再生医療は脊髄損傷治療の希望となっているのか?最新の治療法を徹底解説 |麻痺痺れなど神経再生医療×同時リハビリ™で改善

再生医療は脊髄損傷治療の希望となっているのか?最新の治療法を徹底解説

           

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この記事を読んでわかること

  1. 脊髄損傷の治療が難しい理由がわかる
  2. 脊髄損傷に対する再生治療のメカニズムがわかる
  3. 脊髄損傷に対する再生治療の効果がわかる

脊髄損傷によって脳と身体の神経が分断されると、麻痺などの重篤な後遺症を残し、その後の日常生活に大きな支障を与えます。
また現状ではリハビリテーションが主な治療であり、機能回復が困難な病気です。
一方で、近年では再生医療による治療が注目されており、この記事では再生医療が脊髄損傷治療の希望となっているのかについて解説します。

脊髄損傷と再生医療の効果と課題

脊髄損傷の現状と治療の課題
脊髄損傷とは、脳と身体をつなぐ架け橋のような機能をもつ脊髄が、交通外傷や転倒・転落などによって損傷し、運動神経や感覚神経が脳と身体の間で分断されてしまう病気です。
当然、脊髄を損傷すれば脳から身体には運動の指令が届かず、最悪の場合上肢も下肢も麻痺してしまい、顔以外動かせなくなってしまいます。
また、身体からの痛みや熱さなどの感覚の情報も脳に届かなくなってしまうため、しびれなどの感覚障害に苦しむことになります。
問題は脊髄損傷の治療が風邪や腸炎と違って容易ではない点です。
例えば包丁で指を切った場合、一時的には血が出たり痛みが出現しますが、その後徐々に指の細胞が自己複製して損傷した部位を補完し、元に戻ります。
しかし、心臓や脳、神経の細胞はこの自己複製能が低いとされており、一度損傷した後の再生が難しいのです。
そのため、重度の心不全では心臓移植しか選択肢がなく、脳梗塞や脳出血、そして脊髄損傷などでは後遺症が残ってしまうわけです。
こと脊髄損傷に関しては、どれくらいの程度で脊髄が損傷したかでその後の治療への反応性も異なります。
具体的には、損傷の程度で下記の2つに分類されます。

  • 不全損傷:脊髄の一部が損傷し、時間の経過とともに症状の改善が見込める
  • 完全損傷:脊髄が完全に切断・損傷され、その後改善が見込めない

完全損傷の場合、脊髄の白質と呼ばれる重要な部位が完全に破壊されることで損傷した神経ネットワークの再構築が望めず、症状の改善が見込めないです。
一方で、不全損傷の場合は白質の構造がある程度維持されているため、リハビリテーションなどの理学療法によって神経の再構築が望めます。
しかし、裏を返せば脊髄損傷に対する治療は現状リハビリテーションでの機能回復・維持しかなく、どうしても麻痺やしびれなどの後遺症と付き合っていく必要があります。
脊髄損傷に対して手術が行われることもありますが、これはあくまで外傷によって不安定化した脊椎を固定するためや、脊髄への直接的な圧迫を解除するための手術であり、損傷した脊髄の細胞を元に戻しているわけではありません。
日本では脊髄損傷後の職業復帰率も低く、受傷前とは違う人生を送る人が大半です。
一方で、近年では再生医療と呼ばれる、損傷した組織・臓器を再生して治療する医療分野が目覚ましい発展を遂げており、これまで難治であったさまざまな病気に対し、徐々に実臨床でも利用されています。

脊髄損傷の治療における再生医療の現状と未来

再生医療の中でも特に注目されているのが、幹細胞を用いた脊髄損傷の治療です。
幹細胞は損傷した神経を修復・再生する可能性を秘めており、運動機能や感覚の回復が期待されています。
現在の再生医療は、臨床試験を通じて有効性が確認されつつありますが、まだ発展途上の技術でもあり、完全な回復を保証するものではありません。
しかし、従来の治療では得られなかった改善が見られるケースが報告されています。

