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急性硬膜下血腫の死亡率について

           

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この記事を読んでわかること

急性硬膜下血腫の死亡率がわかる
急性硬膜下血腫で死亡率が高いケースがわかる
急性硬膜下血腫に対する治療法がわかる


急性硬膜下血腫は、主に頭部外傷に伴って出現する頭蓋内の出血であり、脳挫傷を伴いやすいことから予後不良な病気と考えらえています。
特に、出血や脳挫傷の程度が激しい場合、その後の脳浮腫や血腫による脳の圧迫によって脳ヘルニアに陥り、死に至るケースも少なくありません。
急性硬膜下血腫は、2024年3月8日に、日本を代表する漫画家の1人である鳥山明氏が急逝された、とても怖い病気です。
この記事では、急性硬膜下血腫の死亡率について詳しく解説します。

急性硬膜下血腫の死亡率の予測と対処法

必ずヘルメットを着用
急性硬膜下血腫は、硬膜下に位置する架橋静脈や皮質動脈・静脈が一部破綻することで出血する病気です。
硬膜下は比較的疎な組織であり、出血が広がりやすいため、血腫が増大し、脳を圧迫する可能性があります。
主に交通事故などによる頭部外傷が原因となることから、頭部外傷に伴って脳挫傷を併発すると神経学的予後も不良となります。
脳は頭蓋骨による閉鎖空間に閉じ込められているため、脳挫傷に伴う脳浮腫や多量の血腫によって脳実質は圧迫され、呼吸や循環を司る脳幹が強く圧迫を受けると(これを脳ヘルニアと呼ぶ)、命を落とす危険性もあり注意が必要です。
これまでの多くの研究で死亡率にはバラツキが大きいですが、1997年の青木らの報告では、急性硬膜下血腫の死亡率は35.1%〜66%という結果でした。
そのほかの報告でも、死亡率は約50〜90%とデータにバラつきが大きく、さまざまな要因で死亡率が大きく変わり得る病気であることがわかります。
例えば、Haselsbergerらの研究では、受傷後2時間以内の死亡率は47%であったのに対し、それ以降では80%が死亡したとしており、死亡率は時間差でも大きな違いがあることがわかります。
次に、Howardらの研究では、60歳以上の死亡率は74%であったのに対し、18〜40歳では18%であり、年齢も死亡率に大きな影響を与える要因です。
急性硬膜下血腫に適切に対処するためには、まずは発症しないように頭部保護を念頭に置いて行動することです。
具体的には下記のように注意しましょう。

  • 自転車やバイクに乗る際はヘルメット着用を心がける
  • 高いところに立つ時は転落に注意する
  • 抗凝固薬や抗血小板薬内服者は頭部への刺激を極力避ける
  • ボクシングやアメフトなどの接触スポーツは頭部保護に尽力する

その上で、一度発症してしまった場合には脳を保護するための血腫除去術などが施行されます。

急性硬膜下血腫の手術後の死亡率の要因は?

急性硬膜下血腫の死亡率が変わる要因
急性硬膜下血腫の手術後の死亡率に影響を与える要因は主に下記の3つです。

  • 脳挫傷の程度
  • 血腫量
  • 受傷時の意識障害の有無

まず、急性硬膜下血腫に罹患した時、一番イメージしやすいのは出血量が多いケースでしょう。
出血量が多ければ当然脳は血腫によって圧迫されやすくなり、脳ヘルニアに至る可能性も高くなります。
林らの研究結果では、頭部CT検査において脳の正中線が15mm以上偏位している場合は、脳が強い圧迫を受けている証拠であり、手術を行っても予後が不良であったとしています。
また血腫量が多い場合だけでなく、激しい外傷によって脳そのものが障害を受けている場合(脳挫傷の程度)は、受傷後に生じる炎症によって激しく脳が浮腫んでしまい、やはり脳実質が圧迫されてしまい予後不良です。
また、これまで多くの研究で報告されている予後不良因子は、受傷時の意識レベルです。
林らの研究では、受傷時の意識レベルがJCS(Japan Coma Scale)で200点以上、つまり、「痛み刺激で少し顔をしかめたり手足が動く」ほどの意識障害を認める場合、やはり予後不良であると報告しています。
一方で、少し意外かもしれませんが、受傷後から手術開始までの時間が死亡率に与える影響については、研究によって大きな違いがあり、一概に早期手術が予後を改善するとはいい切れません。

死亡率を下げるための治療法とは?

脳挫傷になる要因は
ここでは、急性硬膜下血腫に対して行われる治療法について紹介します。

  • 緊急手術
  • 保存療法

急性硬膜下血腫に対して緊急手術を検討するのは下記のような状態です。

  • 多量の血腫を認める
  • なんらかの神経所見が出て、急速に悪化している

上記の場合、開頭して蓄積した血腫を除去し、止血する手術を行います。
一方で、そのまま開けた頭蓋骨を元に戻さず、脳にかかる圧を少しでも減圧する「外減圧術」の有効性についてはいまだに結論が出ていません。
また、脳ヘルニアになって長時間経過したものは手術適応となりません。
緊急手術の適応がない場合、それ以外の方法で状態を改善させる保存療法が選択されます。
具体的には、下記のような方法で脳を除圧します。

  • 頭部挙上
  • マンニトール(浸透圧利尿薬)投与
  • 過換気療法

以上の治療法を行いますが、先述したように急性硬膜下血腫は手術療法の成否よりも、脳挫傷の有無や受傷時の意識障害の程度などによって予後がある程度決まってしまう病気であることは認識しておくべきです。

まとめ

今回の記事では、急性硬膜下血腫の死亡率について詳しく解説しました。
急性硬膜下血腫の予後は悪く、脳挫傷の程度や意識障害の程度に応じて、約半数は死亡してしまうような病気です。
運よく命が助かったとしても、脳挫傷の部位や程度に応じて、麻痺やしびれなどの後遺症と付き合っていく必要があります。
現状、これらの後遺症に対してはリハビリテーションでの機能改善が唯一の治療となりますが、最近では「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
ニューロテックメディカルでは、脊髄や神経の治る力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「神経再生医療×同時リハビリ™」によって、急性硬膜下血腫の後遺症の改善が期待できます。

よくあるご質問

急性硬膜下血腫の死亡率は?
一般的には、急性硬膜下血腫の死亡率は50〜90%とされています。
死亡率が幅広い要因としては、脳挫傷の程度や意識障害の有無などによって死亡率は大きく異なり、個人差も大きいため研究結果によっても差があるためです。

急性硬膜下出血の後遺症は?
急性硬膜下血腫によって脳が損傷を受けると、記憶障害や感情障害などの高次脳機能障害、麻痺などの運動障害、しびれなどの感覚障害が後遺症として残る可能性があります。
どの部位の脳が損傷を受けるかで、残る後遺症も異なります。

<参照元>
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/mch/1/1/1_15/_pdf/-char/ja
・J STAGE:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam1990/8/9/8_9_369/_pdf/-char/ja
・NEJM:https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2214172

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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