この記事を読んでわかること
閃輝暗点のメカニズムと症状がわかる。
脳梗塞の初期症状と閃輝暗点の共通点と相違点がわかる。
閃輝暗点が脳梗塞の前兆となる可能性とその確率がわかる。
閃輝暗点は片頭痛の前兆として現れる視覚症状で、ギザギザした形が見えた後に、部分的に視野が欠けるという症状です。
脳梗塞の初期症状と似ていることがあります。
本記事では、閃輝暗点のメカニズムや脳梗塞との関連性、リスク要因について解説します。
さらに、片頭痛の管理や予防方法についても詳しく説明しています。
閃輝暗点とは何か?そのメカニズムと症状
日本では、片頭痛の年間有病率は約10%と言われています。
片頭痛は、4〜72時間続く再発性の原発性頭痛障害のことと定義されています。
頭痛は、片側でかつ脈うつような性状のものが多く、中等度から重度の強さが日常的な身体活動によって悪化し、めまいや吐き気、あるいは羞明(しゅうめい;普通の明るさでもまぶしく感じること)や音過敏を伴うことが多いです。
片頭痛には周期的な病態の変化があり、「予兆期」「前兆期」「頭痛発作期」「postdrome(後発症状)」と続いていきます。
前兆期は片頭痛の患者の約3分の1にみられます。
この時期には、脳の視覚野や感覚野、言語野または脳幹に何らかの変化が生じるとされます。
この閃輝暗点は、前兆期に起こる視覚的な症状です。
閃輝暗点とは、眼前にきらめく縁を持つジグザグの図が現れ、ある固定点から徐々に四方に広がり、その後に暗転を残すというものです。
この視覚的な異常は、光を直接見たときの残像とは異なり、両目で見ても同じように見えるのが特徴です。
そのため、片目を閉じて見え方を確認することで、閃輝暗点かどうかを判断する一つの手がかりになります。
片頭痛の閃輝暗点は、大脳皮質の拡延性抑制(Cortical Spreading Depression、 CSD)によって引き起こされると考えられています。
CSDとは、大脳皮質の神経活動が一時的に低下し、それが波のように広がる現象です。
このメカニズムを簡潔に説明すると、以下のようになります。
神経細胞の過剰興奮
何らかの刺激により、大脳後頭葉(視覚を司る部分)の神経細胞が一時的に過剰に興奮します。
CSDの発生と拡大
過剰興奮した神経細胞はエネルギーを消耗し、その後、一時的に活動が低下(抑制)します。
この抑制が波のように後頭葉から前方へと広がります。
視覚症状(閃輝暗点)の発生
CSDが後頭葉に広がることで、一時的に異常な視覚情報が処理され、ギザギザした光(閃輝)や視野の一部が欠ける(暗点)といった症状が現れます。
通常は20〜30分で消失します。
この現象の後、神経や血管の変化によって片頭痛が発生することが多いと考えられています。
脳梗塞の初期症状と閃輝暗点の共通点と相違点
脳梗塞の初期症状の一つに、眼前暗黒感、黒内障などと呼ばれる症状があります。
これは片頭痛の閃輝暗点との鑑別が必要になります。
片頭痛の場合にはギザギザした形がみられ、それに伴う限局性の視野障害がみられるという点で脳梗塞の場合の目の症状とは異なります。
また、脳梗塞では視覚症状のほかに、手足のしびれや言語障害などの神経症状を伴うことが多いため、これらの症状が見られた場合は早急に医療機関を受診することが重要です。
閃輝暗点が脳梗塞の前兆となる可能性とその確率
閃輝暗点は片頭痛の症状の一つです。
片頭痛が脳梗塞の危険因子かということについては、現在までにさまざまな研究がなされています。
頭痛の診療ガイドラインによると、45歳未満の若い女性で、前兆のある片頭痛では脳梗塞のリスクが若干高くなる可能性があります。
しかし、もともとこの年齢層の方たちでは、虚血性脳卒中(脳梗塞)の年間発症率は極めて低いです。
そのため、片頭痛の閃輝暗点が脳梗塞の前兆となる可能性はありますが、その可能性は低いと言えます。
ただし、喫煙やピルの使用、高血圧、糖尿病などの危険因子を持っている場合は、片頭痛と脳梗塞のリスクが相乗的に高まる可能性があるため、注意が必要です。
前兆のある片頭痛を持っている場合、普段と異なる症状が現れた際には注意が必要です。
特に、以下のような場合には脳梗塞の可能性を考慮し、早めに医療機関を受診することが推奨されます。
- 突然の視野欠損(閃輝暗点とは異なり、視界が一部または全体的に暗くなる)
- 手足のしびれや麻痺
- 言語障害(ろれつが回らない、言葉が出にくい)
- 片頭痛とは異なる強い頭痛の発症
このような症状がみられた場合は、単なる片頭痛ではなく脳梗塞の初期症状の可能性があるため、ためらわずに救急外来を受診することが大切です。
まとめ
今回の記事では、閃輝暗点のメカニズムや脳梗塞との関連性について解説しました。
閃輝暗点が頻繁に起こる場合や、片頭痛の症状が日常生活に大きな影響を与えている場合は、神経内科などの専門医に相談し、適切な治療を受けることが推奨されます。
また、片頭痛の予防には、規則正しい生活やストレス管理が重要です。
症状の特徴を理解し、必要に応じて医療機関を受診することで、より適切な対応ができるようになります。
近年、ニューロメディックの再生医療が神経疾患の治療法として注目されています。
再生医療では、幹細胞培養上清液を用いた治療が研究されており、これは神経修復や炎症の抑制に関与する成長因子やサイトカインを豊富に含んでいます。
片頭痛をはじめとする神経疾患に対する新たな治療選択肢として期待されており、今後の研究の進展が待たれます。
従来の薬物治療だけで十分な効果が得られない場合は、こうした再生医療の可能性について専門医と相談するのも一つの選択肢かもしれません。
よくあるご質問
- 閃輝暗点は脳梗塞のリスクになりますか?
- 閃輝暗点は片頭痛の前兆として現れる視覚症状であり、それ自体が脳梗塞の直接的なリスクになるわけではありません。
ただし、前兆のある片頭痛を持つ45歳未満の女性では脳梗塞のリスクが若干高くなる可能性が示唆されています。
特に、喫煙やピルの使用、高血圧などのリスク因子がある場合は、注意が必要です。 - 脳梗塞の前兆として目がチカチカするのはなぜですか?
- 脳梗塞の初期症状として、視界が暗くなる「黒内障」や視野の一部が欠けることがあります。
これは、脳の視覚を司る領域の血流が低下することによって起こります。
一方、閃輝暗点は片頭痛の前兆であり、大脳皮質の拡延性抑制(CSD)が関与しているため、メカニズムが異なります。
症状の持続時間や視覚異常のパターンが異なるため、鑑別が重要です。
<参照元>
(1):頭痛の診療ガイドライン2021 医学書院:https://www.jhsnet.net/pdf/guideline_2021.pdf
(2):片頭痛とはどういう病気なのか.2021.植草学園大学研究紀要;13:59-65.:https://www.jstage.jst.go.jp/article/uekusad/13/0/13_59/_pdf/-char/ja
(3):脳卒中|病気について|循環器病について知る|患者の皆様へ 国立循環器病研究センター:https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2/
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