の種類
脳卒中は、血栓が脳の動脈の一部を塞ぐ、あるいは脳の血管にできた瘤が破裂することで、脳への血液の供給が途絶えたときに起こる、緊急事態です。
その結果、脳細胞は血液不足に陥り、やがて死に至ることになります。
合併症や後遺症を最小限にするためには、脳卒中が起きていることを一刻も早く認識し、救急治療を行うことです。
シンシナティ病院前脳卒中スケール(CPSS)は、脳卒中が疑われる患者を評価するために、救急隊員が使用することを目的に開発されたツールです。

シンシナティ病院前脳卒中スケール(CPSS)の評価項目

救急隊員が使用することが目的でもあることから、シンシナティ病院前脳卒中スケールはとてもシンプルで、脳卒中を示唆する3つの具体的な症状を確認します。

顔面のゆがみの確認

対象者に歯を見せるように微笑んでもらったり、口を膨らませてもらったりして確認します。
通常、顔の両側は同じように動くはずですが、脳卒中を起こすと、顔の片側が動かないことがあります。

腕の動きの確認

対象者に両腕をあげてもらい、目を閉じて10秒間両腕をあげたままにしてもらいます。
通常、両腕は上がったままで保持できます。
しかし、脳卒中を起こすと片方の腕が動かないか、上がっても保持することができず、下がってきてしまいます。

会話をしてもらう

対象者に話をしてもらいます。
もし話している言葉が不明瞭であったり、不適切な言葉を使用したり、話すことができない場合、異常だと判断します。

シンシナティ病院前脳卒中スケール(CPSS)の解釈

上記の特徴(顔面のゆがみがある、腕の一方が上がらない、発語が異常である)のうち、ひとつでも異常がある場合、脳卒中を疑う必要があります。
そしてできるだけ早く脳卒中センターへ搬送する必要があります。
なお病院前で使用する脳卒中スケールには、他に米国ロサンジェルスやカナダのオンタリオ州、また豪州メルボルンで利用されているものがあります。
これらのスケールの有用性を調べた複数の研究を、系統的に見直して検討した研究があります。
この研究によると、他のいずれのスケールと比較しても、CPSSが最も感度が高いことがわかりました。

(出典 Zheiev Z, et al. Prehospital stroke scales as screening tools for early identification of stroke and transient ischemic stroke. Cochrane Database Syst Rev. 2019 Apr 9;4(4):CD011427)

感度が高いということは、見逃しが少ないということでもあります。
病院前で行う評価では、脳卒中を見逃さずに見つけることが主たる目的です。
したがって見逃しの少ないスケールは、使用する価値の高いスケールと言えるかもしれません。

米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)脳卒中スケール(NIHSS)

シンシナティ病院前脳卒中スケールは、脳卒中の早期診断を目的としたスケールですが、重症度を評価することを目的にしたスケールもあります。
米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)脳卒中スケール(NIHSS)は、脳卒中によって生じた神経学的症状を定量的に測定するために開発された評価ツールです。

米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)の評価項目

NIHSSは、脳卒中によって変化する意識レベル、言語能力、視野、眼球運動、運動能力、感覚レベルなどを含む、11項目の神経学的検査を行います。
NIHSSは、診療に携わる多職種の医療従事者が同じ方法で評価することができる、シンプルで有効、かつ信頼性の高いツールになっています。
通常は10分未満で行うことができます。

入院時の米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)の解釈

NIHSSはもともと脳卒中に対する研究用ツールとして開発されましたが、NIHSSは特に脳卒中を起こした病変の大きさを予測するのに有効であり、急性期の重症度評価などに使用されています。
各項目の評価は、0を正常として障害の程度に応じて3〜5点で採点されます。
スコアが高いほど重症度は高く、最高点は42ですが、25点以上は超重症、15から24点は重症、逆に5点以下は軽症と考えられます。
例えばNIHSS が5点未満であれば、80%の方が自宅へ退院できるとされていますが、14点以上では長期的な介護を必要とすることが多いことがわかっています。

脳卒中重症度スケール (Japan Stroke Scale: JSS)

これまでは国外で開発されたスケールをご紹介しましたが、最後に日本で作られたスケールも簡単にご紹介しておきます。
脳卒中重症度スケール (Japan Stroke Scale: JSS)は、日本脳卒中学会が中心になって開発したもので、脳卒中の患者さんの急性期の重症度を評価するスケールです。NIHSSと同じように、意識や神経学的症状の12項目を評価し、合計点で判定します。

まとめ

脳卒中の評価に用いられるスケールをいくつかご紹介しました。
スケールは簡便に利用できますので、ぜひその目的を理解した上で活用できると良いのではないかと思います。

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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