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胃ろうとは?その概念と実際の用途

           

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この記事を読んでわかること

胃ろうを使うべき状況がわかる
口から自分の力で食事を摂取できなくなった時の選択肢を知れる
実際の胃ろう造設の手術の手順がわかる


胃ろうとは経口摂取以外の栄養投与法の1つであり、胃内と体外を結ぶ管状の瘻孔を造設し、体外から口を介せず直接胃に栄養を注入する方法です。
他の栄養投与法よりも比較的合併症が少なく、特に誤嚥しやすい方にはおすすめの栄養法です。
この記事では、胃ろうの定義や適応となる状況、実際の造設法などについて紹介します。

胃ろう(胃瘻)の正確な定義

口から摂取した食べ物は、食道から胃に入り消化され、小腸や大腸で必要な栄養素を吸収され、最終的に便となり排泄されます。
しかし、なんらかの理由でうまく口から食事を摂取できない場合、自分の消化器を使って栄養を取る経腸栄養法と、自分の消化器を使わずに直接静脈に栄養を投与する静脈栄養法のどちらかを選択することとなります。
経腸栄養法の1つである胃ろうは、体の外から胃に瘻孔を開けて、体外と胃を専用のチューブで経由し、チューブを介して栄養を胃に直接注入する栄養法のことです。
イメージすると、胃ろう状態にかなり抵抗がある人もいるかと思いますが、胃ろうには医学的に下記のようなメリットがあります。

  • 生命予後が改善する
  • 生活の質(QOL:Quality of Life)が向上する
  • 管理が簡便で在宅でも比較的扱いやすい
  • 静脈栄養法よりも優れている

一方で、胃ろう状態で生きていくことが人間として幸せなのかどうか、という議論も尽きず、倫理的にも根本的な問題を抱えている栄養法でもあります。

胃ろうを用いる主な状況と目的

胃瘻から注入中に自己抜去
胃ろうの主な目的は、不足する栄養をより生理的に補給し、生命維持やQOLを改善することですが、どのような状況で胃ろうを選択することとなるのでしょうか?
まず、なんらかの原因で必要な栄養を自分の口から摂取できない場合です。
この場合、自身の消化管の能力が正常であれば経腸栄養法を、消化管の能力が不十分であれば静脈栄養法を検討します。
経腸栄養法は主に下記の2通りです。

  1. 経鼻胃管:鼻から胃にチューブを留置し、チューブを介して栄養を投与する方法
  2. 胃ろう:体外から胃に直接栄養を投与する方法

経鼻胃管の場合、咽頭部の違和感や痛みを伴うため長期的な使用には不向きであり、目安としては4週間未満の管理が想定される場合に選択されます。
逆に、4週間以上の経腸栄養が必要な場合は、咽頭部に不快感を伴う経鼻胃管での栄養管理は不向きであり、胃ろう造設が選択されます。
具体的に胃ろう造設が検討される状況は下記の通りです。

  • 脳卒中や認知症に伴う嚥下能力の低下、もしくは食欲低下
  • その他の神経疾患による嚥下機能低下
  • 頭頸部の腫瘍や食道癌などに伴う食事の通過障害
  • 繰り返す誤嚥性肺炎

一方で、必要な栄養を自分の口から摂取できない原因が胃よりも肛門側にある場合、胃から栄養を投与してもうまく肛門に流れていかないため、胃ろうの適応とはなりません。

胃ろう造設の方法と手術の流れ

胃ろう造設の術式は経皮内視鏡的胃瘻造設術といい、一般的にはPEG(Percutaneus Endo- scopic Gastrostomy)と呼ばれます。
PEGの方法はいくつかありますが、ここでは「Introducer原法」についてご紹介します。

  1. 経鼻内視鏡を用いて胃の内腔を観察する
  2. 内視鏡で内腔を観察しつつ、体表からトロカール針を穿刺する
  3. トロカール針の外筒を残し、そこからバルーン型カテーテルを留置する
  4. 胃内のバルーンを拡張させて、腹壁と胃壁をカテーテルで固定する

体表からカテーテルを胃に挿入するだけで完結するため、非常にシンプルな術式です。
誤った所に針が進まないように、胃カメラで針の行き先をしっかり観察しており、安全性も高いです。
一方で、トロカール針による胃の後壁損傷や腹壁出血・胃内のバリーン虚脱に伴うカテーテル抜去・カテーテル閉塞などの合併症を認めますが、最近では機材の向上によってより安全性の高い手技となっています。

まとめ

今回の記事では胃ろうの定義や適応・実際の手技などについて解説しました。
胃ろうは、食事をうまく食べられなくなった方にとって、より生理的に、より合併症を少なく栄養を摂取できる経腸栄養法です。
静脈栄養法と比較して感染症などのリスクは少なく、在宅でも患者自身で簡単に管理できるため、長期的な栄養管理の方法としては理想的といえます。
一方で、人生の終わり方という観点では否定的な意見も多く、なかなかPEG造設に踏み出せない患者・家族が多いのも事実です。
今後は高齢者が増え、脳卒中や認知症によって胃ろう造設を検討する患者数が増加することは間違い無いため、今のうちからしっかり胃ろうについて把握しておくことが重要です。
また、胃ろうの原因となる脳卒中や認知症に対しては、現状リハビリテーションなどの理学療法が主ですが、近年では再生医療の発達もめざましいです。
再生医療によって失われた嚥下機能が改善したり、減退した食欲が改善すれば胃ろうが不要となる可能性もあります。
リハビリと再生医療を組み合わせれば更なる改善も期待でき、今後のさらなる知見が待たれるところです。

よくあるご質問

胃ろうで何年生きられますか?
平成21年に厚生労働省が行った調査によれば、2005年以降にPEGを行った65才以上の患者は、1年以内の死亡率が30%以下で、3年以上の生存率が35%以上でした。
つまり、多くの患者は2-3年以上を生き永らえることになります。

胃ろうの毎月の費用はいくらですか?
胃ろう造設の手術代は別として、在宅医療などででの胃ろう管理には胃ろうの管理費と月2回程度の訪問診療で、約6万円程度の負担が生じます。
ただし、注入する栄養剤や胃ろう造設・交換などの費用は全て保険適用となります。

<参照元>
・健康長寿ネット 胃ろうの適応と管理:https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/shumatsuiryou/irou.html
・日本老年医学会:https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_geriatrics_49_126.pdf
・J Stage:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspen/31/6/31_1234/_pdf/-char/ja
・J Stage:https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/56/7/56_2198/_pdf

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貴宝院 永稔【この記事の監修】貴宝院 永稔 医師 (大阪医科薬科大学卒業)
脳梗塞・脊髄損傷クリニック銀座院 院長
日本リハビリテーション医学会認定専門医
日本リハビリテーション医学会認定指導医
日本脳卒中学会認定脳卒中専門医
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。


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