この記事を読んでわかること
・MOG抗体関連脊髄炎の概要がわかる
・MOG抗体関連脊髄炎の症状がわかる
・MOG抗体関連脊髄炎の診断方法がわかる
近年その概念が確立されたMOG抗体関連疾患は、脳や脊髄、視神経など広範囲に神経組織を障害し、さまざまな症状をきたす疾患です。
医学の発達に伴い、日々その知見が明らかとなっており、診断方法や治療法もアップデートされているのが現状です。
この記事では、MOG抗体関連脊髄炎の症状や診断方法について詳しく解説します。
MOG抗体とは?自己免疫疾患のメカニズム
近年、MOG抗体関連疾患という新しい疾患概念が提唱され注目されています。
まず、MOG抗体関連疾患とは自己免疫性疾患と呼ばれる病態で、自己抗体(MOG抗体)によって自身の正常な細胞が破壊されていく病気です。
本来であれば体内に侵入した病原菌などの異物を退治するために作られる抗体が、誤って自身の正常な細胞を異物と誤認して攻撃してしまう病態を自己免疫疾患と言います。
MOG抗体関連疾患では、髄鞘の最外層に存在するタンパク質、MOG(Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein)を標的にする自己抗体であるMOG抗体が髄鞘を破壊する病気です。
髄鞘とは、神経細胞を外側から包む保護材のようなもので、この髄鞘が自己抗体によって破壊される(これを脱髄と呼ぶ)ことで、さまざまな神経症状を来します。
では、なぜMOG抗体関連疾患が発見されたのでしょうか?
従来から、中枢神経系の髄鞘が破壊される脱髄性疾患として、多発性硬化症・急性散在性脳脊髄炎・視神経脊髄炎スペクトラム障害などの疾患が規定されていましたが、これらの患者の一部で、血清あるいは髄液中にMOG抗体が発見されたことをきっかけに、MOG抗体関連疾患という概念が生まれました。
例えば、視神経脊髄炎スペクトラム障害においてはアクアポリン4抗体と呼ばれる自己抗体が原因と考えられていましたが、一部の患者でアクアポリン4抗体を認めない症例を認めました。
調査の結果、アクアポリン4抗体ではなくMOG抗体が発見されたため、新たな概念としてMOG抗体関連疾患が提唱されたわけです。
脊髄炎の症状チェックリスト
MOG抗体が脊髄を形成する神経細胞の髄鞘を破壊し、MOG抗体関連脊髄炎をきたすと、下記のような症状が出現します。
- 胸や腹の帯状のしびれ
- ぴりぴりした痛み
- 手足のしびれや運動麻痺
- 尿失禁、排尿・排便障害
脊髄は、脳から上肢・下肢へ運動の司令を、身体から脳へ痛みや温度の感覚の情報を伝達する架け橋のような役割を担います。
そのため、脊髄の神経細胞が破壊されると手足のしびれや麻痺などが出現するわけです。
MOG抗体関連脊髄炎の場合、通常の視神経脊髄炎などと経過が異なり、急性期のステロイドパルス治療に対する反応性が良いです。
そのため、多くは後遺症なく回復しますが、その後約半数の方に再発が認められ、麻痺やしびれなどの後遺症が残存してしまうケースもあります。
最新の診断方法MRIと血液検査の役割
MOG抗体関連疾患の診断基準は下記の通りです。
- 脱髄性疾患に見られる臨床所見
- 血清MOG抗体の陽性
- 多発性硬化症などの関連疾患の否定
MOG抗体は血清で陽性であることが重要であり、血清で強陽性であれば臨床的もしくは画像的所見は不要です。
一方で、血清でのMOG抗体価が低い、もしくは不明の場合、あるいは髄液検査でのみ陽性であった場合は、血清におけるアクアポリン4抗体が陰性かつ、臨床的もしくは画像的所見を1つ以上認めることが必要となります。
ここでの臨床的所見は診察で、画像的所見はMRI検査で評価するのが有用であり、MRI検査におけるT2強調画像で脊髄が多巣性・辺縁不明瞭に白く映ると脊髄炎を疑います。
以上のように、診断のためには診察や複数の検査など、複合的な評価が必要になることがある病気です。
まとめ
今回の記事では、MOG抗体関連脊髄炎の症状や診断方法について詳しく解説しました。
MOG抗体関連脊髄炎は、自己抗体であるMOG抗体によって脊髄が障害される病気です。
脊髄が障害されれば、手足の麻痺やしびれ・体幹部の痛みなどさまざまな神経症状を来します。
また、これらの症状は比較的改善する可能性もありますが、一部、再発によって後遺症が残る患者もいます。
もし後遺症が残った場合、現状リハビリテーションなどが主な治療法ですが、完全に根治することは困難なケースが多いです。
そこで、ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」と呼ばれる『神経障害は治るを当たり前にする取り組み』も盛んです。
「ニューロテック®」では、狙った脳・脊髄損傷部の治癒力を高める治療『リニューロ®』を提供しています。
また、神経機能の再生を促す再生医療と、デバイスを用いたリハビリによる同時治療「同時刺激×神経再生医療Ⓡ」によって、MOG抗体関連脊髄炎による神経学的後遺症の改善も期待できます。
よくあるご質問
- MOGADとはどういう病気ですか?
- MOGADとは、中枢神経系の髄鞘を形成する、ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)に対して自己抗体が産生され、髄鞘が破壊される病気です。
これにより、脳や脊髄・視神経などさまざまな神経組織が障害されます。 - MOGADは特定疾患ですか?
- MOGAD自体は、近年その概念が確立された病気であり、現状では国の定める指定難病に含まれていません。
しかし、多発性硬化症や視神経脊髄炎の診断基準を満たす場合は、それらの病名で医療費助成を受けられることもあります。
<参照元>
・日本神経学会:
https://www.neurology-jp.org/public/disease/ms_nmosd_mogad.html
・J STAGE:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnd/27/1/27_60/_pdf
・難病情報センター:
https://www.nanbyou.or.jp/entry/3806
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