再生医療の進歩とその意義

再生医療の歴史を紐解くと、古くは義足や義手などがその始まりです。
失われた手足を義足や義手で補うことで、その機能を維持しようとしているわけです。
そこから何年も時は進み、まるでトカゲの尻尾のように切っても切っても元に戻るような治療を追い求め、再生医療の分野では研究が続けられました。
1998年、J.ThomsonらによってES細胞を使った再生医療が樹立されます。
ES細胞はヒトの胚細胞を使って損傷した臓器の再生を促す治療です。
ES細胞が、損傷した臓器に到達し、その細胞に分化し、自己複製を行うことで損傷部位を補完するわけです。
しかし、ES細胞は受精卵から抽出するため医療倫理的課題を抱えていました。
そこで、2007年には日本の山中教授が人工的にES細胞と同じような機能をもつiPS細胞を樹立します。
iPS細胞は医療倫理的課題はないですが、その開発には莫大な費用がかかるため、臨床での応用は困難でした。
現在、主に再生医療で用いられているのは自身の骨や脂肪細胞から採取した間葉系幹細胞です。
間葉系幹細胞は比較的安価に採取可能かつ、倫理的問題や免疫的な拒絶反応のリスクも低いため、現在の主流となっています。
他にも、再生医療の技術は現在の医療に幅広く応用されています。
例えば、遺伝性網膜ジストロフィーに対しては再生医療の技術を駆使して作られた人工角膜を使って治療可能です。
また、これまで移植しか希望のなかった重症心不全に対し、再生医療の技術を駆使して作られた心筋シートを使った治療も有名です。
今後もこれまで改善困難であった多くの病気に適応は拡大していくでしょう。

中枢神経損傷に対する再生医療の効果

では、中枢神経損傷に対する再生医療はどのくらい進んでいるのでしょうか? 
まず代表例としては札幌医科大学の「ステミラック注」です。
自身の骨から採取した骨髄由来間葉系幹細胞を外傷性脊髄損傷患者に投与することで、脊髄の再生を促す治療です。
国内の臨床試験では、大きな有害事象もなく、投与された13例中12例で神経機能の改善を認めています。
また脳梗塞や脳出血に対しての再生医療では、理論上、損傷した脳細胞の再生や、破綻した血管の新生などの効果によって、後遺症などの神経機能の改善が見込めます。
現在、札幌医科大学や広島大学、北海道大学を中心に治験が始まっており、近い将来新たな治療法が確立される可能性も高いです。

再生医療と脊髄損傷治療についてのまとめ

今回の記事では、 再生医療は脊髄損傷治療の希望となっているのかについて詳しく解説しました。
これまで、リハビリテーションによる機能回復や、薬物療法による症状緩和が唯一の治療であった脊髄損傷ですが、今後は再生医療での症状改善が進むかもしれません。
実際に、最近では慶應大学による脊髄損傷患者に対するiPS細胞での再生治療の臨床試験が進んでおり、新たなフェーズに入っています。
また、それとは別に最近では「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
これまで治療の困難であった神経症状に対して、ニューロテックメディカルでは、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって、脊髄損傷による神経学的後遺症の改善が期待できます。

よくあるご質問

脊髄損傷は治る可能性ありますか?
脊髄損傷は損傷の程度によっては治る可能性もありますが、完全損傷した場合は現状の医療で完全に治すことは困難です。
一方で、近年では再生医療による治療も注目されており、その効果に大きく期待がかかります。

再生医療とはどんな治療法ですか?
再生医療とは、多分化能と自己複製能を持ち合わせる幹細胞を身体に投与し、損傷した臓器の治癒・再生を目指す治療法です。
これまで根治することが困難であった脳卒中や脊髄損傷に対して、臨床の場で普及していくことが期待されます。

<参照元>
・日本リハビリテーション医学会:https://www.jarm.or.jp/civic/rehabilitation/rehabilitation_03.html
・厚生労働省:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kyousou/sentan/dai1/siryou7.pdf
・再生医療ポータル:https://saiseiiryo.jp/approval/
・札幌医科大学付属病院:https://web.sapmed.ac.jp/hospital/topics/news/stemirac.html

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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